定款とは、株式会社設立後に認証を受けて本店・支店に備え置かなければいけないもの。株式会社の”憲法”とも呼ぶべき重要な書類のため、本来ならば適切に管理をし、第三者からの信用を担保する必要があります。
もっとも、実際に株式会社を経営していると、会社の定款を紛失してしまうことも少なくありません。助成金や補助金の申請、各種許認可等の申請、金融機関との取引(口座開設や融資など)、税務署への届け出など、数多くの場面で定款(定款原本のコピー及び原本証明)の提出が求められるため、定款を紛失すると困ったことになるでしょう。
そこで、今回は、定款を紛失した場合の対処法を4つ解説します。あわせて、どうしても定款を復元できない場合の再作成手続きの流れも紹介するので、最後まで内容をご参考ください。
定款の提出を求められた際、定款を紛失したことが原因で各種手続きを進められないとなると、株式会社側が困るだけではなく、第三者からの信用を失うことになりかねません。
そこで、定款の紛失が発覚した場合には、すみやかに次の4つの方法をご検討ください。
それでは、定款を紛失した場合の4つの対処法について具体的な内容・手続きの流れを見ていきましょう。
株式会社を設立した場合、かならず定款(原子定款)を作成したうえで、公証人の認証を受ける必要があります。この認証の際には、公証役場保管用と株式会社の備え付け用の2部の原始定款が作成されます。
つまり、株式会社側が定款をなくしたとしても公証役場に行けば原始定款は手に入るということです。
定款の紛失に気付いた現在が、原始定款の認証を受けてから20年以内なら公証役場に保管されているので、すみやかに問い合わせをして謄本を取得してください。
公証役場に保管されているのは原始定款だけです。
株式会社を経営していると、時々の必要性から定款変更・変更登記手続きを経ている場合があるでしょう。この場合には、公証役場で変更後の定款を手に入れることはできません。
対処法2~4をご検討ください。
確実性は担保されていませんが、株式会社の設立業務・定款変更手続き等を専門家(弁護士・司法書士・行政書士・税理士など)に依頼した場合には、依頼先がクライアント情報として定款の謄本等のデータを保管している場合があります。
特に、現在も顧問契約を締結している専門家(特に、顧問税理士)がいれば、定款謄本を保管している可能性は高いです。
したがって、これらの専門家に問い合わせをすれば、定款情報が手に入るので、金融機関等への申請業務に活用することができます。
原始定款及び変更手続き後の定款の内容は、法務局で閲覧することができます。
なぜなら、法務局は申請があったときから5年間は各種申請書類(登記申請書及び付属書類)を保管しているからです。
ただし、法務局では謄本を手に入れることはできず、閲覧(スマホ・デジカメでの撮影は可)が許されているだけ。法務局に行ってそのまま申請業務等に役立てることはできず、別途定款再生の手続きが必要である点にご注意ください。
定款の謄本が手に入った場合・法務局で閲覧により内容を把握できた場合には、その内容を書面化すれば定款を再生することができます。
その一方で、すでに定款を認証してから20年以上が経過した場合などには、定款を簡単に再生することはできません。
その場合には、法務局で登記事項証明書(履歴事項全部証明書)を入手するなどして定款に必要な情報を収集し、書面化したものを定款変更手続きにかけ、現行定款として扱うことになります。
定款を再作成するためには、定款変更手続きの遵守が求められます。
定款紛失時の再発行手続きでは、ふたたび公証役場で認証を受ける必要はありません。
紛失した当事者からすると「新しく定款を作った」という感覚になるかもしれませんが、法的にはあくまでも変更手続きだからです。すでに設立時の原始定款の認証プロセスは経ているのでご安心ください。
定款を紛失した場合、すみやかに定款を再生するための対処が必要です。
なぜなら、定款とは会社にとって不可欠のものだから。資金調達や各種申請手続きに弊害が出るだけではなく、第三者からの信用を失って経営自体に悪影響が生じかねません。
定款の再生手続き等についての不安は、顧問税理士や外部の専門家等に相談すればすぐに解決に向けてサポートしてくれるはず。事態が悪化しない段階ですみやかにご対応ください。