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一度きりの人生。後悔の量は少ない方がいい。 株式会社うるる CFO 近藤浩計氏のキャリアとビジョン

HUPRO 編集部
一度きりの人生。後悔の量は少ない方がいい。 株式会社うるる CFO 近藤浩計氏のキャリアとビジョン

株式会社うるる CFOとして活躍されている近藤浩計氏。人生の選択には「後悔の量」をもとに決断をしてきたとのこと。そんな近藤氏が歩んできたキャリア遍歴についてHUPRO編集部がお話しを伺いました。

2005年 新卒 商工組合中央金庫 入庫
2009年 独立行政法人中小企業基盤整備機構 入社
2010年 みずほコーポレートアドバイザリー株式会社 入社
2014年 中國信託商業銀行股份有限公司 入社
2015年 株式会社うるる 入社
2018年 取締役CFO 就任

キャリアスタートは、父の忠告を聞かずに飛び込んだ金融の世界

―どのような学生時代を過ごされましたか?

正直、あまり優秀な学生ではなかったです。
運良く入れた大学(名古屋大学)でもあまり熱心に勉強はせず、草野球サークルのメンバーと遊んでばかりでした。

ただ、就職活動は真面目にやっていました。銀行員だった父からは「銀行だけはやめておいた方がいいぞ」と言われていたのですが、結局その忠告を真面目に聞かず、商工組合中央金庫という半官半民の政府系金融機関に入社を決めました。

—「銀行はやめておけ」とお父様に言われながら、金融業界を志した理由は?

私が小さい頃、父は仕事が忙しく、全然家に帰って来ないというのが普通でした。転勤も多く、単身赴任もありました。
父の言葉は息子にそんな思いをさせたくないという親心からだと思います。

ただ、就職活動をしている中で、どんな仕事が楽しいだろうと考えた時に、
金融の仕事は様々な会社との取引があり、多種多様な企業の経営者と近い立場で話ができるという点に面白さを感じ、金融業界での仕事を選びました。

最初に就職した商工組合中央金庫は、中小企業向けの専門の金融機関です。
日本企業の99%は中小企業と言われる中、日本経済に少しでも貢献ができる仕事と考えていました。

「10年後20年後、自分はどうなりたいか」を問いかけた、初めての転職。

― 商工組合中央金庫に4年ほどお勤めになられて、転職された経緯は?

新卒当時は、就職したら生涯ここで働き続けるという考えで入社しました。
最初の2年間は叱られることも多く辛い時期でしたが、3年目あたりから“自分の仕事のやり方”というものが見えてきて、それと同時に仕事へのモチベーションも高まっていきました。

ただ、4年目に入った時に「将来、自分はどうなっていくんだろう」とふと考えたことがありました。その時は仕事が楽しかったのですが、自分の将来を想像した時に5年後、10年後、20年後の自分の姿が想像できなかったんです。

―そう思われたのはなぜですか?

昔から悪く言えば飽きやすく、よく言えば好奇心が旺盛で新しいことに魅力を感じる性格でした。先輩や上司を見ると会社での自分の将来像がなんとなく想像でき、違うフィールドに行ったら自分はどうなるのだろうか、そこに興味が沸きました。

当時、私は中小企業診断士という資格の勉強をしていて、その中で、独立行政法人中小企業基盤整備機構という中小企業の支援を行う組織があることを知りました。偶然にも新聞の求人欄に募集が出ていて、これはチャンスだと思いました。自分が学んできた金融知識を活かして違うフィールドで企業支援をしてみたい、と転職を決意しました。

― 実際に転職されていかがでしたか?

国の中小企業支援政策を実際に実行していく組織で、魅力的な職員が多くいらっしゃいました。一方、在籍した1年8カ月の中で「自分がやりたい事はここにいてもできないかもしれない」ということを感じました。

私が配属された部署は、中小企業基盤整備機構、地方自治体、民間企業が出資して作られた第三セクターの管理が主な業務内容でした。

自分自身は管理業務よりも、より直接的な企業支援をしたいと考えていました。他の部署に異動し、その仕事を担うのには時間が掛かりそうだと考え、早期に転職することを決意しました。

成長の実感を手にした2度目の転職。まっさらな状態で飛び込んだM&Aの世界。

― その後、みずほコーポレートアドバイザリーに入社されますが、自分がやりたいことを実現できる職場に出会えたのでしょうか?

前職の勤務期間が短いこともあり、就職活動に半年ほどかかるなど苦労しました。

みずほコーポレートアドバイザリーは当時のみずほコーポレート銀行の子会社で、M&Aのアドバイザリーをしている会社です。私はM&Aについて何も知らない状態で入社しました。周囲の社員のレベルが非常に高く、みずほグループの中でも優秀な方や、他社から転職してきた会計士、M&Aの仕事を証券会社等で経験されていた方などが集まっていました。当時私はM&Aに関しては全くの素人で、よく自分のような者を採用してくれたなと思っており、ポテンシャルのみで採用を決めてくれた当時の上司には本当に感謝しています。周囲との実力差は歴然で、とにかくがむしゃらに働き、勉強していました。

―M&Aアドバイザリーとは具体的にどういった仕事をされていましたか?

企業のM&Aのフィナンシャルアドバイザーとして、「ソーシング」から「エグゼキューション」、「クロージング」までトータルでサポートをするという仕事をしていました。

高い知識レベルや交渉スキルはもちろん、経験も含めて多くを求められる仕事なので、まずは知識そのものを身につけるためにも、毎日夜中まで仕事をして、そのあとや土日もずっと勉強という生活を3年間続けていました。

― 入社から3年間、日常の激務だけでなくプライベートも勉強に充てるという生活を続けていらっしゃったということですが、継続できたのは何故ですか?

成長している実感が強く、楽しかったというのが大きな理由です。
ものすごく忙しかったですし、わからないことだらけではあったのですが、周りの方々にも本当に助けて頂き、色々と教えて頂きました。
自分の力が伸びているという実感があったので、辛いとは感じませんでした。

好奇心が旺盛なため、この目まぐるしく新しいことが行き来する環境は、自分にとっては幸せでした。

― 充実したみずほコーポレートアドバイザリーでの3年間の後に、再び金融機関に転職されたのはどういった理由だったのでしょうか?

みずほコーポレートアドバイザリー時代の1つ上の先輩に声をかけられたことがきっかけでした。その方が中國信託商業銀行という台湾系の銀行の東京支店でM&Aアドバイザリーチームを作ることになり、そのタイミングで声をかけていただきました。好奇心が沸き、これも何かの縁かと思い、転職を決意しました。

転職して小規模のチームに入ることで自分の案件を作り、案件のエグゼキューションを行っていくということができるだろうな、と考えたところもあります。みずほコーポレートアドバイザリーでの仕事は、上司や先輩作り上げた案件を下っ端としてエグゼキューションする、という感じだったので、自分の力でこれらを進めてみたいと考えたのも理由の一つです。

飛行機を乗り逃すほどに意気投合した「うるる」メンバーとの出会い

―中國信託商業銀行 M&Aチームでの仕事の中で、
現在CFOを務められている「うるる」との出会いがあったとのことですが…?

そうですね、当時のお客様の一つが「株式会社うるる」でした。
M&Aに関する相談があり、私が担当としてお手伝いをしていました。

うるるの代表の星、副社長の桶山の2人、取締役の小林が私と同じ札幌出身であることもあって意気投合し、案件進行当時は週に4回くらい会っていました。

笑い話ですが、羽田空港の荷物検査を終えて飛行機を待っている間、副社長の桶山と話が盛り上がりすぎてしまい、その場にいるのに飛行機を乗り逃すということをやってしまうほどでした(笑)。

ようやく乗った飛行機の中で「いつか一緒に同じ組織の中で仕事が出来たら楽しそうですよね」という話を冗談交じりでしていたのですが、その半年後に突然桶山から電話が来たんです。「近藤さん、時が来ました」と。

うるるが上場を目指すことになり、上場準備を一緒に手伝ってくれませんかという電話をもらって、思ったよりもずいぶん早いとはツッコミながらも、こうして誘ってもらえるチャンスというのはそう巡ってこないだろうと思いました。

また、私は金融業界での仕事が長かったですが、事業会社で働くということに憧れもありました。金融だと幅広いお客様とお付き合いができますが、どうしてもそれぞれの関わりの深さは、事業会社の中で働くのとは比べ物になりません。自分が主体となって、深く入り込んで仕事をする経験をしてみたいと思っていたこともあり、入社を決めました。

― 「うるる」に入社されてからは、実際にどういったお仕事・役割を任されていたのでしょうか?

実は当初社員として入社したのですが、他社の支援などにも関わっていきたいと考え、入社後1年ほど経ってから業務委託契約での関わり方に変更してもらいました。といっても上場準備の業務は非常に忙しく、結局うるる以外の仕事を受ける余裕はゼロでした…。

具体的に行っていたのは上場企業としてあるべき体制を作るという仕事で、経営管理の仕組みづくり、上場申請に必要な書類作成サポート、上場審査対応サポートなどを行ってきました。

前職のM&Aアドバイザリーの仕事がこの時に大いに活かせました。財務、会計、法務、経営管理、交渉のスキルなど幅広い経験を積んでいたので、それらを総合する経験が上場準備の際には役に立ちました。入社から2年後の2017年3月、東証マザーズに上場しました。

―上場準備の中で苦労されたことはありますか?

思い返せばたくさんあります。
上場準備時は急激に組織が拡大していった時期でした。資金調達をし、どんどん投資するぞというフェーズで、会社に人も増えていきました。

私が入社した当時の同期8人のうち今も残っているのは私だけ…ということが示すように、急拡大したものの、その後一気に人が減ってしまったという失敗談があります。

― 多くの方が辞めてしまった、その原因はなんでしょうか?

「カルチャーに合っていない人」を採用してしまっていたことが要因です。
今は、採用活動の中で反省点として活かしていて、採用をする時には「うるるのカルチャーが合致する人物だろうか」という点を意識して見るようにしています。

CFOとして、IRマインドを変えた個人投資家からの言葉

― 2018年に「株式会社うるる」CFOに就任されましたが、どのような経緯だったのでしょうか?

当時CFOを務めていた副社長の桶山がBPO事業部門専任に戻る、という会社の判断がありました。じゃあ次に誰がCFOをやるのかという話になった時に、私に打診がありました。

実は、上場が終わったと同時に私の役割は一旦区切りがついたと感じており、「うるるで自分がやれることはやりきったのでは」と思っていました。しかし周囲を見渡した時に、スキルも経験も自分が適任なのではと感じるようになりました。「まだうるるで自分が貢献できることはあるかもしれない」と考え直し、この話をお受けする決意をしました。

― CFOに就任されて働き方などはガラッと変わりましたか?

働き方はそんなに変わっていませんが、責任とプレッシャーは増えました。四半期ごとの決算開示日が近づくにつれ、睡眠の質が低下していきます(笑)。

また、CFO就任後の2019年5月に中期経営計画を発表したのですが、それをきっかけとして、IRに対しての考え方が大きく変わる出来事がありました。

5カ年の中期経営計画で、初年度は成長投資のため大きく赤字にするという内容を発表しました。当社として議論を尽くし、企業価値を最大化させるための計画を出したのですが、市場の反応は悪く、株価は大きく下落しました。お叱りのお電話を多数いただき、株主総会でも手厳しいご意見をいただきました。
このときは、中期経営計画を愚直に進め、その実績をお見せしていくことだけが重要だと考えていました。

その後に実施した個人投資家説明会の終了後に、一人の個人投資家の方に声を掛けられました。「お話をお聞きして、やっぱりいい事業をされている会社だと思いました。株価が下がって私は含み損を抱えているのですが、応援しているので頑張って下さい」というお言葉をいただきました。

この個人投資家からの言葉は、私のIRに対する考え方を大きく変えてくれました。
これまでは、「今は理解してもらえなくても、将来結果を示せば投資家や株主はきっとついてきてくれる」、そう思っていました。しかし、うるるのことをしっかり理解してくれている人は、うるるのことを応援してくれる、そんな当たり前のことに気付かされました。

会社の状況や目指す未来をステイクホルダーにしっかり伝えれば理解を促せるし、協力も得られる。一時的な不利益が発生しても、結果としてステイクホルダーの皆様の利益に繋がることを真摯に伝えることが重要であると感じました。

うるるの理念に「世界に期待され 応援される企業であれ」というものがあります。IRという活動を通じて、投資家や株主の皆様から応援される企業でありたい。改めて今、そのように考えています。

CFO就任後に、モチベーションがグッと上がったのはそんな気づきと自分の中での新しい挑戦に出会えたからです。

2019年からIR活動に力を入れ始めて2年程経ちましたが、成果が出てきた実感はあります。うるるは事業が多岐にわたっていたり、ビジネス構造がわかりにくかったりするので苦労も多いのですが、うるるを知らない人たちにどうしたら知ってもらえるか、どうしたらうるるのことをより深く知ってもらえるか、などを意識してIRに取り組んでいます。
まだまだできることや改善点は多いですが、既存のIRの常識に捕らわれることなく、SNSを活用するなど、うるる独自のIRスタイルを築いていきたいと考えています。

「後悔の量」の最小な決断でキャリアを切り拓く

― 近藤さんの5年後10年後のキャリアを考えた時、どうなりたいと考えていらっしゃいますか?

自分の後任をしっかり育てていきたいということは考えていて、これは現在進行中です。チームメンバー全員が本当に優秀で、日々成長してくれているので、特に心配はしていません。
IR活動に時間を使えるようになったのもこの点が大きくて、今まで自分がやっていた財務や経営企画などの仕事を信頼できる会社の仲間に任せることができるようになりました。

組織の再現性を高めるためにも重要なことではあるので、今後も後任の育成には力を入れていきたいと思います。

― HUPROマガジン読者に対して、メッセージをお願いいたします!

転職って、人生の中でもそれなりに大きな決断のはずです。
私の経験上、何か決断をした後には「やっぱりあっちにしておけばよかった」と大体後悔します。でも、おそらく2択のどちらを選んでも、結局自分の選択を責めたくなるものです。後悔の“量”が違うだけで。

私自身も過去の転職では「転職しなきゃよかった」と後悔した瞬間もあります。でも、転職しなかったとしても「早く辞めときゃよかった」ってきっと後悔をしていたと思います。ではどちらが後悔の量が多いのか?それを自分なりに比較してみて、後悔がより少ないであろう決断をしてきました。

人生は一度きりです。自分が人生の岐路に出会った時に後悔することは前提で、その後悔の量はどちらが多いのかを自分なりに考えてみてください。それだけ考えて、悩んだ決断なら必ずみなさんの人生を豊かにしてくれるはずです。

―本日はお話しいただきありがとうございました!

今回お話を伺った近藤氏がCFOを務める、株式会社うるるのHPはこちら!

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この記事を書いたライター

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