株式会社第一勧銀情報システム(現:みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社)にSEとして就職し、2つの税 理士事務所を経て、現在は税理士法人ロールスパートナーズの神奈川事務所で所長を務める和田公彦氏。今回はまったく違う業種から税理士になった和田氏の特殊な経歴や税理士を目指 されたきっかけ、開業税理士ではなく社員税理士を選んだ理由、今後のビジョンなどについてHUPRO編集部がお話を伺いました。
【ご経歴】
1999年4月 | 株式会社第一勧銀情報システム(現:みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社)入社 |
2002年9月 | 東京都町田市の公認会計士・税理士事務所 入所 |
2013年8月 | 神奈川県厚木市の税理士事務所 入所 |
2016年12月 | 平松高志税理士事務所(現:税理士法人ロールスパートナーズ)入社 |
2020年9月 | 海老名市に同法人の神奈川事務所を開設、所長に就任 |
―まず、税理士を目指されたきっかけを教えてください。
大学は中央大学の商学部へ進学しました。
在学中は税理士になりたいという気持ちはなく、パソコンが好きだったので何となくですがIT系の職業を目指していました。
その後、㈱第一勧銀情報システム(現:みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社)にSEとして入社しま した。念願の仕事でしたが、理系の人ならではのロジックや高いプログラミング能力を持つ先輩や同僚と接する中で自分の能力との差を感じ、「この先何年もこの人たちと戦える気がしない。住む世界が違う」と限界を感じ、3年で退職しました。
税理士を目指したのは、転職を考えていた中で、社内教育の一貫で「簿記3級」の勉強をスタートしたことがきっかけでした。
簿記の勉強が苦にならず、楽しさを感じ、税務や会計の仕事に興味を持ちました。
そして簿記の勉強をすすめる中で、「地道に数字を積みあげること」「データを扱うこと」が性に合っていると自覚し、2級を取得したことが自信につながり、本格的に税理士を志しました。
―公認会計士ではなく、税理士を目指されたのはどうしてですか?
父が国税関係の職員だったので、税務関連の仕事へ親近感をもっていたからです。働く父の姿を小さい頃から見ていたため、自分が税務の仕事に就くイメージがなんとなくできていました。
―最初の税理士事務所で11年 間働いたとのことですが、選んだきっかけ・理由は?
実務経験を積みたいと考え、まずは家から近い税理士事務所(東京都町田市)の求人に応募し、採用となりました。税理士試験の勉強は、入社と同時にスタートしました。
最初の税理士事務所は家族経営のためか、アットホームな雰囲気でした。残業もなく、たっぷり勉強をできる環境で、居心地が良く、11年間勤め上げました。
―とても良い環境だったのですね。しかしどうして事務所を変更したのですか?
わがままな話なのですが、居心地が良く、長期間勤務したため、試験へのモチベーションが下がってしまっていたんです。自分に甘かったのでしょうね。
最初の3年間で簿記論と財務諸表論に合格したのですが、その後、5年間は試験に落ち続けてしまいました。今でこそ思いますが、真剣に勉強していなかったと思います。
―新しい事務所はどのような特徴がありましたか?
厚木の事務所は20数名が在籍する中規模の事務所でした。切磋琢磨できる仲間もいて、税理士試験に対するモチベーションがアップしましたね。
業務内容にも変化がありました。
以前の事務所では、記帳代行や帳票作成など事務所内での仕事がほとんどでしたが、新しい事務所では顧問先の社長と決算報告会の開催や来期計画の立案、融資の橋渡しなど、経営サポートの仕事が増えました。
月1で訪問する顧問先を20件ほど担当していたため、外回りも各段に増えましたね。
とても大変でしたが、ここでの経験は現在でも役に立っています。特に経営者と密なコミュニケーションが取れ、交渉力や信頼関係の構築方法などを学べたことは良かったなと感じています。
平日は残業があったので、なかなか机に座って勉強する時間を確保できませんでした。入浴中や通勤時間、顧問先訪問の合間に勉強を続けました。
前の事務所にいた頃よりも勉強時間は減りましたが、モチベーションが上がったので隙間時間を見つけることで勉強自体は進んでいましたね。毎週日曜日には学校に通っていましたし、業務も勉強も無我夢中で取り組めていました。
―どうして税理士法人ロールスパートナーズに転職しようと考えたのですか?
2つの税理士事務所では、顧問先が建築や設備などの業種に偏っていました。
そのため、さらに経験を積むには経験したことのない、別業種の企業を担当してみたいと考え、転職活動をスタートしました。
さまざまな業種を担当するには、都内が良いと考え、転職サイトに登録。税理士法人ロールスパートナーズからオファーを頂き、面接に進みました。
面接の中で、当社の代表は、コミュニケーションを重視し、自分のやりたいことをやらせてくれる方だと感じ、就職を決めました。
税理士試験は、入社後すぐに3科目目(消費税法)に合格しました。その後、周囲の勧めもあり、税法科目免除制度(※)を利用すべく大学院に入ることを決意しました。当社では、大学院に通っているスタッフも多く、学校情報や論文の書き方のポイントなど、有益な情報を得ることができたのは、とても心強かったです。
※大学院では「税法に属する科目」を一定単位修得し、かつ修士論文が認められることによって、
税理士試験5科目のうち税法科目の2科目が試験免除になるため
その後、2年間大学院に通い、2020年2月に税理士資格を取得しました。
―独立ではなく、社員税理士を選んだのはどうしてですか?
税理士は「資格を入手すると開業に踏み切るパターン」が多いですが、私には開業したいという気持ちがありませんでした。
社員税理士として、仲間と一緒に働くことを理想にしていたからです。この「仲間と一緒に」という点は、ロールスパートナーズに入社してから芽生えました。
この3点が社員税理士として働きたいと考えた理由です。
―資格取得後、半年も経たずに神奈川事務所の所長になられていますよね。不安に思ったことや大変だったことはありましたか?
もともと、所長になりたいと志願していたので、業務への不安はありませんでした。
ただ、新しく立ち上がった事務所のため、新規のお客様や金融機関との関係作り、人材の採用面接など、これまで経験していないことが盛りだくさん。
以前担当していた顧問先の社長からも「とにかく人に会うように」と言われていたので、毎日せわしなく外回りをしました。
また、税理士として働くようになってから、一スタッフの時にはない仕事も増えました。
例えば、年末調整のセミナーの講師依頼やYouTube での講演依頼などです。緊張しましたね。
―充実した毎日を過ごされていると感じます。他の事務所と比べ、税理士法人ロールスパートナーズの良いところは何ですか?
自由な社風で、やりたいことがあったら積極的にやらせてくれるところですね。
例えば、私の場合はIT系企業に勤めていた経験を活かして、「クラウド(IT)導入支援」を行っていますが、これも代表に相談したことがきっかけでした。
幅広い業務に追われる経営者の方々と接する中で、業務を効率化し、リアルタイムで財務状況を把握できるクラウドサービスのニーズは今後ますます増えていくだろうと感じるようになりました。当時は、クラウドサービスに対応できる税理士事務所が今ほど多くはなかったので、講習会に参加したり、日々情報収集をしながら、クラウドサービスに対応できる事務所づくりを、他のスタッフとも協力しながら進めてきました。
さらに、これまで培ってきた人脈を武器に、知り合いの社労士と協力し、経費精算だけでなく勤怠管理・給与計算まで一気通貫してサポートするクラウド導入支援を本格的に事業としてスタートすることができました。
代表は、スタッフからの提案や相談にはきちんと耳を傾けてくれます。ですので、当社は、自発的に動ける人に合っています。「税理士になってやりたいこと」が明確な人におすすめできますよ。
―事務所の運用としてはどのようなこと展望を考えていますか?
所長を任されている神奈川事務所をもっと拡大していきたいですね。
新天地で、いかにお客様を増やし、事務所を軌道に乗せられるかは私にとっても大きな挑戦です。そして、スタッフがやりたいことに挑戦できる環境を私自身の手でも作り上げたいと考えています。
―最後に、今後士業を目指す方に向けたメッセージをお願いします。
記帳代行や帳票管理などの従来型の業務は減少傾向にあります。
このような状況で今後も生き残る税理士は、「やりたいことがある人材」です。
もちろん、これから税理士を目指す方は、まだ税理士になってやりたいことが明確ではないと思います。まずは「やりたいことが見つけられるような環境」に身を置くことを意識してほしいですね。
やりたいことを見つけるためには、自発的に意欲をもって取り組むこと、これを持ち続けることが大切です。
自発的に動くことを意識すると、プラスアルファの力を持つ税理士になれます。自分もそうなれるよう日々精進しています。
―本日はお話を聞かせていただきありがとうございました。