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どれだけ財産を貰えるの?法定相続分と遺留分

岡山 由佳
どれだけ財産を貰えるの?法定相続分と遺留分

相続において、どの程度の遺産を取得することが出来るのかは、相続人の関心の高い事項のひとつです。
取得することの出来る財産については、一般的な財産配分の目安と、最低限取得することが出来る財産の割合が、それぞれ民法で定められています。
今回は、この割合である法定相続分と遺留分についてご紹介致します。

相続人の範囲

相続が発生をした際に、財産を受け取ることの出来る権利をもつ人を相続人といいます
相続人の範囲は民法で定められており、死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は、下記の順序で配偶者と一緒に相続人になります。
なお、相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。また、内縁関係の人は、相続人に含まれません。

第1順位…死亡した人の子供

その子供が既に死亡しているときは、その子供の直系卑属が相続人となります。子供も孫もいるときは、死亡した人により近い世代である子供の方を優先します。

第2順位…死亡した人の直系尊属

父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。
第2順位の人は、第1順位の人がいないとき相続人になります。

第3順位…死亡した人の兄弟姉妹

その兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子供が相続人となります。
第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないとき相続人になります。

相続を放棄した人とは

相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続の放棄の申述をした人のことをいいます。相続の放棄の申述をしないで、事実上、相続により財産を取得しなかった人はこれに該当しません。

法定相続分

法定相続分とは、遺言や相続分の指定がなく、遺産分割を行う際に、それぞれの相続人が得られる遺産の割合の目安を定めたものです。
子供、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、原則として均等に分けます。
また、民法に定める法定相続分は、相続人の間で遺産分割の合意が出来なかったときの遺産の取り分であり、必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありません。
この法定相続分は、相続人の関係により下記のように異なります。

配偶者と子供が相続人である場合

配偶者1/2 、子供(2人以上のときは全員で)1/2

配偶者と直系尊属が相続人である場合

配偶者2/3、直系尊属(2人以上のときは全員で)1/3

配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合

配偶者3/4 、兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)1/4

遺留分

遺留分とは、遺産分割を行う際に、それぞれの相続人が最低限得られる遺産の割合を定めたものです。

遺留分が請求されるケース

例えば、相続が発生した際に遺言が見つかり、遺言にお世話になった老人ホームに対して全財産を寄付する、という内容が記載されていた場合、全ての相続人がこれに同意をすることが出来れば、その遺言通りに全財産を老人ホームに寄附することは何ら問題はありません。

しかし、相続には遺族の生活を守るという観点から、全財産を老人ホームに寄付することに同意の出来ない相続人がいる場合、この同意のすることが出来ない相続人は、遺言でそのような指示があっても、遺留分に相当をする財産を取得することが出来ます。

遺留分の請求がされるケースは、遺言内容に同意が出来ない場合だけではありません。
相続人間で法定相続分での遺産分割に合意が得られない場合、例えば同順位の相続人がA、B、C、Dの4人おり、法定相続分で遺産分割をするとその相続人は1/4ずつ遺産を取得することになるが、Aに対して残りのB、C、Dが3人が何らかの事情により財産を1円たりとも渡したくないと考える場合です。

この場合には、多数決をとればAに財産を1円たりとも渡さずに済みB、C、Dで財産を配分出来るように思えますが、Aがそれに同意をしない限り、それは出来ません。Aは遺留分に相当をする財産を取得することが出来ます。

遺留分が請求されないケース

原則として、上記のように、相続人の遺留分が侵害された場合には請求がなされますが、遺留分が請求されないケースもあります。
これは、そもそも相続人に該当をすることが出来ない、相続の欠格に該当する人がいる場合です。

例えば、上記の例のB、C、DがAに財産を1円たりとも渡したくない理由が、故意に被相続人をAが殺害したことにある場合には、Aに財産を取得させる必要はありません。殺害のように欠格事由に該当する相続人の相続権は、何らの手続を経なくとも当然に剥奪する制度があります。

欠格事由

相続権がはく奪される欠格事由には、下記のものがあります。

①故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたため、刑に処せられた者
②被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者
③詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
④詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回をさせ、取り消させ、又は変更させた者
⑤相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

遺留分権利者と遺留分

請求の出来る遺留分は、相続人の関係により下記のように異なります。

・相続人が直系尊属のみ…遺留分は遺留分算定の基礎となる財産の1/3
・上記以外…遺留分は遺留分算定の基礎となる財産の1/2

遺留分の請求における時効

遺留分を侵害されたことに対して、その遺留分までの財産を請求する権利を遺留分減殺請求権といいます
遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間これを行使しなかったときは時効により消滅します。

まとめ

上記のように、相続によって取得することが出来る財産の目安の割合は法定相続分、最低限取得することの出来る財産の割合は遺留分によって定められています。相続対策の一環として、ご参考になさってください。

この記事を書いたライター

大学在学中より会計業界に携わり10年超の会計事務所、税理士法人での実務経験を経て独立。各業種の会計業務に関するフォローのみならず、ライターとして税務、労務、経理の話題を中心に、書籍やWebサイトに数多くの寄稿を行う等の様々な活躍をしている。
カテゴリ:コラム・学び

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