株式会社MFSの平山亮氏は、野村證券で約12年働いた後、BHI株式会社を経て2020年にオンライン住宅ローンサービス「モゲチェック」を運営する株式会社MFSに入社し、取締役CFOに就任。同社に入社されるまでのキャリアパスや経験、今後の展望などについてHUPRO編集部が伺いました!
【ご経歴】
2007年4月 | 野村証券入社 |
2014年-2016年 | MBA留学 |
2019年3月 | BHI株式会社入社 同年8月取締役CFO就任 |
2020年3月 | 株式会社MFS入社 執行役員CFO就任 |
2020年12月 | 同社取締役就任 |
【キャリアグラフ】
ーキャリアの最初は野村證券から始まったそうですね。
はい。学生時代はボクシング部でボクシングに熱中したので、仕事もボクシングのようなハードな業務に挑戦してみたいと考えていました。元々金融に興味があったので、就職活動では主に証券会社のみ受けました。
入社した野村證券ではバックオフィスに配属され、管理会計を担当しました。終電で帰る日も多く、とても忙しかったことを今でも覚えています。その後、異動希望を出して投資銀行部門へ異動しました。「お客様のために働きたい」という気持ちが芽生えたからです。
異動当初は右も左もわからず、かなり辛かったことを覚えています。でも開き直って「やるしかない!」という気分になり、少しずつ課題をクリアーしていきました。よく考えてみたら、ストレスの原因は自分の実力不足にあると気がついたことが、開き直るきっかけです。これに気がついてからは、仕事に対するモチベーションが戻ってきました。
ーどうやって実力不足を埋めたのですか?
自分のポリシーに忠実に行動しました。そのポリシーは「ずるをしない」「やるといったことは必ずやる」「楽しんでやる」の3つ。この3つを意識し、改めて仕事に取り組んでいきました。
これは学生時代に熱中していたボクシングにも通じることがあると感じています。ちなみにこのポリシーは、バックオフィス配属時代の上司から学んだことです。
ー「やるしかない」というマインドに切り替えるコツがあれば、教えてください。
それはもう、小さなことからコツコツやるしかありません。最初から大きな仕事はできません。例えば「今日はエクセルのショートカットを1個覚える」や「資料の作り方のこういう点に気をつけて作成する」等々。小さな挑戦から始めます。そういう小さな挑戦の積み重ねが大事だと感じています。
小さな挑戦はチームになったときにはチームとしての挑戦となり、結果を出し、それが会社になって、会社としての挑戦となり、結果につながると考えています。稀に最初からなんでもできる人もいますが、それは天才と呼ばれるごく一部の人で一般的には参考にならないと思っています。
ー平山さんは野村證券勤務時代に米国へ留学したと聞きました。留学のきっかけは何ですか?
働いているうち、自分にとって足りないことが多すぎることに気がついたからです。英語も話せない上に、会社がどのように運営されているのか、人事、オペレーション、マーケティングなど門外漢なことが多すぎました。しかも、どれからどう手を付けいいのかわかりませんでした。
そんなときにMBAで網羅的に学習をすれば、そういったものを体系的に学べるという話を聞きました。当時の直属の上司がMBAホルダーだったので相談してところ、絶対学んだ方がいいとアドバイスをいただき、留学を決意しました。
会社に社費留学制度があったので、それに応募し合格し、アメリカに留学し学習をすることになりました。留学期間は約2年間で、無事にMBAを取得できました。
ー留学中に何か考えることとかありましたか。
留学期間中、かつてぼんやり考えていた起業のことも考えていました。実は私の両親は公務員です。それとは正反対に、自分の力で事業を起こしてみたいという思いを学生時代からもっていました。
留学中に起業についていろいろと思いを巡らしましたが、いいアイデアが浮かんで来ず、起業には至りませんでした。
ー帰国後、留学前の自分との変化は感じましたか?
「会社を辞めても大丈夫だ」「なんとかなる」というよくわからない自信が生まれました。これによって前よりも思い切って仕事に挑戦できるようになったと思います。
その後、留学から帰国して約3年たったころ転職しました。
ー転職を決意したのはなぜですか?
留学時代に考えていたように起業はいいアイデアが浮かばない。だけど、起業に近いことをやってみたい。「だったら転職だな」と思ったからです。
ー新しい職場はどのような会社がいいか、希望がありましたか?
ポイントは、プロダクトが面白そうなこと、自分と同じバックグラウンドの人材がいないこと。自分と同じような人材がいると、差別化が難しいなと思いました。他にはこれから上場しそうな会社や上場準備中の会社を探しました。そうすれば、起業に近いことができると思ったので。
ー転職の結果はどうでしたか?
最初に転職した会社は、最終的に私と相性が悪く、再度転職することになりました。転職先が、現在の会社です。
ー一度、転職は失敗したんですね。転職で難しいと感じたことはありますか?
やはり人と同じで、自分と合う会社を探すことは難しいと感じています。自分と会社、あるいは経営陣や社長との相性が合うかどうかが特に重要と痛感しました。ものの考え方や経営の方向性などが違うと、自分の実力が発揮しづらかったり、ストレスを抱えてしまいます。短時間の面接だけではこのような相性は分かりづらいと思っています。
1社目のときにやっておけばよかったと感じるのは、その会社の株主や、社員の方に会社のことや社長のことについて、もっと話を聞いておけばよかったと感じています。
ー2度目の転職、つまり現在の会社を探すときに気をつけたことは何でしょう?
今の会社を探すときには注意した点は「会社の方針と自分の考えが近いこと」「プロダクトが面白いこと」「社員の雰囲気」の3つです。
特に一つ目は先程申し上げた一度目の転職で学んだ大切な部分です。私は、会社はスピード感をもって成長していかないといけないと常に考えています。会社の他の経営陣も、会社を成長させて大きくしていくという方針でないと、働きながらお互いがストレスを抱えてしまいます。
ー現在の会社に決めたのは、何が決め手ですか?
今の会社を決めたのは、プロダクトの面白さ、株主のお人柄に加えて、経営陣が売上の大切さを知っているからでした。しかも経営陣が私と同じ金融業界出身なので、話もロジカルに素早く理解してもらえることもポイントでした。
入社前に社員の方とも話をしましたが、みなさんしっかりされていました。株主にも会う機会がありましたが、私と株主のみなさんとの相性もよかったので、ここで働くことを決めました。
ー現在の会社では、入社後CFOに就任しています。やりづらさなどはありませんでしたか?
転職して最初から大きな役職につきましたが、偉ぶってはダメだと肝に銘じていました。たまたま自分の与えられたポジションが今の役職であって、それに合わせた報酬を頂いているというだけです。偉いというわけではありません。一般的な転職と同じことで、与えられたポジションに応じた仕事をこなし、まわりの社員の方とは平等に接していくだけです。
ーCFOとはどんな仕事なのかを教えてください。
具体的には、経営に関する業務全般でファイナンスに重きを置いています。人事・労務・総務・法務・財務、一時的なイベントでは資金調達など。
CFOは、会社の中で一番自分自身を客観的に見ないといけない立場だと思っています。数字の面においても、組織の運営面においても、オペレーションの面においてもです。実はCFOは、CEOとやっている業務はおおきく変わらないと思っています。だからこそ、アドバイザー的な視点が必要と考えています。
私は常に一歩引いた目線で会社や業務について見ています。CFOという仕事には、非常にやりがいを感じています。
ー資金調達もCFOの仕事とのことですが、資金調達での苦労はありますか?
いろいろな投資家の方に会って、会社の成長ストーリーや必要な調達金額などを説明するのですが、自分自身の実力不足で、成長の蓋然性や、ビジネスモデルをうまく理解していただけるように伝えられなかったり、最終的には断られることがある点などは大変さを感じます。
資金調達は、自社をいかにアピールして、資金を調達してくるかという仕事と言えます。だから私は資金調達は、資本市場に対する会社の営業活動だと思っています。
また、会社の外で言ったことと、中で言ったこととのズレは可能な限り小さくすることを心掛けています。ですから会社の外で説明するために、社員にしっかりと話を聞くようにしています。「なぜなのか」「どうやるのか」など、社員に細かくヒアリングします。自分が納得し理解しておかないと、外部の人に説明できないからです。
資金調達に苦労したこともありますが、最終的には希望金額以上の調達が出来ました。
ーCFOとして、社員の人にやってもらわないといけないこともあると思います。そうしたときに、どのように対応しますか?
まず会社全体の問題に対し、解決のための仮説を立て、仮説をひとつずつ検証していきます。そして、いつも頭の整理として「どんな分解要素があって、どんな問題があり、どんなことをやるのか。そして誰が何をいつまでにやるのか」まで細かく考えています。
また「やらせる」姿勢だと社員にとって負担になます。やり遂げるには目標をハッキリさせ、関わるメンバー全員がその目標を理解しておくことが大事。みんなで目指す場所を同じにしておけば、みんなそこを目指します。目的地がわかっていると、試行錯誤してたどり着けます。これが一番大切なことでありながら、一番難しいと感じます。
ー現在の仕事は非常にやりがいを感じていて、モチベーションも高いと感じます。とくにやりがいを感じていることは何ですか?
一番のやりがいは、会社を大きくすることです。会社が大きくなれば、弊社の住宅ローンのプロダクトに関わるみんながハッピーになります。銀行、不動産会社、住宅を購入される方など、ステークホルダーの全ての方々がよくなることを意味します。
ー貴社の住宅ローンのプロダクトとは「モゲチェック」のことですね。
はい。住宅ローンを使う方は、基本的に一生に一度しか住宅ローンの申込に触れないため、そもそも自分がどれくらいお金を借りられるのか、どの銀行のローン審査だったら通るのか、手続きをどのように進めていけばよいのかなどよくわからないことが通常です。また、いざ調べてもよくわからないという方が多いと思います。結局、不動産会社に薦められた住宅ローンをそのまま組むというの方が多いと推測しています。お客様はもしかしたら、もっと低い金利で借りられたり、もっとたくさんの金額を借りられたかもしれません。銀行にとっても、現状のローン審査では、審査に落ちるかもしれないお客様を審査することとなり、結果的に審査コストが嵩みます。
一方、弊社の「モゲチェック」が間に入れば、このお客様はどれくらい借りられるか、どの銀行だったら審査が通りやすいのかあるいは通らない可能性が高いのかがシステムで分かります。銀行に対しては審査に通る可能性の高いお客様をご送客することとなり、銀行側の審査負担も軽減されます。結果的に、住宅ローンを借りるお客様は、最適なローンを組むことが可能となり、不動産会社は、お客様の予算に応じた物件を紹介できます。
だから弊社の売上が上がれば、関係するみんなの負担が減って、業界全体の効率が上がるいうわけです。
ーそのプロダクトを広めて売上を上げるための、今後の課題はありますか?
はい、銀行と住宅ローンを組むお客様に対して、弊社の住宅ローンのプロダクトの認知度が低いことが大きな課題です。認知度が上がれば、モゲチェックを使っていただける自信がありますので、頑張って認知度を上げていきたいと思っています。
「自走」できる人ともに働きたい
ー今後のキャリアはどう考えていますか。
当面は、今の会社を大きくしていきたいと考えています。会社が大きくなっていくと、求められる役割も変わってくると思います。その役割に、自分を合わせて、成長していきたいところです。もしも役割が合わなくなったら、新しい道を探す必要性出てくるかもしれません。別の業界、会社に移ってもいいと思いますし、自分で何か事業を始めるのもいいと思います。
ーどんな人と一緒に働きたいですか?
一緒に働きたいのは、課題を自分で見つけ、自分で走って行ける人です。我々は「自走」と呼んでいます。言われたことだけをやることは、ある意味誰でもできます。なぜそれをしなければいけないかを考えられる人が、自走できる人です。
自走できる人を見極める判断基準は、過去に課題を乗り越えたことがある人や失敗してその原因を認識している人などかと思います。転職を考えてマーケットに出てくる方で自走できる方は非常に貴重なので、ぜひ一緒に働きたいと思っています。
ー証券会社で働いている人の中には、CFOとして働きたい人もいると思います。その方たちに向けてメッセージをお願いします。
証券会社出身で転職を考えている人に、CFOってどんな仕事ですかとよく聞かれます。そんなときは、「証券会社時代のあなた自身を考えてください。お客様が困っているときは絶対になんとかしますよね。それと同じです。相手が自分の会社のことに変わっているだけだから結局何とかするはずですよ。」とアドバイスしています。実際、私もそのようなアドバイスを友人にもらって転職しました。
証券会社からCFOを目指す方に向いている特徴は、「他社のビジネスがどうなっているか興味をもっている人」「会社って何なんだろうという興味がある人」など好奇心の高い方ではないでしょうか。一方M&Aなどプロダクトのみに関心がある方は、仕事内容も大きく変わってくる可能性があるので、やりにくいかもしれません。
転職したいけど不安だという声もよく聞きますが、実際は何とかなる、あるいは何とかする方が多いと思いますので、自信をもって転職活動に臨んで欲しいと思います。実際に今までなんとしてきたのだから。万が一ダメであっても戻ることが出来ると思いますし、思い切って転職してみたらいいと思います。
―本日はお話を聞かせていただきありがとうございました。