会計用語には、○○資産、という言葉がいくつもあり、混同してしまう方も多いのではないでしょうか。正しい用語の理解は貸借対照表の理解に必要不可欠です。
今回は、当座資産について詳しく解説すると共に、当座資産を用いた指標である当座比率の解説や、当座比率を向上させる方法まで、幅広く解説していきます。
当座資産とは、流動資産のうち、現金を含め、直ぐに現金化することが出来、支払手段に充てることが出来る資産のことをいいます。
流動資産とは、貸借対照表における資産のうち、1年以内に現金化をすることが見込まれる、流動性の高い資産のことであり、この流動資産は、当座資産、棚卸資産、その他の流動資産に大別をすることが出来ます。
つまり、流動資産に当座資産が含まれるといえます。詳細については、下記コラムをご参照ください。
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それでは、当座資産に該当をする資産を、具体的に勘定科目でご紹介致します。
現金とは、企業の手元にある硬貨や紙幣のことです。
直ぐに現金化することが出来る資産が当座資産であることから、いうまでもなく現金は当座資産に該当をします。
預金とは、銀行等の金融機関との間の預金契約等に基づき開設された預金口座のことです。
預金も同様に、引出すことにより直ぐに現金化が可能であり、また引落等により支払手段にそのまま充てることが出来ることから、普通預金も当座資産に該当をします。
預金の詳細については、下記コラムをご参照ください。
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売掛金とは、取引先に対して商品やサービスを提供した際に、その代金を後から収受する約束において発生をした、金銭債権のことです。
売掛金は一般的には1ヶ月ないし2ヶ月以内に現金や預金で収受をされることから、当座資産に該当をします。
売掛金の詳細については、下記コラムをご参照ください。
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受取手形とは、取引先等から受領した代金としての手形であり、定められた満期日以降に、取引銀行等の金融機関で現金化できる法律上の有価証券のことです。
受取手形も一般的には1ヶ月ないし2ヶ月以内に金融機関において現金化できることから、当座資産に該当をします。
受取手形の詳細については、下記コラムをご参照ください。
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未収入金とは、営業活動以外の取引等によって生じた、未回収の金銭債権のことです。
未収入金も、当座資産に該当をします。
未収入金の詳細については、下記コラムをご参照ください。
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有価証券とは、株式や債券、投資信託のことです。会計上は、売買目的有価証券、満期保有目的債券、子会社株式・関連会社株式、その他有価証証券の4つに分類されます。
このうち、トレーディング目的で頻繁に売買を繰り返す売買目的有価証券や、1年以内に償還期限が到来する満期保有目的債券は、当座資産に該当をしますが、企業が保有する有価証券の殆どは、投資その他の資産の投資有価証券とされることが多いため、当座資産として取り扱う場合は少ないです。
短期貸付金とは、契約等により定められた期日までに、返済してもらう約束で貸し付けた金銭のうち、1年以内に返済を受ける金銭のことです。
短期貸付金も、当座資産に該当をします。
当座資産は、会社の安全性を分析するための当座比率の計算に用いられます。
当座比率は、当座資産を流動負債で除した率で計算することの出来る、支払い余力を表す指標です。
支払い余力を表す指標であることから、この当座比率は高い程、資金が潤沢であることを示し、企業が経営判断を行うため、また投資家が投資判断を行うために重要なものとされています。
当座比率の詳細については、下記コラムをご参照ください。
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当座比率の計算を行うにあたり、当座資産の合計値を求める必要があります。
当座資産の合計値は、先に挙げた勘定科目の合計値を合算することで求めることが出来ます。
例えば、下記のように貸借対照表に表示をされていた場合の当座資産の合計値は、現金100,000円と売掛金400,000円の合計値である500,000円であり、当座比率は500,000円を買掛金250,000円で除した率である200%であるといえます。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
現金 | 100,000円 | 買掛金 | 250,000円 |
売掛金 | 400,000円 | 資本金 | 250,000円 |
貸倒引当金がある場合には、それを除いて計算をすることで、より効果的な当座比率の計算に用いる当座資産の合計値を求めることが出来ます。
例えば、下記のように貸借対照表に表示をされていた場合の当座資産の合計値は、現金100,000円と売掛金400,000円の合計値から貸倒引当金50,000円を差し引いたである450,000円であり、当座比率は450,000円を買掛金250,000円で除した率である180%であるといえます。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
現金 | 100,000円 | 買掛金 | 200,000円 |
売掛金 | 400,000円 | 貸倒引当金 | 50,000円 |
資本金 | 250,000円 |
企業が経営判断を行うため、また投資家が投資判断を行うために重要な指標である当座比率であることから、当座比率は高い程望ましいです。
当座比率を上げるためには、当座資産の合計値を上げる、もしくは、流動負債の合計値を下げる方法が考えられます。
今回は、当座資産の合計値を上げる側面から、いくつか方法をご紹介致します。
当座資産に棚卸資産は含まれません。棚卸資産には、商品の在庫があります。
この棚卸資産は、いずれ販売されその対価として現預金を得ることの出来る資産価値を有していますが、当座比率の算出においては計算に含まれず価値を有していません。
よって、商品在庫の値引きを行ってでも早期に販売することは、棚卸資産を当座資産に含まれる現預金や売掛金に換価することが出来、当座比率の向上を見込むことが出来ます。
棚卸資産と同様に、当座資産に固定資産は含まれません。固定資産には、建物や車両、器具備品、商標権、ゴルフ会員権、1年を超えて償還期限が到来する満期保有目的債券、長期貸付金等があります。
これらの固定資産も棚卸資産と同様に、資産価値を有していますが、当座比率の算出においては計算に含まれず価値を有していません。
よって、事業に使用していないゴルフ会員権を売却する、満期保有目的債券を期限前に換金する、長期貸付金の返済期日を早める等の行為によって現預金に換価することで、当座比率の向上を見込むことが出来ます。
企業にとって現預金や売掛金等の発生元は、商品やサービスの販売による売上が大半を占めています。
よって売上を増加させると当座資産が増加することとなりますが、売上を増加すると共に同額の経費が増加するようでは、流動負債の増加や当座資産の減少に繋がり、当座比率の向上にはつながりません。
売上の増加と比較をして流動負債の増加が少ない、当座資産の減少が少ない行為として、利益率の高い商品やサービスの販売をすることで、当座比率の向上を見込むことが出来ます。
当座資産の解説と、当座資産を用いた指標である当座比率についてご紹介致しました。
貸借対照表から経営判断や投資判断を行うためには必要となる知識です、ご参考になさってください。