貸倒引当金の繰入は法人の判断により無限に計上を出来るものではありません。恣意的な利益操作を防ぐ観点から、法人が損金として計上することが出来る金額は、繰入限度額として法人税法で定められています。
今回は一般評価金銭債権の貸倒引当金の繰入限度額について、詳しくご紹介致します。
貸倒引当金とは、売掛金や貸付金が回収不能となった場合に備えて将来の損失を見積もり計上をする引当金です。
将来の損失を見積もるものであることから、実際に発生した損失とは異なります。
実際に発生した損失ではないにも関わらず、この損失の計上額を法人の判断により無限に計上することを認めてしまっては、法人の恣意的な利益操作を可能にしてしまいます。
このような恣意的な利益操作を防ぐために、法人税法では、貸倒引当金の繰入限度額を定めています。
貸倒引当金の繰入限度額は、個別評価金銭債権と一括評価金銭債権とに区分して計算することとされています。
今回は、法人の一括評価金銭債権の貸倒引当金の繰入限度額についてご紹介致します。
貸倒引当金についての詳細は、下記コラムにてご紹介しています。
原則の貸倒引当金の繰入限度額は、貸倒引当金の設定対象事業年度末の一括評価金銭債権の帳簿価額に、過去3年間の貸倒損失発生額に基づく実績繰入率を乗じて計算します。
算式で示すと、
繰入限度額=期末一括評価金銭債権の帳簿価額×貸倒実績率
となります。
貸倒実績率は、下記の①×②÷③をしたものを、小数点以下4位未満を切り上げて計算します。
過去3年分の貸倒引当に関する実績は、下記の3つを加減算したものです。
年数は、12を上記の各事業年度の月数の合計数で除したものです。この場合の月数とは、暦に従って計算し、1ヶ月に満たない端数が生じたときは、これを1ヶ月とします。
1年あたりの一括評価金銭債権の帳簿価額は、下記の計算をしたものです。
一定の各法人については、繰入限度額の計算に当たり、一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の上記1の実績繰入率に基づく計算に代えて、特例の繰入限度額の計算によることが認められています。
下記に挙げる法人が、特例の対象となります。
中小法人とは普通法人のうち、各事業年度終了の時において資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下であるもの又は資本若しくは出資を有しないもので、各事業年度終了の時において下記の法人に該当するものを除いたものです。
ただし、中小法人のうち適用除外事業者に該当するものは除かれます。
特例による繰入限度額を算式で示すと、
繰入限度額=(期末一括評価金銭債権の帳簿価額△実質的に債権とみられない金額)×法定繰入率
となります。
法定繰入率は、業種によって下記のように定められています。
公益法人等又は協同組合については、一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度額の計算を上記の原則又はと高齢のいずれかの方法で行った場合であっても、繰入限度額を割増しすることが認められています。
割増率は、事業開始年度によって下記のように定められています。
上記のように、法人が計上のすることの出来る貸倒引当金の繰入限度額は、法人税法により定められています。
限度額を超えての貸倒引当金の繰入計上は、損金とみなされず、法人の所得を減額する効果がありませんので、注意が必要です。