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製造間接費配賦差異とは?差異の会計処理は?

岡山 由佳
製造間接費配賦差異とは?差異の会計処理は?

製造間接費配賦差異とは、原価計算の分野で使用する言葉です。原価計算を苦手とする方は多く、更にこの製造間接費配賦差異の取り扱いについては、理解に苦しむ方も多いようです。
今回は、製造間接費配賦差異とは何であるのか、その発生原因と会計処理について詳しくご紹介致します。

原価計算と差異

製造間接費配賦差異とは、原価計算の分野で使用する言葉です。よって、まずは原価計算について理解をする必要があります。

原価計算とは

原価計算とは、製品1単位あたりの製造原価を計算することで、営業活動のコストを把握し、利益管理や意思決定などに役立てるためのものです。

原価計算を行うにあたり、その原価を構成する費用は、製造直接費と製造間接費に大別されます。
製造直接費とは製品1単位あたりの投入量が明確に把握の出来る費用のことであり、一方で製造間接費とは製品1単位あたりの投入量が明確に把握の出来ない費用のことをいいます。

製造間接費差異の発生原因

製造間接費は、製品1単位あたりの投入量が明確に把握が出来ないことから、支出された費用のうち何円が製品に投入されたかを算出するための配賦という作業が必要となります。

配賦の作業には、予定配賦と実際配賦があります。
予定配賦とは、予め設定した予算と操業度を用いて製造間接費を配賦する方法であり、実際配賦とは、実際の製造間接費の発生額を一定の基準に基づいて配布する方法です。

配賦の作業は実際配賦を行うことで論理的に正しい原価計算を行うことが出来ますが、実際配賦のみで配賦行うことは、その計算を行う期末等の時点でしか原価を算出することが出来ず、原価に対する経営判断や意思決定が遅れてしまったり、操業度によって製品の単位原価が大きく変動する等のデメリットがあります。

このデメリットを補填するための配賦方法として、予定配賦があります。
しかし予定配賦のみでの計算は、あくまでも予定であることから、実際の配賦額とは乖離してしまう場合があります。
この乖離が製造間接費差異といわれるものになります。

原価計算についての詳細は下記コラムをご参照ください。
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製造間接費配賦差異とは

製造間接費配賦差異とは、上記のように予定配賦と実際配賦の違いによって生じる製造間接費の予定配賦額と実際配賦額との差額のことをいいます。

製造間接費配賦差異の種類

差異はその発生原因により、予算差異、能率差異、操業度差異に分類がされます。分類をすることで、差異が何によって発生したかを分析することが出来ます。

身近な例で挙げると、会費制の飲食を伴うパーティを開催する際に、30人を招待し、場所代20万円、飲食費1人当たり1万円と見込み、計50万円の予算を立てたとします。
しかし、実際に支払った金額が60万円であり、10万円多く支払うことが必要となった場合に、この10万円は参加者が予想を上回ったことで発生したのか、1人当たりの飲食費が予想を上回ったのか等、発生原因を考えること、これを製造業に置き換えたもの原価差異の分析です。

予算差異

予算差異は、実際操業度における予算許容額から実際発生額を引いて計算するものです。
計算式で表すと、下記のようになります。

予算差異=実際操業度における予算許容額△実際発生額

能率差異

能率差異には、変動費能率差異と固定費能率差異があります。
変動費能率差異は、標準操業度と実際操業度の差に変動費率をかけて計算するものです。
計算式で表すと、下記のようになります。
動費能率差異=(標準操業度△実際操業度)×変動費率

固定費能率差異は、標準操業度と実際操業度の差に固定費率をかけて計算するものです。
計算式で表すと、下記のようになります。
固定費能率差異=(標準操業度△実際操業度)×固定費率

操業度差異

操業度差異は、実際操業度と基準操業度の差に固定費率をかけて計算するものです。
計算式で表すと、下記のようになります。
操業度差異=(実際操業度△基準操業度)×固定費率

製造間接費配賦差異の会計処理

製造間接費配賦差異の算出が出来た後、その差異の金額は製造原価を算出するための製造間接費勘定に加減算を行う必要があります。

有利差異の会計処理

有利差異とは、予定配賦額の方が実際配賦額よりも大きい場合の差異をいいます。
製造業者が予算の範囲内で適切に費用を支出した、という意味で有利という言葉が使われています。

例えば、予定配賦額が100万円、実際配賦額が90万円であった場合は、下記のように仕訳を行います。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
製造間接費 10万円 製造間接費配賦差異 10万円

不利差異の会計処理

不利差異とは、実際配賦額の方が予定配賦額よりも大きい場合の差異をいいます。
製造業者が予算の範囲内を超えて費用を支出した、という意味で不利という言葉が使われています。

例えば、予定配賦額が100万円、実際配賦額が120万円であった場合は、下記のように仕訳を行います。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
製造間接費配賦差異 20万円 製造間接費 20万円

まとめ

製造間接費配賦差異についてご紹介致しました。
原価計算を体系的に理解をしていないと、製造間接費配賦差異については理解をすることが難しいと感じる方が多いでしょう。

しかし、製造業では原価計算は必須の知識です。是非ご参考になさってください。
ご不明な点がございましたら、HUPROでご紹介しております他のコラムの照会や専門家へのご相談をお勧め致します。

この記事を書いたライター

大学在学中より会計業界に携わり10年超の会計事務所、税理士法人での実務経験を経て独立。各業種の会計業務に関するフォローのみならず、ライターとして税務、労務、経理の話題を中心に、書籍やWebサイトに数多くの寄稿を行う等の様々な活躍をしている。
カテゴリ:コラム・学び

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