今回は監査がAI(人工知能)でなくなるか?というテーマでお話をしていきます。私は、約8年間会計業界に身をおき、大手監査法人在籍時には監査実務だけでなく大手監査法人内のIT会計士プログラムにも参加しておりました。そんな私が実際の監査経験も踏まえてお話ししますので、監査がAIでなくなり公認会計士の仕事がなくなるのではないかと不安に思われ公認会計士を目指そうか悩んでいる方は是非最後までご覧ください。
みなさんは、最近よく耳にする人工知能(AI)という言葉が、最近になってできた言葉だと思われているかもしれません。しかし、この「人工知能(AI)」という言葉は、1956年に米国東部のダートマスという所で開催されたダートマス会議という小規模な研究会において世界で初めて使用されました。
そんな今から70年以上前から使用されている「人工知能(AI)」という言葉ですが、実は今でもその言葉は明確に定義されていません。なぜなら、そもそも「知能」という言葉自体の定義が明確になっていないからです。
とはいえ、人工知能(AI)を研究していく上で、人工知能(AI)という言葉の定義が必要となるので、各専門家がそれぞれの立場で人工知能(AI)を定義しています。ここでは各専門家の定義を紹介しておきます。
(出典)松尾豊「人工知能は人間を超えるか」(KADOKAWA)p.45より作成
AIの得意分野は画像・音声・映像の認識や解析といった身近なものや、厳格に定められたルールに基づく判定などです。
AIの苦手な分野は、少ないーデータでの推測や、文脈や意図を理解することなどです。
それでは今回の本題の監査がAIでなくなるかという点についてお話しします。私が出した結論は「監査はAIでなくならない」です。
監査は数字のチェックや請求書と突き合わせているだけだと思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。
監査についての細かい説明は省略しますが、監査では、企業や企業環境を理解し、リスクを評価し、監査戦略を立案したうえで、リスクの高い箇所の数字のチェックや外部証憑との突き合わせを実施し、監査の結論を導きだしています。
そのうちの外部証憑との突き合わせといった単純な手続きはAIで代替可能になるかもしれません。また、膨大なデータをもとに厳格なルールの基で分析することもAIで代替可能になる可能性があります。
ここで、「かもしれません」や「可能性があります」として、断定していないのは、人間がAI処理をルール化している限り、単純作業であってもAIに処理させるためにはデータの標準化が必要だからです。
例えば、証憑突合をAIで実施するには請求書をAIにインプットする必要があります。しかし、その請求書は発行する会社によってデザインや記載方法が異なります。仮に請求書のデザインやレイアウトを全て網羅的にルール化できたとしても、手書きのメモがあったらどうするのかなど例外がでてきます。
例外が出るたびに、その都度ルールを再設定すれば良いのではないか?と思われるかもしれませんが、例外は無限に出てきます。
なので、人間がデータ化するのではなく、AIが自分で請求書データの特徴を学習し、問題ないかどうかのルールを設定できるようにならない限り本当の意味でのAI化はすすみません。
こういった単純作業ですらまだまだAI可のハードルが高いのに企業の外部環境・内部環境の理解やそれらを踏まえた上でのリスクの評価についてはまだAIで対応できるほどAIは実用化されていません。
そして仮にこれら全てがAI化できたとしてもそれは監査手続での方法がAI化されただけであり、監査手続自体がなくなったわけでも、ましてや、監査がなくなったわけでもありません。
よって、私は「監査はAIでなくなりません」と結論づけました。
監査はなくならなくても人手がいらなくなり公認会計士の数が減るかもしれないと思われるかもしれませんが、AI化が進んでも、AIの動作状況の確認も必要ですし、AIに認識させるデータがそもそも信頼できるのかなどAIを使用することで、新たに必要になる手続きもあります。
そして、AIが何か問題を見つけてもクライアントへ質問し、回答を基に再検討などはできないので、これらは人間が行う必要があります。AIにより監査がなくなり、公認会計士がいなくなるという未来は絶対に来ません。
なので、不安だった方は心から安心して勉強してください。
最後に簡単にまとめておきましょう。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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