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その時のポジションで学び・楽しみ・長所を活かす。30歳を過ぎてから経理への挑戦-そしてCFOへ。BlueMeme市川氏のキャリア遍歴。

HUPRO 編集部
その時のポジションで学び・楽しみ・長所を活かす。30歳を過ぎてから経理への挑戦-そしてCFOへ。BlueMeme市川氏のキャリア遍歴。

株式会社BlueMemeで最高財務責任者として活躍する市川 玲氏。新卒時は現在と全く異なるプログラマーとして働き、経理の仕事に就いたのは30歳を過ぎてからのことであった。そんな市川氏がCFOそして上場するまでのキャリア遍歴をHUPRO編集部が伺いました!

【市川氏の略歴】

1998年4月 株式会社ぎょうせい 入社。社内プログラマーの業務に従事。
2001年1月 SAPジャパン株式会社 入社。 トレーニングセンターにおけるインストラクター業務及び複数のERP導入案件におけるテクニカルコンサルティング及びプロジェクトマネジメント業務に従事。
2007年7月 トーマツ コンサルティング株式会社(現 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社) 入社。 当初企業再生、IT戦略策定、ITデューデリジェンス等案件業務に従事。 その後グローバルERP導入コンサルティング案件業務に従事。
2010年7月 BlueMeme入社。顧客向けプロフェッショナルサービス提供を中心に、プリセールス、社内管理業務等、当社事業領域のほぼすべてについての遂行ならびに管理業務に従事。
2018年3月 コーポレートセールス部 部長に就任し業務に従事。
2019年5月 コーポレートセールス部における社内横断組織SSOの立ち上げと運用に従事。
2019年8月 執行役員・プロフェッショナルサービス部 部長に就任し、プリセールス
~ポストセールスのプロセスに関する管理に従事。
2020年10月 取締役・最高財務責任者に就任し、現在に至る。

【キャリアグラフ】

記者になりたくて出版社に入社したがまさかの社内SEに

ーまずは、ファーストキャリアやそれを志したキッカケについてお聞きしたいです。

はい。私は元々新聞・雑誌記者を目指していて、大学は文学部、ジャーナリズムやメディアについての勉強をしていました。また、大学とは別に記者になるための専門学校にも通っていました。

ただ新卒時は『超就職氷河期』と言われる時代。特に文学部からの就職活動はとても厳しく、なんとか出版社に採用してもらうことができました。

ー一応大学からの希望の職業に就けたわけですね

はい。ただ、希望の部門とは異なり、社内のシステムの方を扱う部門に配属されて…。そこからプログラマーのキャリアを2年半ほど積むことになりました。もちろん当時は就職できただけで有難い状況でしたので、与えられた仕事をしっかりやっていくことだけを考えて過ごしていました。

ーしかしその後転職されていますね。その理由は何だったんですか?

理由は大きく2つあります。
1つはプログラマーなので外との接点がゼロだったこと。どれくらいかというと、唯一コーヒーメーカー業者の方との名刺交換をしたくらい(笑)。
社内プログラマーはそれぐらい外部の方と接する機会がほぼなかった。その中でもっと人と接するような仕事をしたいと思いました。
もう1つはシステム開発を進めていく中で、いわゆる“デスマーチ“という状態を経験した。終わりが見えないような作業を毎日毎日繰り返していたことです。
その時に相当疲弊したと同時に、自分では制御できないことの大きさに気付かされました。それでよりシステム開発の前段階に関わる業務をしたいと考えました。

ーその時の転職活動は大変でしたか?

そうですね。キャリア転職というにはまだまだ実績が足りなかった事もあって第二新卒として転職活動を始めました。丁度そのタイミングに『ドットコムバブル』が到来しIT関連への需要が高まり、自分のように実績がなくともエンジニアの転職がしやすい状況でした。

その中でSAP社が行っていたコンサルタントという職種に興味を抱き応募しました。未経験のポテンシャル採用で拾っていただいたと思っています。

ーどのようなところが面白そうだなと思ったのですか?

お客様と話しながら1からシステムを設計・構築できるという点です。あとは導入を行うお客様の規模が大きく、ビジネス面でも吸収できるところが多いと考えました。

ーキャリアグラフを見ると、ここからモチベーションが上がっているのはなぜでしょうか

幸運な事に成長の糧になる仕事に数多くアサインしてもらえたからです。
与えられたポジションとしてはお客様と会話しながら問題を解決したり、プロジェクトの中でチームをまとめたりするような仕事。一回一回が新しい仕事で、自分が成長する実感を持てたのが大きかったのだと思います。あとは、成果を出せば評価に直結させることができるという点は新鮮でもあり、魅力でもありました。

ー逆に成果を出せなければキツイのでは?

そうですね。ある仕事でお客様とぶつかってしまったことがあり、結局その仕事を途中で外れることになりました。その時上司からもいろいろ指摘を頂きましたが、納得できることだったので反省して次に進むことはできました。

ーERP導入という仕事自体にはなぜハマっていったのですか?

仕事をさせていただいたのは、各業界のトップクラスの企業が多く、毎回違うビジネスを取り扱うシステムを構築する中で様々なことを経験、吸収することができた。それが自分にとっては楽しかったのが理由です。

もう一段上のステージの仕事をするため2度目の転職へ

ーでも、そこから更に転職されています。何か心境の変化などがあったのですか?

はい。当時は導入することが決められたERPを設計、構築することが業務でしたが、経験を積む中で、そもそも顧客がなぜそれを導入するという判断をしたのか?という点に深く携わりたいと思うようになったのが理由です。

当時の環境にもそういったことを生業にするコンサルタントが一緒にいてその仕事を隣で見ていたことも影響していたと思います。

ーなるほど。次のキャリアが全く違う職種ですが、葛藤はありませんでしたか?

そうですね。どちらかといえばエンジニアよりの仕事からコンサルタントを目指すのは、完全にキャリアチェンジになりますが、当時は独身で特に守るものもなかったので(笑)、もちろん悩みましたが、決断はできました。

ー元々そういうのに抵抗がない人だった?

いえ、根は保守的です。ただ、キャリアについて寧ろそれが「階段を一つ一つ上っていく」という風に考えることにつながって、結果としては少し大胆な判断につながっていると思います。

ーなるほど。転職した後はやりたい仕事ができましたか?

そうですね。入って1.2年は今までやった事がないような事(例:企業再生のための計画作成)に複数携わらせてもらいました。それこそ、ついていくのが精いっぱいでしたが、大変ながらも充実感もあって、すごく楽しかったです。

ー30歳から新しいことを始めて大変だった事はありますか?

1番は財務経理の知識が乏しかった事ですね。これまでは技術系の事にずっと関わってきたので、30歳を過ぎてからそういう勉強を始めました。
企業の基幹業務に関わるシステム作りを行うとなると必然的にそちらの知識も求められました。ですので、平日は夜遅くまで仕事に邁進、週末は学校に通って財務経理の勉強、といった時期もありました。今振り返ると、よくやっていたなと思います(笑)

ーその時はどういう所でモチベーションを保っていたのですか?

やはりお客様から頂く感謝の一言だと思います。先ほどの再生計画を作る業務の最終日の報告会で、1スタッフの私に、名指しで「ありがとう」とおっしゃっていただいたことがあって、その言葉だけで報われた感じがしました。

ーそうなんですね。そんな忙しい当時の職場で得たものはどんなものがありますか?

知識やフレームワークの使い方、資料への落とし込み方、を学びました。
コンサルタントが作る資料は1枚に5〜10万円の価値が付きます。
そんな中で、数字を1つでも間違えたら即やり直しだし、かなり厳しく指摘される。そんな環境の中で細かい部分を作り込んでいくような力がつきました。

ー理不尽だとは思わなかった?

特に思いませんでした。
なぜなら作成するのは自分でしたが、それを発表するのは上司であり、その責任をすべて負ってくれることを考えたら、厳しく評価されるのは当然のことだと。
それに私自身、キャリアチェンジでしたから、指摘に対して言い返すだけの知識も説明力もありませんでしたし(苦笑)。指摘から学ぶことは多かったと思います。

ーしかしキャリアグラフを見ると、この後モチベーションが下がっていっています。

会社が規模を拡大していくタイミングで、前職での知識を買われて、ERP導入支援の業務にいわば「戻る」ことになりました。もともとそれとは違うものを求めての転職でしたので、正直モチベーションは少し下がりました。ただ、その現場は、部屋に入ってから出るまでほぼ英語でコミュニケーションをしなければならない点が、とてもいい経験にはなりました。最初は全く一緒に仕事をする海外メンバーの英語が聞き取れず、それこそ泣きそうでしたが、”Never mind!”と慰められながら、上達に努めました。

ーなるほど。お話を聞いていると、凄く学びに対してポジティブな印象を受けます

そうかも、しれません。結果的にその時その時に新鮮な学びのある環境を与えていただいたからかもしれません。

働き方への考え方の変化からBlueMemeに入社へ

ーその後、代表に誘われる形で現在の会社に入られていますね。

はい。代表の松岡とはその10年前からの知り合いで。彼はたびたび事業を立ち上げていたので、事あるごとに誘われてはいました。
ただそれまではあまり自身の業務の都合でタイミングが合わなかったのと、仕事としては学びもあり、安定していたので、「辞めてまで」という決断には至りませんでした。

ーでは今回はなぜ?

年齢的に、またこの後のキャリアを考える上ではラストチャンスというのもありましたが、最大の決め手は、松岡(代表)に対する信頼だと思います。

ーなるほど。これまでのキャリアの歩み方とは違う印象を感じますが、どのような理由での転職だったのですか?

そうですね。これまでの転職理由は「もっと上流の仕事をしたい」というのが主な理由だったので、それとは違うように見えるかもしれません。
今までは何かに特化するような形でキャリアを積んできました。でも今回に関しては雑用というか、営業から経理から何から、自分でやっていかなければならない様な働き方も楽しいかなと思いました。
実際に働き出してみて、今まで培ってきた知識や能力が役に立たない場面も多く、常に手探りのような形で仕事をしていました。

ーそうだったんですね。強いて共通点を挙げるとするならば何かありますか?

走り続けなければいけないみたいな状況、でしょうか。とにかく与えられた環境で精一杯やるだけ、のような方が自身には楽なのかもしれません。それはこれまでのキャリアの中でも一貫している気がします。
好き嫌いせずに振られた仕事をやり続けていく中で、全てのフローの業務を体験できました。

ーそうして全ての業務を経験した上で、良かったことなどはありますか?

現在の業務(CFO)にもかなり活かされていると思います。
様々な考え方があると思いますが、自分は、この業務は会社の事業や業務面を分かっていないと出来ない事だと考えています。
例えば財務諸表の話をするにしても、数字を見るだけでなくて事業がどうなっているのか把握できる能力がなければ話にならなかったりする。細かい数字のところはチームに経理のスペシャリストが別にいますので任せることができます。

ーCFOの仕事にここまで10年の経験が活きてきた?

そうですね。それに加えて職場、チームメンバーに恵まれているというのも大きいと思います。

業務の遂行には幅広い知識と経験が求められると思いますが、1人では覚束ない。ですが、先ほどの経理をはじめとして管理部門には様々スキルを有するメンバーがおり、常に足りないところをカバーしてくれる。その分自分は、長所を活かして自分の仕事に集中できますので、今のメンバーには本当に感謝しています。

ー2018年頃から立場が一気に上がってきますが、プレイヤーからマネジメントの比重が大きくなっていった?

マネジメントというよりは、代表が私の長所を理解してくれているので、それに見合う形でその時会社に必要なポジションを一つ一つやっていったという感じですね。

ー役職は結果として付いてきた感じ?

そうです。例えば2018年頃に、セールス部門の長になりましたが、営業の皆様には前線に集中いただき自身はバックオフィスでのサポートを行う、といった形で動いていました。それがなんとなく軌道に乗ってきたら、今度はセールスとサービスの間を繋ぐような仕事を、そして今では、管理部門…というような具合です。

ーなるほど。ここからはキャリアの中でも1番大変だったと書かれている上場のお話を聞いていきたいと思います。端的に何が1番大変でしたか?

上場準備は「親にも言えないプロジェクト」。そこに関わるメンバーを絞るなど、情報統制をしていかなければならない。
それ以外のメンバーが疎外感を感じないようにしなければならない一方で、関わってもらうメンバーにはかなりの負担がかかる。この点は振り返ってみて本当にどちらにも申し訳なかったと思います。

ーやり切った今、どう思いますか?

チームメンバーには感謝しかないですね。当時は「とにかくご支援お願いします!」という感じだったので。それこそ未曾有と言える激務の中で投げ出す人がいてもおかしくない状況でしたので。本当に有り難かったです。私のキャリアの中でもいろんな意味で「最強の」プロジェクトでした。

ー今回上場が終わってみてこれからのキャリアはどのように考えていますか?

私自身のキャリアとしては、基本的にその時与えられた状況に対して、精一杯やるというスタンスは変わりません。いまはこの立場(CFO)ですが、また将来は別にあるのかもしれません。

ー最後に、CFOなどの管理部門で働く人へのアドバイスがあればお願いします。

「管理部門は価値を生み出してないのではないか?」という悩みを相談されることがあります。
でもそれは違うと私は考えています。営業がセールスを出来るのも、エンジニアがお客様へのサービス提供に集中出来るのも、管理部門の支えがあってのことです。「管理部門は“社内に対して“利益を与えている」という意識を持って仕事すれば良い、と。これは様々な業務を経験したうえで管理部門にたどり着いた自身だからこそ言えることかなと考えています。

こういう考え方を出来れば、何事にもポジティブに取り組めるのではないかと思います。

ー「会社に対して利益を与えている」、そういう考え方を持てると確かに自信を持って仕事ができそうですね。貴重なお話、ありがとうございました!

今回お話を聞かせていただいた、市川氏が取締役・最高財務責任者を務める
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この記事を書いたライター

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