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製造原価と売上原価とは?違いを詳しくご紹介します!

岡山 由佳
製造原価と売上原価とは?違いを詳しくご紹介します!

製造原価と売上原価。同じように原価という表現が使われているため、混同しがちな勘定科目のひとつです。
しかしこれらは全く異なる勘定科目であり、それぞれ正しく認識して経理処理を行わなければ、正しい財務諸表の作成をすることは出来ません。
今回は、製造原価と売上原価の内容と違いを詳しくご紹介します。

製造原価と売上原価は全く違う勘定科目!

製造原価と売上原価は、同じように原価という表現が使われているため、混同しがちな勘定科目のひとつです。
しかし、製造原価と売上原価では大きく意味が異なり、製造業の製造活動における製造原価はあくまでも、その製品が完成をした後の販売活動の売上原価を構成する勘定科目の一部でしかないことに注意が必要です。
それでは、製造原価と売上原価について詳しくご紹介していきます。

製造原価とは

製造原価とは

製造原価とは、製品やサービスを製造する際にかかる原価のことです。よって購買活動、製造活動、販売活動が行われる製造業において使用される勘定科目です。

製造原価の算出方法

製造原価は、製造業会計を用いて算出を行います。
期首仕掛品棚卸高に当期総製造費用を加算し、期末仕掛品棚卸高を差し引いた金額が、当期製品製造原価として認識されます。

当期総製造費用の算出方法

当期総製造費用とは、当期に発生をした材料費、労務費、経費の合計額のことをいいます。

材料費とは

材料費とは、物品の消費によって生ずる原価であり、素材費、買い入部品費、燃料費、工場消耗品費等が該当をします。

期首材料費に当期仕入材料費を加算し、期末材料費を差し引いた金額が、当期の材料費として認識されます。

労務費とは

労務費とは、労働用役の消費によって生ずる原価であり、工員の賃金給料、工場の従業員にかかる給料、法定福利費、賞与引当金繰入額、退職給付費用等が該当をします。

経費とは

経費とは、材料費、労務費以外の原価であり、材料棚卸減耗損、外注加工費、工場にかかる固定資産の減価償却費、水道光熱費、租税公課、保険料等が該当をします。

期末仕掛品棚卸高の算出方法

期首仕掛品棚卸高は数量を計算の基礎とする方法と、金額を計算の基礎とする方法の2つの種類の算出方法があります。

数量を計算の基礎とする方法

数量を計算の基礎とする方法とは、製品の製造に投入した期首仕掛品原価、当期総製造費用を、完成品数量と期末仕掛品数量の割合で配分して、これにより期末仕掛品原価を決定する方法です。
この場合、按分の基礎となる仕掛品数量は、その進捗度を加味した完成品換算数量です。

進捗度とは、製品の完成程度を未加工から完成までを0から100%の割合で示したものです。
通常、原材料は工程の始点で全て投入されるため、原価の投入度合いは常に100%となります。これに対して労働費、経費は進捗度を考慮して計算します。

金額を計算の基礎とする方法

金額を計算の基礎とする方法とは、売価還元法であり、仕掛品と製品における原価率を計算し、この減価率を期末仕掛品売価に乗じて期末仕掛品原価を決定する方法です。

売上原価とは

売上原価とは

売上原価とは

売上原価とは、売れた商品やサービスの販売する際にかかる原価のことです。

製造原価では、製造するものを製品と表現することに対し、売上原価では販売するものを商品と表現し、区別します。
製造業のみならず、販売活動を行う多くの業種で使用される勘定科目です。

売上原価の算出方法

売上原価は、製造業の場合は、期首製品棚卸高に当期製品製造原価を加算し、期末製品棚卸高を差し引いた金額が、売上原価として認識されます。

製造業以外の場合は、期首商品棚卸高に当期仕入高を加算し、期末商品棚卸高を差し引いた金額が、売上原価として認識されます。
勘定科目は違いますが、どちらも当期に販売をした商品やサービスにかかる原価を示しています。

売上原価については、既出の情報が多いため、下記コラムをご参考になさってください。
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製造原価と売上原価の違い

ご紹介しました通り、製造原価と売上原価は、製造原価が売上原価の一部であることから、全く異なる勘定科目です。

よって、製造業で生ずる費用が、製造原価に含まれるものなのか、売上原価に含まれるものなのか、または別の販売管理費や営業外費用に含まれるものなのか、判断が必要です。

例えば、材料仕入においては、製品製造過程で投入される製品の構成に必要な材料の購入費は製造原価に含めますが、製品販売過程で売場作成のために必要な材料の購入費は製造原価に含めず、仕入高、売上原価の一部に該当をします。

人件費においては、製品製造過程に従事する工員の賃金は製造原価に含めますが、製品販売過程に従事する販売員の給料は製造原価に含めず、販売管理費に該当をします。

減価償却費においては、製品製造過程で使用される製造用機械の減価償却費は製造原価に含めますが、製品販売過程で使用される販売営業車の減価償却費は製造原価に含めず、販売管理費に該当をします。

このように、売上に寄与する経費でありながらも、その経費の投入状況、時点によって、製造原価に該当をするかの判断が異なります

まとめ

ご紹介しました通り、製造原価と売上原価は全く異なる勘定科目です。混同をしないように留意をしましょう。
製造業以外の財務諸表で製造原価という勘定科目を目にする機会は少ないですが、簿記の検定の出題範囲にもなっている製造業会計は、会計事務所に勤める人、経理職に就く人には必須の知識です。
是非ご参考になさってください。

この記事を書いたライター

大学在学中より会計業界に携わり10年超の会計事務所、税理士法人での実務経験を経て独立。各業種の会計業務に関するフォローのみならず、ライターとして税務、労務、経理の話題を中心に、書籍やWebサイトに数多くの寄稿を行う等の様々な活躍をしている。
カテゴリ:コラム・学び

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