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自己株式を売却する方法とは?売却手続きと売却のメリットをご紹介

岡山 由佳
自己株式を売却する方法とは?売却手続きと売却のメリットをご紹介

自己株式の売却は、会社の意思決定により実行をすることが出来ますが、その売却が他の株主に少なからず影響を与えることから、会社法によりその方法が定められています。
今回は、自己株式の売却にはどのような手続きが必要なのかと、自己株式を売却することの会社側のメリットをご紹介致します。

自己株式とは

自己株式とは、株式会社が発行する株式のうち、自社で取得した上で保有している株式のことをいいます。
自己株式を保有する会社は、その株式を保有し続けること、消却をすること、売却をすることについて、会社の意思によっていずれかを選択することが出来ます。
今回は、自己株式を売却することについて、ご紹介致します。

自己株式の取得については、下記ご参照ください。
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自己株式の売却手続き

自己株式を譲渡、売却する場合には、募集株式の発行の手続きを行う必要があります。
自己株式の譲渡、売却をすることを、会社法上では処分といい、他の株主に影響を与えることから、会社法により、その処分方法について制限が定められています。

会社法の規定

会社法199条では、自己株式の処分について、下記のように記載がされています。

第百九十九条 株式会社は、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式(当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式をいう。以下この節において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。

一 募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び数。以下この節において同じ。)
二 募集株式の払込金額(募集株式一株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をいう。以下この節において同じ。)又はその算定方法
三 金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額
四 募集株式と引換えにする金銭の払込み又は前号の財産の給付の期日又はその期間
五 株式を発行するときは、増加する資本金及び資本準備金に関する事項
2 前項各号に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)の決定は、株主総会の決議によらなければならない。
3 第一項第二号の払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、前項の株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
4 種類株式発行会社において、第一項第一号の募集株式の種類が譲渡制限株式であるときは、当該種類の株式に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
5 募集事項は、第一項の募集ごとに、均等に定めなければならない。
出典:e-gov 法令検索   会社法

募集株式の発行の手続きとは

株式処分を行う場合は、新株発行による手続きが必要です。新株発行の手続きでは、募集形式の規定により、会社が自己株式を引き受ける人を決定します。

株式を引き受けようとする人は、募集に対して応募をすることで、株式申込証による申し込みを行うことが出来ます。

申し込みに対して、会社は割当を行うことにより自己株式の引受人を確定します。
この割当を行う方法には、株式割当による処分と、第三者割当による処分があります。

このように自己株式の処分は、通常の新規発行と同様の手続き内容となっていますが、資本金が増加しないため、登記の変更は必要ありません。

自己株式を売却するメリット

自己株式を売却するメリットには、下記を挙げることが出来ます。

メリット①発行済株式数が一定のまま資金調達が出来る

自己株式の売却が行われると、会社には株式の対価として利益が発生します。
この利益の獲得に対しては自己株式が使用されるため、発行済株式数に変化は生じません。

発行済株式数の変更が不要であることから、発行済株式数を増加させ資金調達を行うよりも、比較的事務負担が無く資金調達を行うことが出来ます。
このように負担を少なく資金調達をする必要がある場合に、自己株式の売却は有効です。

メリット②株価を調整することが出来る

自己株式の売却が行われると、市場に多くの株式が出回ることになるため、1株あたりの価値が低下し株価の下落が起こります。
株価の下落は、株主の観点からすると、デメリットではありますが、会社の観点からすると、必ずしもデメリットではなく、事業売却を行う場合等には、株価を調整する必要がある場合もあります。
このように株価を調整する必要がある場合に、自己株式の売却は有効です。

まとめ

自己株式の売却の手順やメリットをご紹介致しました。
株式会社における株式の取り扱いは、その取扱いによって株主に多大なる影響を与え、株主に大きな損失を与えるようでは、会社の存続すら危ぶまれる事態となります。
自己株式の取得、消却、処分については慎重に経営判断を行う必要があるといえます。

この記事を書いたライター

大学在学中より会計業界に携わり10年超の会計事務所、税理士法人での実務経験を経て独立。各業種の会計業務に関するフォローのみならず、ライターとして税務、労務、経理の話題を中心に、書籍やWebサイトに数多くの寄稿を行う等の様々な活躍をしている。
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