いきなりですが、皆さんは、借金と聞くとどのようなイメージを持つでしょうか?
借金は悪いものというイメージをお持ちの方も多いのではないかと思います。
また、借金のない企業(いわゆる無借金経営)は安全だという風にお考えの方も多くいるのではないかと思います。
もちろん、その考え方を今回の記事で否定するものではありません。
しかし、会社や個人が事業を行ない、事業を大きくしたり、資金繰りを考えた際に、無借金経営をすると思わぬデメリットに遭遇することがあります。本日は、無借金経営のメリットとデメリットについて記事にしたいと思います。
今回の記事では無借金経営は、借入金や社債等の負債で資金を調達していない企業の経営状況のことを指します。
なお、社債を発行している企業は多くはありません。多くの企業は、借入金を念頭に入れて読み進んでください。
企業は借入金、社債が返済できなくなると倒産します。借金をしなければ、この返済できなくなるリスクは無くなります。
ただし、倒産は、買掛金等の借金以外についても支払えなくなれば発生します。そのため、倒産リスクの要因の一つが解消されたに過ぎません。
借金をすると金融機関に経営の進捗状況を報告していくことになります。
その際に、事業の進め方や新規事業の採用可否について、金融機関から意見をもらうこともあります。
金融機関としては、貸付先が適正に会社の経営を行い、借入金の返済をしてもらう必要があるため、当然のことをしています。
しかし、経営者の中には、金融機関から意見をもらうことで縛られると感じる方もいるのではないでしょうか。無借金経営ではこういったことが無くなり、自由度が高まります。
金融機関から借入を受ける際に、経営者保証を付されることがあります。
経営者保証とは、借入金を返済できなくなった際に、経営者が返済の肩代わりをするものになります。
この経営者保証は、事業承継で社長から下の代に継承される際にも経営者保証が継続されることがあります。
また、売却する際にも経営者保証が外せず、買い手側に経営者保証を付すことになる場合があり、障壁になることがあります。
そのため、借金がない場合、事業承継や売却することの障壁を減らすことになります。
通常、資金調達にはコストがかかります。借入金、社債であれば、利息です。一方、株式発行等による純資産での資金調達であれば、配当金がコストになります。
純資産での調達は、返済の義務がありません。出資者は、出資した企業が倒産をすれば、出資したお金は返ってこなくなりますので、企業の倒産リスクを負っています。そのため、一株あたりの配当金は、通常借入金の利子率よりも多額になります。
また、利子は損益計算書上、営業外費用で計上されるように、費用になり税金計算上も損金です。一方、配当金は、企業が税金を支払った税引後利益から配当をします。その配当額は費用とはなりません。そのため、税金計算上も損金とはならずに、節税効果も得られません。
資金調達コストが高くなることがデメリットです。
事業を大きくしていく際には、一定程度の資金が必要です。
事業の利益を貯蓄していくことで、一定程度の資金を作ることも可能ですが、借入を行うことで、早めに資金獲得ができます。
事業の拡大には、速度が重要となることが多いです。
しっかり返せて、利払いも事業の利益の範囲内でできる場合は、適切な借金によって事業を急拡大させることが可能となります。
これは、借入金に限った話にはなりますが、借入金がない場合、金融機関との付き合いが希薄になっている可能性があります。金融機関との付き合いが希薄であると、急な資金需要が生じた際に金融機関が対応してくれない可能性が高いです。
金融機関も既存の融資がある顧客以外に融資をする際には、決算書を取り寄せて、事業計画を確認して、支店内で稟議を起こして等一定の手続を踏む必要があります。そのため、時間がかかることから、緊急な融資が出ない可能性が高いです。
一方、少しでも融資を受けていれば、決算書は毎期、提出したりしていることから、緊急な融資にも対応してくれる可能性があります。
買掛金の支払が滞る可能性が高まった際等、資金繰りにおいて、緊急の事態になった際に緊急の借入ができなく、倒産リスクが上がる可能性を孕んでいます。
私も公認会計士として、実務に出るまでは、借金=悪という認識を持ち、無借金こそが正だと思っていました。
しかし、公認会計士として、様々な企業を担当させていただくと、適切に借金を行う会社の方が成長スピードも早いということを実感しました。
確かに、収益を生まない借金は、自らの倒産リスクを高めているだけですので、意味はないと言えるでしょう。一方、事業拡大を目的とした適切な借金、さらには借入利率を上回る収益率等を稼ぎ出す事業を開始できるのであれば、借入を行い、すぐにでも事業を初めて、自社を大きくしていくのが良いと考えます。
借入を行うのは怖いと感じることもあるかと思いますが、借金のメリットデメリットを理解していただき、必要に応じて資金調達をすることで、事業の成長速度を高めていけるといいのではないでしょうか。
無借金経営についてはこちらの記事もご参照ください。
<参考記事>