士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所|HUPRO MAGAZINE
士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所

カテゴリ

サラリーマンになって初めて味わった挫折、会計との出会いが天職への入り口に。どういう人やどんな機会に出会いたいかを重視して働く米津良治氏のキャリア遍歴

HUPRO 編集部
サラリーマンになって初めて味わった挫折、会計との出会いが天職への入り口に。どういう人やどんな機会に出会いたいかを重視して働く米津良治氏のキャリア遍歴

何でも人並み以上にこなしてきたと思っていたが、就職して己の実力不足に初めての挫折を経験。その後、会計との出会いが天職に気づくきっかけとなり、独立開業。BASE(ベイス)総合会計事務所の代表として活躍する米津良治氏にお話を伺いました。

【ご経歴】

2006年 上智大学 法学部卒業
2006年 旭化成ホームズ株式会社 入社
2007年 株式会社丹青社 入社
2014年 ファーサイト会計事務所(現 税理士法人ファーサイト)入社
2016年 税理士登録(税理士ファーサイト役員就任)
2020年 BASE(ベイス)総合会計事務所 開業

何となく選んだハウスメーカー、初めての挫折を味わう

ー米津先生はなぜ法学部に進学されたのでしょうか?
実は特になく、消去法でした。高校生の頃は言語学に憧れていたので、第一志望は英語学科でした。何となく選んだ法学部が第二志望で、たまたま受かったから進学を決意しました。

ー就職ではハウスメーカーに就職されたんですね。
建築物が好きだったのもあって、実家の家を建てたハウスメーカーに就職しました。

物理的にわかりやすい、またお客様と話をしながら家を作り上げていくという点が良いなと思い決定しました。営業に配属されたのですが、これが想像していたより厳しく、プレッシャーもすごかったです。学生時代はたいていの平均よりやや上の成績をとってきていたので自分の無力さを実感しました。今振り返っても大変だった思い出ばかり浮かびますが、その後会計業界に来て、営業での経験が役に立っています。厳しく指導をしてくれた当時の上司には感謝しています。

ー就職した際はどんなキャリアを描いていましたか?
最初はキャリアという4文字も全然ピンと来なかったので正直あまり考えていなかったです。漠然と、就職した会社で定年退職まで働くイメージがあったと思います。

ーその後1年勤められたのちに転職されたんですね
自分の能力を活かせるようなところへ早めに移動しようと考え、空間デザインの会社の管理部門に転職しました。石の上にも3年のようなアドバイスをいただくこともありましたが、両親や友人には転職を応援され、励みとなりました。

転職先で出会った会計、大学卒業以来1番向いていると感じる

ー転職先ではどんな仕事をされていたのでしょうか?
総務部として、バックオフィス業務をしていました。その部署は半年で異動して、株主向けに株主総会を開催したり、業績を発表するIR業務をしていました。そこで初めて決算書というものを知ることとなりました。全然わからないため簿記の勉強をしよう、というのが今の仕事をするきっかけとなりました。

ー初めての簿記など難しいなという印象はなかったですか?
難しくはありましたが、慣れてきたら向いていると思いました。その後経理部に異動するのですが、その途中ですでに税理士試験も勉強していたため異動願いを出しての異動でした。今振り返るとこの異動で道が開けた部分もありますので、快く聞き入れてくれた会社には感謝しています。

ーなるほど、この辺りから税理士を意識し始めたのでしょうか?
簿記を2級に合格した後、予備校の資料などを見て次のステップに税理士試験というものがあるということを知りました。ちょうどリーマンショックの時期と重なりリストラも身近に感じており、会社に頼らずとも生き抜ける力が欲しいと考えていたので、しばらくここにエネルギーを投下しようと考えました。

ーリーマンショックを乗り越えることができた要因は何かありますか?
世界的に経済環境が悪化していく中、本当にこのままで大丈夫かという不安感がありました。また管理部門にいましたので人事評価もやや曖昧にならざるを得ず、成長が実感しづらく手ごたえのない日々が続いていました。一方、資格の勉強はどれだけスキルが身に付いたかが見えやすく、努力した分だけ自信がついたような気がします。

ー税理士試験はどのように勉強しましたか?
4科目は在職中に受けました。勉強は朝1時間勉強して、昼に30分、夜も1時間という感じでルーチン化して週末は10時間ほど勉強していました。大変と思わずそれを日常とするようにしていました。朝は計算、昼と夜は理論、暗記という形で決めていました。

ー税理士試験科目の選択理由を教えてください。
1番役に立ちそうなものを基準に選びました。1番最初に取った簿記論が1番大変でした。その頃はまだ勉強の習慣がついていなく、さらに1科目も受かっていないとやはり不安でした。また、会社に通いつつ専門学校もずっと通い続けて受けました。

ー勉強の息抜き方法を教えてください。
Twitterをしていました。Twitterで発信したり、同じような勉強仲間と交流したりしていました。実は妻もその出会いですし、その関係で知り合った友人とは今も付き合っています。

ー勉強で苦しかったことはありましたか?
会社勤めしているときは、二重生活が少し辛かったです。転職するんでしょう、と思われたり、飲み会を断るのも何か言われないか、などはちょっと不安でした。実際はみんな応援してくれていましたが。その寂しさは勉強仲間と会うことで解消していました。また、勉強自体は得意だったのでゲーム化して点数を取る感覚に近く、辛いということはなかったです。

友人の誘いをきっかけに税理士を目指す

ー税理士になろうとしたきっかけはあったのでしょうか?
正直、税理士になったら年収は下がると思っていたため社内に残るか、税理士になるかどうはまだ迷っていました。そしてちょうど4科目を受けた直後に、友人が父親の会計事務所を引き継ぐから一緒にやらないかという誘いを受けました。その人は中学高校以来の友人で、信頼のおける人だったので、いいタイミングだと思い入所を決めました。知らない事務所に行くより、力を発揮できる環境だと思いましたし動きやすいとも思ったのでそれが決め手となりました。

ーその事務所ではどんな仕事をされていたのでしょうか?
2代目が継いだときにベテラン勢が抜けてしまったので、クライアントも一気に対応することになり事務所の運営などもやりました。引き継ぎほとんどなく、トレーニングもない中でいきなり始まった業務はわからないことだらけでした。そして前任者がこの道40年のベテランだったので、最初は方々で舐められました。なので前任者がやっていなかったであろう、財務分析関係をしたり丁寧でスピード感のある対応をしたり工夫をしました。前職で会社の業績を説明したときのノウハウなどを応用して、少しずつ気に入ってもらいました。

ー前任者と違うことをやってみようと思ったきっかけをお聞かせください。
前任者の壁が高かったので自分の土俵で戦わないと勝ち目がなかったためです。やってみたところ、直接お客様からフィードバックをもらえ、会社の経理部にいたときとは全く違う手応えとやりがいを感じました。この機会を与えてくれた友人にも深く感謝しています。

ついに独立開業を果たす

ーそして2年後に税理士登録され、さらに独立されたんですね
税理士試験合格時に2年間の実務経験も満たしていたので、社員税理士として登録させて頂きました。登録前から自由に働かせてもらっていたので、税理士登録したから何かが大きく変わったという気持ちはなかったです。合格発表当日の朝にサプライズでカシオの高級電卓をプレゼントされたときはさすがに感動しましたが。

独立しようとしたのは少しずつ事務所の運営の感覚の不一致がきっかけでした。最初のうちは先代から引き継いだ顧客やスタッフを守り抜こうという気持ちで経営陣一丸となって必死で運営していたのですが、軌道に乗ってくるとそれぞれの方向性の細かい部分の違いが気になってきたので、ここからは干渉せずに自分の信じる道でやろうよ。という感じです。

ー独立してからのお客様との関係性で気をつけていることはありますか?
役に立つ、頼られるにはどうあるべきかは常に考えています。生き残れる人っていうのは必要な人だからだと思うんです。そのため、困っている人を助けるだとか、期待よりもいいものを届けるとか、そういう点を心がけています。

ーサラリーマン時代の仕事で今に生きている経験はありますか?
営業をしていたときの経験が活きています。税理士には珍しい経歴が強みになっていますし興味を持ってくれる人もいます。

ー今の仕事は何をしていらっしゃいますか?また大変なことはありますでしょうか?
新規開拓のほか、スタッフの作ったものをレビューしたり、お客様の話を聞いたりだとかいろいろなことしています。基本的には以前よりマネジメントに使う時間やウォッチ対象の顧客数が減ったので楽になりました。ただ作業している時間は長くなったので、外の人とのコネクション作りのような企画的なところの時間は取りづらくはなりました。このままではちょっとまずいかなとは思っています。

スタッフを育てつつ総合事務所の経営を目指す

ー今の仕事でのやりがいを教えてください。
お客様から感謝の声をいただくことがやりがいです。またスタッフの成長をゆっくり見られることもやりがいのひとつです。それぞれのスタッフに合った成長速度や仕事量はあると思うので、応援してあげられる余裕を残した業務キャパシティを保ちたいと考えています。

ー今後、5年後、10年後など、どうなっていたいですか?
プレイヤーとして働くのが好きなので、この先も業務はやっていきたいです。それとは別に、お客様に自信を持って当事務所のスタッフです、と紹介できるように育てていきたいです。「米津良治税理士事務所」ではなくベイスという屋号をつけたのもスタッフ一人ひとりに自分が主役だと感じてもらうためです。今後は5、6人の事務所をイメージしていて、今は法人顧客7割で仕事をしていますが、相続や資産税のボリュームを増やして半々ぐらいにしていき総合事務所を目指していきたいです。

ーなるほど、総合事務所を目指す理由はあるのでしょうか?
どっちも楽しいので両方やりたいという欲張りです。何かだけやりたいというよりも色々やりたいという方と気が合うのでそういう人が輝ける事務所を作りたいです。

ー開業したい人や、企業に勤めたい人と色々あると思いますが、そういう人に向けてアドバイスをお願いいたします。
今、企業の経理部などで働いている人で、開業をするつもりがない人は会社に残るのも懸命な働き方だと思います。一方、多少ハードワークになっても自分の力を試してみたいという人には税理士業は魅力的な仕事だと思います。いずれにせよ、給料や知識などは後からついて来るので、どういう人と出会えて、どういう機会を得られるのかとかそういうことを重視するのがいいと思います。

ー税理士を目指している人にメッセージをお願いします!
勉強している間は不安だと思いますが、チャンスは必ずあるので逃さないという気持ちを忘れずに励んでください。

ー最後に米津先生にとって、税理士とは何でしょう?
自己表現です。税理士は地味な仕事ですが、顧客との会話や作成資料を通して自己表現をする仕事だと思います。一緒に働くメンバーには仕事を通して自分らしさを発揮する楽しさを感じてほしいと思っています。自分がどういう人間か、お客様や同僚とシェアしていくと人生が豊かになると思います。

ー本日はお話お聞かせくださってありがとうございました。

今回お話を伺った米津良治氏が代表を務める
BASE総合会計事務所のHPはこちら
米津良治氏のTwitterはこちら

この記事を書いたライター

HUPRO MAGAZINEを運営している株式会社ヒュープロ編集部です!士業や管理部門に携わる方向けの仕事やキャリアに関するコラムや、日常業務で使える知識から、士業事務所・管理部門で働く方へのインタビューまで、ここでしか読めない記事を配信。
カテゴリ:キャリア

おすすめの記事