2019年の会社法改正により、上場企業の社外取締役選任が義務化されています。いまなぜ社外取締役が重視されているのでしょうか?今回は、社外取締役のメリットについて解説します。
社外取締役とは、会社や子会社・関連会社の取締役や使用人でない取締役のことです。しがらみがない人物が、外部の客観的な視点で会社の経営をチェックし、企業統治を強化する役割を求められています。
社外取締役についての更なる詳細は、以下の記事をご確認ください。
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社外取締役の制度を導入することは、企業にとって多くのメリットをもたらします。代表的な3点について解説しましょう。
社外取締役を置く第一の目的は、経営の透明性向上や不祥事の防止です。上場企業では、最低二名の社外取締役が義務付けられています。
企業統治(コーポレートガバナンス)とは、最近よく聞かれる言葉で、その意味は「企業が法令を遵守し、不正行為を働かないよう監視する体制を築く仕組み」となります。
社外取締役は、会社との利害関係がありません。そのため、経営陣に忖度することなく、客観的な目線で経営に対する監視・監督が行えるというメリットがあります。
会社は、経営者のものではなく出資者のもの。企業活動は、株主への利益の還元を目的として行われるのが大前提です。しかし、日本では滅私奉公という働き方が主流であったせいか、しばしば経営陣が会社を私物化することが起こりがちな傾向があります。
社外取締役が正しく機能することで、経営者の私物化を防ぎ、クリーンな経営ができる効果が見込めることが社外取締役がいるメリットと言えるでしょう。
社外取締役は、経営陣の監視ばかりをしているかというとそういうわけではありません。「改革は内部からは生まれない」という言葉があります。社内でずっと仕事をしてきた役員たちは、旧来のやり方に縛られがちです。社外取締役は、外部から客観的な目線で見ることで、これまでにない新鮮なアイディアや業務改善方法を提案することができます。違った視点からのアドバイスを取り入れることにより、会社としても新事業や、業務変革プロジェクトを立ち上げることにもつながります。
社内の常識は社外の非常識であることを自覚し、経営を前進させるための議論の活性化も、社外取締役には求められているのです。
欧米では、代表権を持つ取締役以外は社外取締役である企業も珍しくありません。企業は大きくなればなるほど、自社の利益だけでなく、環境問題などの社会の課題に対して果たすべき責任があるとみなされます。
自社が及ぼす社会への影響の専門家や有識者を社外取締役として迎えることで、会社が社会的責任を果たそうとしている姿勢を対外的にアピールすることにつながるでしょう。
社外取締役が義務付けられている企業も、そうでない企業も、社外取締役を選任するにあたって注意したいことがあります。これらの問題点がクリアになっていないと、せっかく社外取締役制度を導入しても意味がありません。
社外取締役は、社外の立場から経営に参画することが求められています。つまり誰でも良いわけではありません。
経済産業省の調査によると、社外取締役のバックグラウンド(属性)は、経営経験者のほか、弁護士、公認会計士/税理士、金融機関、学者など多様ですが、指名委員会等設置会社については、経営経験者を多く選任する傾向が見られます。
企業の経営を監督するという立場なので、経営経験者だけでなく、国家資格を持つ専門家が求められることも多いです。経営については、知識だけでなく、リーダーシップやマネジメント力があるかどうかといった人物像も重要になります。
異なる意見をまとめたり、実行させる力量も問われるため、社外取締役の登用については経験がある人ほど引き合いが強くなってしまい、経験者の母数がなかなか増えないという問題もあります。
伝統的な日本企業では、社外取締役の設置が義務付けられていても、大半が経営者の紹介での就任で、独立性の高い人材が求められていないという傾向があります。耳の痛い苦言を呈されたり、これまでの企業文化を覆されることを避け、社外取締役を「置物」のように扱っている企業も少なくありません。
しかし、それでは社外取締役を置くメリットがなくなってしまいます。変化が激しい現代においては、新たな視点で企業の改革や成長を促すような経営体制にしていかないと生き延びることすら難しいでしょう。大企業の没落を見ていても明らかです。
しかし、客観的な立場で経営者をも指導できるような能力を持つ社外取締役に適した人材を自力で探すのはかなり難しいです。新たな風を社内に起こすためには、縁故や知縁だけでなく、専門家の所属する人材紹介サービスなども活用していくことが求められるでしょう。
社外取締役は配置することの会社のメリットは多分です。そのため社外取締役の目的を理解した上で、人材の選出と配置することは非常に重要です。