みなし配当は、みなし、という言葉が意味する通り、会社法で定められている配当とは別の行為でありながらも、税法上は配当として課税等が行われる行為です。
今回は、会社法や法人税法を用いながら、みなし配当とは配当と何が違うのか、みなし配当が生じる場合とはどのような場合なのか、について詳しくご紹介致します。
みなし配当とは、みなし、という言葉からも分かる通り、通常の配当とは異なるものの、税務上配当とみなして取り扱いが行われる配当のことをいいます。
配当とみなし配当は、下記のようにそれぞれ区分がされいます。
会社法第453条では、下記のように配当について記載があります。
「株式会社は、その株主(当該株式会社を除く。)に対し、剰余金の配当をすることができる。」出典:e-gov法令検索 会社法
このように、配当とは会社法によって認められた、会社株主への剰余金の分配のことをいいます。
法人税法第24条では、下記のようにみなし配当について記載があります。
「法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く。以下この条において同じ。)の株主等である内国法人が当該法人の次に掲げる事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合において、その金銭の額及び金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあつては、当該法人のその交付の直前の当該資産の帳簿価額に相当する金額)の合計額が当該法人の資本金等の額又は連結個別資本金等の額のうちその交付の基因となつた当該法人の株式又は出資に対応する部分の金額を超えるときは、この法律の規定の適用については、その超える部分の金額は、第二十三条第一項第一号又は第二号(受取配当等の益金不算入)に掲げる金額とみなす。
一 合併(適格合併を除く。)
二 分割型分割(適格分割型分割を除く。)
三 株式分配(適格株式分配を除く。)
四 資本の払戻し(剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)のうち分割型分割によるもの及び株式分配以外のもの並びに出資等減少分配をいう。)又は解散による残余財産の分配
五 自己の株式又は出資の取得(金融商品取引法第二条第十六項(定義)に規定する金融商品取引所の開設する市場における購入による取得その他の政令で定める取得及び第六十一条の二第十四項第一号から第三号まで(有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入)に掲げる株式又は出資の同項に規定する場合に該当する場合における取得を除く。)
六 出資の消却(取得した出資について行うものを除く。)、出資の払戻し、社員その他法人の出資者の退社又は脱退による持分の払戻しその他株式又は出資をその発行した法人が取得することなく消滅させること。
七 組織変更(当該組織変更に際して当該組織変更をした法人の株式又は出資以外の資産を交付したものに限る。)」出典:e-gov法令検索 法人税法
このように、みなし配当とは、会社法上で定義される剰余金の配当に分類される行為ではなく、法人税法上で定義されるみなし配当に分類される行為となります。
剰余金の配当に分類はされませんが、経済的実体としては利益の払戻しに該当することから、税務上は剰余金の配当と同じように取扱われます。
具体的には、法人税法第24条に定める行為が、みなし配当に該当をします。
みなし配当が認識される場合について、法人税法に掲げられている順に詳しくみていきましょう。
合併により、被合併法人の株主が所有する被合併法人の株式は消滅し、被合併法人の株主は代わりに合併法人の株式等を対価として交付されます。
この対価として交付された合併法人株式等が被合併法人の資本金等の額対応分を超える場合、その超える部分がみなし配当となります。
分割に伴い、分割法人の株主が所有する分割法人の株式は、分割された純資産相当分だけ消滅し、分割法人の株主は代わりに分割承継法人の株式等を対価として交付されます。
この対価として交付された分割承継法人株式等が、分割法人の資本金等の額対応分を超える場合、その超える部分がみなし配当となります。
株式分配とは、現物分配のうち、保有する完全子法人株式の全部が移転するものをいいます。
株式分配された株式のうち、資本金等の額の対応分を超える部分が、みなし配当となります。
資本の払戻しとは、その他資本剰余金を原資として金銭等を配当することをいいます。
資本の払戻しによる交付金銭等の合計額が、その払戻法人の資本金等の額のうち交付の基因となった株式に対応する部分を超える場合、その超える部分が払戻しを受けた株主においてみなし配当となります。
解散においては、解散による交付金銭等の合計額が、解散した法人の資本金等の額のうち交付の基因となった株式に対応する部分の金額を超える場合、その超える部分が金銭等の交付を受けた株主においてみなし配当となります。
発行法人が自己株式を取得し、交付金銭等の合計額が、その発行法人の資本金等の額のうち交付の基因となった株式に対応する部分の金額を超える場合、その超える部分が発行法人に株式を譲渡した株主においてみなし配当となります。
出資消却等により交付を受けた金銭等の額が、出資の消却等をした法人の消却等直前の資本金等の額を消却等直前の発行済株式又は出資の総数で除し、これに消却等された株式の数又は出資の額を乗じて計算した金額を超える場合、その超える部分がみなし配当となります。
法人の組織変更により、その組織変更法人の株式のみが交付される場合には、旧株の取得価額が新株に引き継がれ特段の課税関係は生じません。
これに対して、株式以外の資産の交付を受けた場合には、その株式の取得価額は、その取得時における時価とされ、交付を受けた資産の合計額のうち、その交付の基因となった株式に対応する資本金等の額を超える場合、その超える部分がみなし配当となります。
みなし配当を受け取った個人は、その受け取った配当が配当所得に該当をし、原則として他の総合課税の扱いの所得と合算され、所得税、住民税が課税されます。
みなし配当を行う法人は、支払に際して源泉徴収を行う必要があります。
みなし配当は、その行為が税法上配当に該当をすることを知らずに行ってしまい、意図せぬ課税が生じていることがあります。多額の税金が遡求されないように留意をしましょう。
今回は、会社法や法人税法を用いながらご紹介を致しました。法律からのご紹介は、少々堅苦しいお話のように感じる方もいらっしゃるかもしれません。
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