相続税の計算過程で必ず確認をしなくてはならないもののひとつとして、債務控除を挙げることが出来ます。債務控除は納めるべき相続税を減額することの出来るものであることから、正しい理解が相続税の納税者にとって有利にはたらきます。今回は、相続税における債務控除について、詳しくご紹介致します。
相続税は、相続や遺贈によって取得した財産及び相続時精算課税の適用を受けて贈与により取得した財産の価額の合計額が基礎控除額を超える場合にその超える部分に対して、課税されます。
相続や遺贈によって取得した財産及び相続時精算課税の適用を受けて贈与により取得した財産の価額の合計額が少ない程、課税される相続税額は少ないといえます。
この財産の価額の合計額を算出する際に、取得した財産から差し引くことが出来る一定のものを、債務控除といいます。
つまり、債務控除を正しく把握し集計をすることが、財産の価額の合計額を減少させ、同時に課税される相続税額を減少させることに繋がります。
相続税の全体の計算については、下記コラムをご参照ください。
相続税の納税義務者で無い人、及び、課税財産を取得しない人にとっては、債務控除の有無は相続が発生しても、全く関係の無いことです。
まずは、相続税の納税義務者と課税財産を確認しましょう。
相続税の納税義務者と課税財産の範囲は、下記の5つに分類が出来、いずれかに該当をする人が、相続税を納めるべき人であり、債務控除についても把握をする必要があります。
取得したすべての財産が相続税の課税財産に該当をします。
・財産をもらった時に日本国籍を有している人の場合は、相続の開始前10年以内に日本に住所を有していたことがある人、又は相続の開始前10年以内に日本に住所を有していたことがない人
・財産をもらった時に日本国籍を有していない人
これらに該当をする人も、取得したすべての財産が相続税の課税財産に該当をします。
取得した財産のうち、日本国内にある財産が相続税の課税財産に該当をします。
取得した財産のうち、日本国内にある財産が相続税の課税財産に該当をします。
相続時精算課税の適用を受ける財産が相続税の課税財産に該当をします。
遺産総額から差し引くことが出来る債務控除には、債務と葬式費用が該当をします。
差し引くことができる債務は、被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるものです。
なお、被相続人に課される税金で被相続人の死亡後相続人等が納付又は徴収されることになった所得税等の税金については被相続人が死亡したときに確定していないものであっても、債務として遺産総額から差し引くことが出来ます。
ただし、相続人などの責任に基づいて納付したり、徴収されることになった延滞税や加算税などは遺産総額から差し引くことは出来ません。
一方で、被相続人が生前に購入したお墓の未払代金等の非課税財産に関する債務は、遺産総額から差し引くことは出来ません。
債務の具体例として、下記のものを挙げることが出来ます。
・銀行借入
・未払い公共料金
・未払い医療費
・老人ホームからの請求
・公租公課
・預かり敷金、保証金
葬式費用は債務ではありませんが、相続税を計算するときは遺産総額から差し引くことが出来ます。
遺産総額から差し引くことが出来る葬式費用の具体例として、下記のものを挙げることが出来ます。
・葬式や葬送に際し、又はこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用
・遺体や遺骨の回送にかかった費用
・葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせないお通夜等にかかった費用
・葬式にあたりお寺などに対して読経料等のお礼をした費用
・死体の捜索又は死体や遺骨の運搬にかかった費用
一方で、遺産総額から差し引くことが出来ない葬式費用の具体例として、下記のものを挙げることが出来ます。
・香典返しのためにかかった費用
・墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用
・初七日や法事等のためにかかった費用
債務等を差し引くことが出来る人は、下記に該当をするで、その債務等を負担することになる相続人や包括受遺者です。
一時居住者で、かつ、被相続人が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除きます。
・日本国籍を有しており、かつ、相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがある人
・日本国籍を有しており、かつ、相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがない人
・日本国籍を有していない人
取得した財産から債務控除等を差し引いた価額が、基礎控除額を超える場合には、相続税の申告と納税が必要です。
相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。
例えば、2月10日に死亡した場合にはその年の12月10日が申告期限になります。
この期限が土曜日、日曜日、祝日等にあたるときは、これらの日の翌日が期限となります。
申告は、紙面での提出の他、電子申告によって行うことも出来ます。
相続税の電子申告については、下記コラムをご参照ください。
申告期限までに申告をしなかった場合や、実際に取得した財産の額より少ない額で申告をした場合には、本来の税金のほかに加算税や延滞税がかかる場合があります。
相続税の無申告については、下記コラムをご参照ください。
相続税の申告書の提出先は、被相続人の死亡の時における住所が日本国内にある場合は、被相続人の住所地を所轄する税務署です。財産を取得した人の住所地を所轄する税務署ではありません。
納税は税務署だけでなく金融機関などでも出来ます。
申告期限までに申告しても、税金を期限までに納めなかったときは利息にあたる延滞税がかかる場合があります。
税金は金銭で一度に納めるのが原則ですが、相続税については、特別な納税方法として延納と物納制度があります。
延納については、下記コラムをご参照ください。
今回は、相続税の計算過程において、必ず把握が必要となる債務控除についてご紹介致しました。
相続税の申告及び納税期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内となっています。他の税目と比較をすると、申告期限が長いように感じますが、相続が発生をすると、相続人は相続税の申告のみならず、葬儀や他の法定手続き等、様々な対処すべき事項に追われ、意外と短く感じるものです。
他の手続きに追われて、相続税の申告が期限内に行えない等といったことが発生しないよう、生前の相続対策として、知識を身に着けておくことは非常に大切な事です。もしもの時の備えとして、HUPRO等のコラムを是非ご活用ください。