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定款とは?株式会社設立時の手続きの進め方や定款変更のポイントを分かりやすく解説

HUPRO 編集部
定款とは?株式会社設立時の手続きの進め方や定款変更のポイントを分かりやすく解説

株式会社の設立を希望している人が手続き初期段階でぶつかるのが「定款」です。定款とは、企業の根本規範を記す書面のこと。株式会社を設立する以上は、その企業にとっての規範を記した定款の作成も義務付けられています

ただ、今まで企業設立経験のない人や、株式取引などとは無縁だった人にとっては、定款という言葉にあまり馴染みがないのも仕方のないことです。

そこで、このコラムでは、定款とはどのようなものなのか、記載内容や作成・変更手続きの進め方などについて分かりやすく解説します。あわせて、電子定款についても紹介するので、最後までご一読ください。

定款とは

定款とは、簡単に言うと、企業の憲法ともいわれているもの。企業を運営するための基本的な規則を決めたものです。

企業にとって重要な位置付けのものであることから、定款の内容・作成手続き・備え置き方法については、会社法において細かいルールが設定されています。

そこで、まずは、定款とはどのようなものなのかについて具体的に見ていきましょう。

定款の作成手続きとは

株式会社を設立するためには、発起人が定款を作成することを要します(会社法第26条1項)。発起設立・募集設立のいずれの流れでも必要な作業です。

発起人とは、作成された定款に署名・記名押印した人のこと。自然人・法人のいずれも発起人になれますし、発起人の人数制限はないので一人でも問題ありません。

後述する会社法規制を遵守した内容の定款を作成し終わった後は、企業の本店の所在地を管轄している公証役場に基本事項を決めた定款は提出して、認証するために手続きをする必要があります。公証人の認証がなければ定款は効力を生じませんし、公証人の認証を経て、ようやく作成の真正・内容の適法性が担保されます。費用は、定款の認証手数料として5万円、印紙税として4万円です。

これらの手続きを経て作成された定款は、備え置かなければいけません。また、発起人等の閲覧請求権も認められています。

したがって、定款の作成手続きをまとめると次の通りです。

①発起人が定款の作成
②法律の要請を遵守した定款の作成
③公証人による認証
④備え置き

定款の記載事項とは

定款の記載事項とは、絶対的記載事項相対的記載事項任意的記載事項の3種類です。

各記載事項に振り分けられる内容は細かく規定されているので、ここからは、それぞれについて具体的に見ていきましょう。

なお、定款の記載事項については以下のコラムでも詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。

定款の記載事項1:絶対的記載事項

絶対的記載事項とは、定款に必ず規定しなければいけない事項のこと。絶対的記載事項を欠くと定款自体が無効として扱われます。

①企業の名称である「商号」(会社法第27条2号):株式会社の文字が必要。商号専用権制度は現在廃止。
②企業の事業内容である目的(会社法第27条1号):営利性・適法性・明確性・具体性の要件を充たす必要がある。目的違反の行為があった場合はデメリットが生じるので定め方に注意が必要。
③企業の本店がある所在地(会社法第27条3号):独立の最小行政区画のこと。住所までは不要。
④設立に際して出資される財産の価額・その最低額(会社法第27条4号
⑤発起人の氏名・住所(会社法第27条5号
⑥発行可能株式総数(会社法第37条1項・98条・113条1項):公証人の認証段階では不要だが、会社の成立までには記載を要する。

定款の記載事項2:相対的記載事項

相対的記載事項とは、かならず定款に記載する必要はないものの、効力を発生させるためには定款への記載が求められる事項のことです。

加えて、相対的記載事項のうち、変態設立事項は、原則として裁判所が選任する検査役の調査を受け、その結果に基づき定款変更が強制される場合があります。

具体的には、次のようなものが相対的記載事項として挙げられます。

①現物出資
②財産引受け
③発起人の報酬・特別利益
④設立費用
⑤株主総会などの招集通知を出す期間の短縮についての決まり
⑥取締役会の設置についての決まり
⑦役員の任期の伸長についての決まり
⑧公告の方法
⑨株式譲渡制限についての決まりなど

定款の記載事項3:任意的記載事項

任意的記載事項とは、絶対的記載事項と相対的記載事項の他に、法律に違反しない範囲において、定款に任意で企業が決めた事項を記載するものです。

あくまでも「任意」ですから、定款に記載する義務はありません。決まった事項を定款に記載することによって明確にすることができます。任意的記載事項として発起人によって決めたものがあれば、定款に記載しておくようにしましょう。

ただし、任意的記載事項として定款に記載した以上は、内容に変更が生じる場合には常に定款変更の手続きを経る必要がある点にご注意ください。

任意的記載事項としては、例えば、次のような事項などが挙げられます。

①株券の不発行についての決まり
②役員の取締役などの人数
③事業年度についての決まりなど

【注意!】無益的記載事項とは

定款に記載したとしても、強行規定に違反する・会社法の根本規範としての定款の性質にそぐわないなどの理由から、会社法上の効力を生じない事項があります。これを無益的記載事項と呼びます。

たとえば、株主の一部の間で議決権拘束契約を締結した場合に、この内容を定款に記載したとしても効力は発しません。なぜなら、あくまでも債権的効力が生じるだけで、株主総会決議取消事由には該当しないと考えられるからです。

電子定款とは

定款は紙媒体で作成することもできますが、同時に、電子定款という形式で作成することも可能。電子定款とは、電子媒体によって作成された定款のことです。

本来、定款を作るときは、一般的に、書面で作って認証を公証人役場において行ってもらうような流れでした。しかし、現在はパソコンやインターネットなどが非常に普及しており、社会構造が大きく変化しています。

このような背景を反映する形で、2004年以降、書面で作った定款以外に、電子媒体によって電子的に保存できるPDF化された電子定款によって、インターネットから電子定款を送って認証を受けることができるようになりました。

ただし、定款のデータを公証役場に送ると手続きが終了するということでなく、公証役場に実際に行って手続きをして定款を受け取らなければいけません。

電子定款は節税可能な定款作成方法

電子定款のメリットは費用を抑えられるという点です。紙媒体の定款作成の際には、印紙税として4万円が必要でした。しかし、電子定款であれば、印紙税がそのまま節税できるため、費用負担が軽減されます。

企業を設立するときは、一定の資金を設立するための費用として準備しておく必要があります。そのため、節約がちょっとでもできるのは、メリットが非常にあると言えるでしょう。

ただし、電子定款を作成する際には、電子証明書の発行費用・専用ソフトの購入費用が発生する点に注意が必要です。つまり、すべて自前で電子定款の作成手続きを処理するとなると、投資するために4万円以上のコストが発生するということです。

現在、定款作成業務を受けてくれる専門家は多数存在します。彼らは電子定款サービスにも精通しているので、トータルコストを抑える形で、かつ、定款の内容の適法性もチェックしながら手続きを進めてくれるでしょう。

定款の変更方法とは

会社設立時に認証を受けた定款ですが、株式会社が企業活動を進めるなかで、事業目的などを変更する必要性に迫られるでしょう。

ただ、定款とは、会社の基本規範を記載した法的重要性の高い書面のこと。安易に変更することは許されず、会社法所定の手続きにしたがって変更しなければいけません

なお、定款変更の場合には、設立時に求められる公証人による認証は不要です。また、定款の変更条項が登記事項に該当する場合には、本店所在地において2週間以内に登記が求められます。

なお、定款の変更方法については以下のコラムでも詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。

定款変更の手続きとは

原則として、定款変更には株主総会の特別決議が必要です(会社法第466条会社法第309条2項11号)。特別決議では、出席株主の議決権総数が発行済み株式総数の過半数を超えており、かつ、その3分の2以上の賛成が求められます(定款で更に厳しい要件を定めている場合にはそれによる)。

株主総会の招集通知には、定款変更に関する議案の概要を記載しなければいけません。また、商号変更・事業目的の変更など、定款変更の内容が登記事項に指定されている場合には、法務局にて変更登記を申請しましょう(これに対して、取締役の人数変更・役員報酬の決定方法などについては登記事項ではありません)。

定款変更の特別決議が不要のケースもある

定款変更は原則として株主総会の特別決議を経る必要がありますが、かなりの例外規定が定められているのも特徴的です。

たとえば、会社が発行する全部の株式を譲渡制限株式とする定款変更(非公開会社への移行)、全株式譲渡制限会社において剰余金の配当・残余財産の分配・株主総会の議決権に関して属人的定めをする定款変更については、株主総会の特殊決議が必要です。ここでは、決議要件が過重されています。

その一方で、会社が株式の分割を行う際、定款に定める発行可能株式総数を株式の分割割合に応じて増加させる定款変更をする場合には、株式の分割手続きのなかで、つまり、取締役会の決議または株主総会の普通決議で定款変更可能です。ここでは、利害関係者への配慮という観点から、決議要件が軽減されています。

さらに、単元株制度や種類株式発行会社などで例外が多数用意されているので、定款変更手続きには常に注意が必要です。

なお、定款の変更方法については以下のコラムでも詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。

定款変更の手続きに必要な費用とは

定款変更には一定の費用が発生します。代表的なものとしては、以下のものが挙げられます。

①株主総会の開催費用
②登録免許税
③弁護士・司法書士・行政書士への依頼料

たとえば、一人会社では株主総会の開催費用はほとんど発生しませんが、比較的多数の株主が存在する規模の企業であれば、切手代・会場費などの費用がかなり負担になるでしょう。

また、登録免許税は申請1件につき3万円発生するため、定款変更によって登記に変更が生じる数に応じて費用負担が重くなります。

さらに、定款の変更内容に関するチェックや申請業務を専門家に依頼する場合には、別途費用が発生します。ただ、定款変更手続きは会社側だけでも処理して問題ないものなので、コストカットは可能です。

定款を紛失した場合にも変更手続きが必要になるケースがある

本来、原始定款は株式会社と公証役場保管用の2部発行されますが、株式会社側が原始定款を紛失してしまうこともあるでしょう。

資金調達や各種申請業務の際に、定款のコピーが求められることがあります。万が一定款を紛失してしまうと、外部機関からの信用を失うことになりかねません。

原始定款が公証役場に保管されているのは20年間だけ、また、途中で定款変更を繰り返している場合には公証役場で変更内容を確認するのは不可能です。また、法務局では申請書類が5年間しか保存されないため、紛失が発覚したタイミング次第では、定款を再生できない可能性もあります。

そこで、定款の紛失が発覚した場合には、ふたたび定款を再生したうえで、定款変更手続きで新たに定款を作成するプロセスが求められます

まとめ

定款は株式会社にとって不可欠の要素。経営陣には定款遵守義務が課されているように定款で記載された内容通りに企業運営が進められ、また、株主・株式市場の投資家・取引相手・金融機関などが企業の実態把握に活用するものです。

したがって、定款は作成・保管・変更のすべての段階で、常に適正なプロセスを適切に処理しなければいけません

これから株式会社設立を検討している経営者の方、現在経営中の企業における定款内容に不安を抱えている方は、より高い注意力をもって株式会社の憲法とも呼ぶべき定款に携わりましょう。

この記事を書いたライター

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