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みなし配当には源泉徴収が必要!所得税の取り扱いはどうなるの?

岡山 由佳
みなし配当には源泉徴収が必要!所得税の取り扱いはどうなるの?

みなし配当は支払いを行う法人は所得税の源泉徴収が必要であり、支払を受ける個人は源泉所得税の源泉徴収を受ける必要があり、場合によっては確定申告が必要となります。
今回は、みなし配当を受ける個人の側面から、所得の種類や確定申告の必要性の有無等について、詳しくご紹介致します。

みなし配当には源泉徴収が必要

みなし配当とは、会社法上で定義をする株主への配当が行われていない場合であっても、配当が行われたものと同等に税法上で取り扱う、配当とみなされる、利益の分配のことをいいます。

みなし配当については、下記コラムにて詳細をご紹介しております。
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みなし、という言葉のとおり、会社法上で定義をする配当とは異なる利益の分配方法であることから、利益を分配する法人も、利益が分配される個人も、それがみなし配当に該当をし、源泉徴収が必要となることを見落としがちです。

今回は、個人に対するみなし配当に係る源泉徴収についてご紹介致します。

みなし配当は、個人の配当所得になる!

個人が得た収入や利益のことを所得といい、一定の所得を除きこの所得に対しては所得税が課税されます。
所得税法上、個人の収入や利益は10種類に分類され、それぞれ所得税の計算方法や課税方法が異なります

所得の区分のついては、下記国税庁のホームページでご確認ください。
国税庁 所得の区分のあらまし

上記10種類の分類のうち、法人が清算されて残余財産の分配を受ける、法人にその法人の自己株式を売却した場合等により、支払を受けるような、みなし配当によって個人が利益を受けた場合、その利益は個人の配当所得に該当をします。

配当所得とは

配当所得とは、株主や出資者が法人から受ける剰余金や利益の配当、剰余金の分配、基金利息、投資法人からの金銭の分配又は投資信託及び特定受益証券発行信託の収益の分配等に係る所得をいいます。

配当所得の所得金額は、源泉徴収税額を差し引く前の収入金額から、株式等を取得するための借入金の利子を差し引いて計算をします。

収入金額から差し引くことができる借入金の利子は、株式等の配当所得を生ずべき元本のその年における保有期間に対応する部分に限られます。
譲渡した株式に係るものや確定申告をしないことを選択した配当に係るものについては、収入金額から差し引くことができる借入金の利子にはあたりません。

配当所得の源泉徴収

配当所得は、配当等の支払の際に下記の株式等の区分に応じて所得税等が源泉徴収されます。

つまり、みなし配当を行う法人は支払いの際に源泉徴収を行う必要があり、みなし配当を受ける個人は源泉徴収を受ける必要があるということです。
源泉徴収された所得税等は、原則として、その年分の納付すべき所得税額等を計算する際に差し引きます。

上場株式等の配当等の場合

国税15.315%、地方税5%の税率により所得税及び復興特別所得税が源泉徴収されます。

上場株式等以外の配当等の場合

国税20.42%の税率により所得税及び復興特別所得税が源泉徴収されます。

みなし配当と確定申告

所得税が課税される収入や利益が1月1日から12月31日の間に生じた個人のうち、一定の人は翌年の3月15日までに確定申告を行い、所得税を納付する義務があります。

確定申告が必要となる人の要件の詳細については、国税庁のホームページでご確認ください。
国税庁 確定申告が必要な方

みなし配当と確定申告

みなし配当を受けて確定申告が不要となる個人

配当所得は、原則として総合課税の対象となる所得で、確定申告の対象とされますが、確定申告不要制度を選択することが出来るものがあります

1回に支払を受けるべき配当等の金額が、10万円に配当計算期間の月数を乗じて12で割った金額以下である場合には、確定申告を要しません。これは1年間で10万円以下のみなし配当を受けた場合には、確定申告が不要であるとほぼ同意であるといえます。
配当の支払いを受ける際の、源泉徴収により、配当所得に対する課税関係は完結したものとされます。

みなし配当を受けて確定申告が必要となる個人

配当金額が上記の金額を超える場合には、配当所得として総合課税の対象となり、確定申告が必要となります。
総合課税で配当所得を申告する場合には、配当控除が適用をされます。

総合課税については、下記コラムにて詳細をご紹介しております。
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配当控除

配当所得がある場合、一定の方法で計算した金額の税額控除を受けることが出来ます。これを配当控除といいます。
配当控除を受けるためには、確定申告が必要です。その際には、この配当控除の額のほか、配当について源泉徴収された所得税の額が納付すべき税額の計算上控除されます。

配当控除を受けることが出来る配当所得とは、日本国内に本店のある法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、金銭の分配、証券投資信託の収益の分配等で、確定申告において総合課税の適用を受けた配当所得であり、みなし配当による配当所得も含まれます。
しかし、下記のものは配当控除を受けることが出来る配当所得には該当をしません。

基金利息
私募公社債等運用投資信託等の収益の分配に係る配当等
国外私募公社債等運用投資信託等の配当等
外国株価指数連動型特定株式投資信託の収益の分配に係る配当等
特定外貨建等証券投資信託の収益の分配に係る配当等
適格機関投資家私募による投資信託から支払を受けるべき配当等
特定目的信託から支払を受けるべき配当等
特定目的会社から支払を受けるべき配当等
投資法人から支払を受けるべき配当等
確定申告不要制度を選択したもの
申告分離課税制度を選択したもの

確定申告の方法

みなし配当を受けて確定申告が必要となる個人に該当をする場合には、手続きを確認する必要があります。

確定申告の方法については、下記のコラムにてご紹介をしております。
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まとめ

上記のように、みなし配当を受けた個人は、その収入や利益が配当所得に該当をし、所得税の納付義務が発生します
そのみなし配当の金額により、所得税の納付が法人からの源泉徴収で完結をするのか、確定申告が必要なのかが相違します。

思わぬ不利益を被らないよう、みなし配当を受ける際には、所得税の取り扱いについて留意をするようにしましょう。

この記事を書いたライター

大学在学中より会計業界に携わり10年超の会計事務所、税理士法人での実務経験を経て独立。各業種の会計業務に関するフォローのみならず、ライターとして税務、労務、経理の話題を中心に、書籍やWebサイトに数多くの寄稿を行う等の様々な活躍をしている。
カテゴリ:コラム・学び

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