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税理士業界は色々な選択肢のある業界。お客様のビジョンや理念を応援したいという想いから独立へ。税理士・金子尚弘氏が語るフリーランスの魅力とは

HUPRO 編集部
税理士業界は色々な選択肢のある業界。お客様のビジョンや理念を応援したいという想いから独立へ。税理士・金子尚弘氏が語るフリーランスの魅力とは

地元の中小企業や個人事業の人たちが頑張る姿を見て、税理士を目指した金子尚弘氏。期待される役割と自分のやりたいこととのギャップから独立を決意し、現在はフリーランスとして活躍されている金子氏にHUPRO編集部がお話を伺いました!

【金子氏のキャリアグラフ】

商業科の勉強と日間賀島での経験がつながり税理士の道へ

ー商業高校ご出身とのことですが、この頃から会計や税務に興味があったのですか?

全然なかったです。実は一度普通科の高校に入学しているんです。そこは半年くらいで辞めてしまったのですが、就職することを考えたときに商業高校が良いかなと思って再入学しました。

1年生のときは簿記が必修だったので日商簿記3級を取得しましたが、2年生からは情報処理科ということもあり、簿記の勉強はあまりしていませんでした。簿記の勉強も特別好きというわけではなかったですね。

その後は先生に薦められたこともあり、大学に進学しました。

ー税理士という仕事に興味をもったきっかけは何ですか?

大学のゼミで観光を学んだことが強く影響していると思います。

特に卒論は愛知県にある日間賀島を題材に書きました。観光業や漁業を軸にしている島なんですが、大手のホテルとかがあまりなく、島民や地元企業が工夫して観光客を集めているんです。

地元の中小企業や個人事業の人たちが頑張っているのを見たときに「応援できないかな」って思いましたね。そして当時は、商業科の教員になるために簿記の勉強もしていました。
これまでやってきた商業系の勉強と、日間賀島で感じた思いが自然とつながり、税理士としての道を考え始めましたね。

ーそして大学院時代に税理士試験を合格されたんですね。

大学院1年目に簿財、2年目には法人税法を取りました。
論文を書きながらの試験勉強だったため、時間のやりくりは大変でした。

あとは丸暗記することが得意ではなかったので、理論を覚えるのに苦労しましたね。昔から書いて覚えるタイプだったので、ひたすら理論を書いていました。ギリギリの綱渡りでしたが、無事に一発で試験に合格することができました。

会社の肩書きではなくて自分で仕事を取りたい

ー大学院卒業後は税理士事務所に就職されたんですね。実際働いてみてギャップはありましたか?

お客様の希望は聞きつつ、でも法的にアウトなことはできないので、そこの折り合いをつけるのが大変でした。
試験と違って100点があるわけではないので、ただ問題を解決するというより、お客様にいかに納得してもらうか気をつけていましたね。

折り合いをつける際は「これはなんとかならないの?」と言われたことに対して、別の方向性のアイデアを提案するようにしていました。まあそれでも無理なものは無理なんでということで終わっちゃうこともありましたね。事務所時代の経験は、税理士としてやっていく上で土台となることばかりだったので、今の仕事にも活きています。

ー希望部署への配属を機にグラフが上がっていますが、どんな部署だったんですか?

事業計画を立てたり、コンサルに近い業務を行う部署でした。
もともと地元の経営者の力になりたかったですし、将来的な方向性やお金の使い方を考える仕事を任せてもらえたのは、非常にやりがいがありましたね。

あとは、自分の中でやれることが広がった実感はありました。目の前にあるものを仕分けするのではなく、将来的にどうするのかを考えるスキルが身についたと思います。こういったスキルを身に付けるために本を読んだり、セミナーに参加したこともありました。ただ、一番はお客様の数字を相談しながら作っていって、その過程で学び得たものが多かったと思いますね。

ーグラフが急激に下がっていますね。顧問先の解約が相次いだ背景には何があったのですか?

節税に関して、お客様からグレーだったり税務リスクの高い相談がありました。それをやめましょうと言ったことが原因だったと思います。僕も何か違う方法を提案すればよかったのですが、1年で何件か同じことが重なって「自分の対応がだめだったのか」と考え込んでしまった時期でしたね。

ただ、きちんと仕事はしているし、致命的に自分が悪いところはなかったので最後は開き直るしかないと考えていました。

ー所内表彰もされているんですね。表彰されたことによる変化はありましたか?

部署の中からの推薦で、毎年何人か選ばれるんです。
当時は担当数も増えてきた時期だったので推してもらえたんだと思います。

勤務年数が積み重なっていったこともあり、業務の幅も広がりましたね。この頃から比較的大きな会社の担当や難しい処理を任せてもらいました。

また、下の世代に仕事を教えるといったマネジメント部分も任されるようになりました。年次が上がっていくにつれ、管理者や教育者としての部分が期待されるようになり、自分がやりたいこととのギャップを感じるようになりました。

自分のやりたいこととやりたくないことを天秤にかけてしまったり、そのバランスをどう取るかを考えるようになりましたね。そんな時に、会社の肩書きではなくて自分で仕事を取りたいと思うようになり、独立を考えるようになりました。

「何のためにやっているのか」を明確に

ー独立時に大変だったことはありましたか?

HPを全て自分自身で準備しなければならなかったのは大変でしたね。基本的には、本を買ってきて実際に自分でブログを作ってみたりしました。

集客については、以前から地元の方とのつながりはあったので苦労した記憶はあまりないですね。NPOに対応していることもあって、声をかけていただくことは多かったです。

ーNPOも対応されているんですね。NPOに力を入れたきっかけは何ですか?

大学時代に国際協力のNPOでボランティアをしていた経験です。
NPOはミッションが明確であっても、お金がないという団体も珍しくありません。NPOといってもお金がないと事業は続いていかないので、経済的な目線から事業運営を支えたいと思うようになりました。

一般の経営者よりもNPOのほうが、やりたいことに対するミッションやビジョンがしっかりとしている傾向があります。そのため「何のためにやっているのか」というような話をかなりしますね。

ー現在はどのようなお仕事をされているんですか?

基本的な業務は月次の打ち合わせと申告書の作成です。

プラスαでフリーやクラウド会計の導入サポートを打ち出していて、効率化の面からサポートするような仕事をしています。最初のころは、どこまでできるようになったらお金が取れるのか、見極めが大変でした。最初は安い単価で受注して、成果やお客様の反応を見ながら見極めていきましたね。

あとは起業家育成のプログラムで、起業家さんにアドバイスする形で携わっています。
例えば「東海若手起業塾」という団体があるのですが、ざっくり言えばコンサルタント的な役割を担っています。起業家さんの考えを整理したり、場合によっては数字の話を出すこともあります。起業家育成プログラムは、事業計画やマーケティングの面からお話をすることもあるので、前職での経験が役に立っていますね。

ー仕事をする上で心がけていることはありますか?

お客様がイメージしやすいような事業計画を打ち出すということです。
過去の実績とかから数字の面だけを分析していると、お客様自身が計画を実感していないのでは、と思うことがあります。数字だけで作られた計画書は、作っただけであとで見直されていないケースもあり、それでは意味がないです。

どういう理念でどんな価値を届けたいのか、事業が作り上がる過程をイメージしてもらうと、ビジョンに沿った事業計画ができます。すると、それぞれの部門でどれだけの売り上げが必要になってくるかが見えやすくなるんです。
そのため、お客様が何をしたいか、という深い部分まで聞くようにしています。業務的な話ではなく事業の理念や価値についてしっかり掘り下げるようにしていますね。

また、お客様と信頼関係を築くにあたって、自分を知ってもらうことも大切にしています。特に数字の面は誰にアドバイスされるかというのは非常に重要だと思うので、お客様に「こんなやつに言われたくないよ」なんて思われないようにお客様ととにかく話をするようにしています。

自分がアドバイスしたことで、一緒に事業計画立ててきちんとそれが進んでいった時はやっていてよかったと思いますね。

フリーランス税理士の魅力とは

ー今後のキャリアに関して、10年後はどのようにお考えですか?

今後は、事務所を拡大していきたいという思いはあまりなくて、お客様の成長を応援していきたいですね。組織を大きくしたいというお客様はもちろんですが、フリーランスでやりたい方まで、それぞれに合わせた応援を続けていきたいと思っています。

あとは、自分の知識を活かしたコンテンツ作りなどを考えています。
顧問業務ですと一人でできることに限りがあるため、顧問業務は顧問業務として自分が責任を持てる範囲で対応していくと思います。従来のように、自分の稼働時間に比例して売り上げを伸ばすのではなく、別の収入源を確保できればと思っています。

ー今後もフリーランスでご活躍されるんですね。ずばりフリーランス税理士の魅力とは何でしょうか?

時間的な自由度が高いことが魅力ですね。
私は子育てしながら仕事をしていますが、子どもと関わる時間が持てるのもフリーランスとしてやっているからだと思います。

あとは、フリーランスならお客様を選べるのも魅力です。組織の中にいるとどうしても上が担当先を決めますから、自分が応援したいお客様とお仕事できるのは良かったなと思います。

組織の中でも出世して社員税理士になれば全然稼いでいる人もいますが、時間的なバランスは取れなかったりします。収入とやりがい、家庭のバランスは取りやすいというのがフリーランスの魅力だと思いますね。

ー最後に、今後の税理士業界を担う人へのメッセージをお願いします。

税理士業界は色々な選択肢のある業界だと思います。大きい案件をたくさんこなしたい人は大手がいいでしょうし、私みたいに町の税理士になりたいのであれば、独立が向いているかもしれません。
なぜ税理士になりたいのか、自分自身と向き合う時間は作った方がいいと思います。

フリーランス税理士を目指す人は、独立すると担当を変えるなんてことはできないので、どういうお客様と仕事をしたいか考えておくべきです。
顧問料は安すぎると数をこなさなけれなりません。もちろんそういう先生もいますし、ある程度の顧問料をいただいてじっくりと向き合う道もあります。いずれにせよ、どういうスタンスで事務所運営していくのかを考えないと、強みのない中途半端な事務所になってしまうのかなと思います。

あとは、色々なことに興味を持って、様々な場所に顔を出すことが大切だと思いますね。
学生時代は自分が税理士になるとは予想していませんでしたが、当時興味を持っていたことが今のお客様と間接的につながることがあるんです。
税理士一直線じゃない方が、面白い税理士になれるんじゃないかと思っています。

ー本日は、お話を聞かせていただきありがとうございました。

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この記事を書いたライター

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