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社外取締役である旨の登記は必要?

HUPRO 編集部
社外取締役である旨の登記は必要?

社外取締役である旨の登記については、商法・会社法で規定されています。しかし、改正前後の情報が錯綜していて解りづらいと思われる方も多いのではないでしょうか?今回は、社外取締役の登記についての原則と、会社法改正前後の条件に付いて解説します。

社外取締役についてカンタンにおさらい!

社外取締役とは、会社や子会社・関連会社の取締役や使用人でない取締役のことです。株主側に立って企業の経営を監督する立場にあり、業績に厳しい投資家の多い欧米では積極的に活用されています。コーポレート・ガバナンスを高める重要な存在として、会社法改正(2021年3月施行)により、監査役会設置会社(公開会社かつ大会社)では、上場会社に関しては社外取締役の設置が義務付けられました

詳しくは、以下の「関連記事」をご確認ください。

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「社外取締役」である旨の登記は必要なの?

結論から言うと、社外取締役という立場であっても「取締役」に違いありません。つまり、登録・変更・抹消があれば登記が必要です。

社外取締役は登記では「取締役」表示が原則

登記に掲載される役職は「代表取締役」もしくは「取締役」しかありません。会社内では、「社外取締役」以外にも、「社長」や「CFO」、「専務」「常務」といったさまざまな役職がありますが、これらはあくまで社内の役割を示すもの。法律で権限や選任方法が定められた役割としては「代表取締役」「取締役」「監査役」といった表記しかないのです。

つまり、社外取締役として取締役に選任した場合でも、登記簿に必ずしも社外取締役である旨の登記がされるわけではありません。社外取締役も法的には「取締役」。登記簿などでは同じ肩書として表示されるのが原則です。

登記に「社外取締役」の表示をする場合

社外取締役でも、登記上は「取締役」表記になるのが原則ですが、役員欄に社外取締役である旨の登記がされていることもあります。

具体的には以下の3つのケースです。

①特別取締役による議決の定めがある場合の社外取締役
②指名委員会等設置会社の社外取締役
③監査等委員会設置会社の社外取締役

就任あるいは重任した社外取締役が、この3つの要件に該当する会社の社外取締役である場合は「取締役」としての登記の他に、登記簿の「役員」欄に「社外取締役」である旨の登記が必要です。

「特別取締役」とは、スピーディーな経営判断のために、会社の重要な財産の売却や購入、多額の借金などについて議決権が与えられた取締役です。その決定は、取締役会決議と同等の効果があります。

「指名委員会」とは、株主総会に提出する取締役および会計参与の選任・解任案を決定する委員会のことです。社外取締役が過半数の3名以上の取締役で構成されます。

「監査等委員会」とは、従来の監査役とは異なり、取締役会での議決権を持つ委員会です。取締役の職務執行の監査に加えて、株主総会に提出する会計監査人の選任・解任・不再任案の決定、および株主総会において取締役の選任・解任・辞任について意見陳述を行う権限を有しています。

会社法改正と「社外取締役」である旨の登記

会社法は2014年と2019年に大きく改正され、社外取締役に関するものがあります。登記について変わったのは、2014年(平成26年)の改正会社法(2015年施行)です。2019年(令和元年)の改正会社法(2021年3月施行)では、社外取締役の定義が見直されました。

平成26年改正会社法(2015年施行)による社外取締役の登記について

平成26年改正会社法(2015年施行)施行以前は、社外取締役について「責任限定契約を締結できる旨の定款の定め(会社法第427条1項)」があるときは、取締役登記の際に、社外取締役である旨の登記も必要でした。

しかし、この改正会社法の施行以降は、責任限定契約を締結できる対象範囲が社外取締役から非業務執行取締役まで広がっています。つまり、責任限定契約にかかる定款の定めがあることを根拠に、社外取締役である旨の登記はできなくなりました。

施行前に旧法基準で「社外取締役」の登記をしている場合は、経過措置としてその任期中は、社外取締役である旨の登記を抹消しなくても良いことになっています。

この改正時点で「社外取締役」である旨の登記が必要な会社は、大きく減少しました。

2019年(令和元年)の改正会社法(2021年3月施行)による社外取締役の登記について

最新の会社法改正では、上場会社等の社外取締役選任の義務化や、社外取締役への業務執行委託についての改正がされています。主に上場会社に関係する改正です。

この変更に伴って、社外取締役である旨の登記をする旨の改正はされていません。社外取締役である旨の登記要件は、旧来のままなので、社外取締役でもその旨が登記されていない会社が多く存在します。社外取締役であるかどうかの確認は、登記ではなく株主総会議事録か有価証券報告書でする方が確実と言えるでしょう。

この記事を書いたライター

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