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買収すると株はどうなる?買収時の株についていろんな面から徹底解説

公認会計士 前澤直樹
買収すると株はどうなる?買収時の株についていろんな面から徹底解説

買収する、あるいは買収されると株式はどうなるのでしょうか。また、買収すると株価はどうなるのでしょうか。買収ということをキーワードにして株式にはさまざまな影響が出ることになります。買収による株式への影響、また株式がどうなるのかなどを解説していきます。

買収した株式は?

まず一つ目ですが、会社を買収した場合、買った側は株式というのはどうなるのでしょうか。株式発行会社の場合と株式不発行会社の場合で譲渡する際の手続きが異なるのでそれぞれをみていきましょう。

株式発行会社

株式発行会社とは、「その株式に係る株券を発行する旨の定款の定めがある会社」を言います
株式を譲渡する場合には、株式に係る株券を交付しなければその効力を生じないとされています。そのため、株式発行会社の場合には譲渡人と譲受人との意思表示のみでは効力が発生しません。
さらに譲受人が会社に対して株式の譲渡があったこと、すなわち、株主に変更があったことを主張するには株主名簿の名義書換も必要となります。

株式発行会社において、株式の譲渡は株券の交付によって行われることになるので、株券の占有者は譲渡を受けている可能性が高いので、占有者が適法な権利者と推定されるとされています。そしてその株券占有者は、株券を持ってして会社に対して株主名簿の名義書換も請求することができます。
株券の占有者が適法な所持人と推定されることから、その占有者は悪意・重過失がない限り、善意取得ができるとされています。

株式不発行会社

次に株式不発行会社とは、株式発行会社以外の株式会社を指します。すなわち、株券を発行していない会社が該当しますが、株式発行会社と株式不発行会社では譲渡する場合、契約の成立の仕方が異なります。

株式不発行会社においては、株式譲渡は当事者間の合意によって株式の譲渡が成立します。そのため、譲渡人と譲受人の間で株式譲渡契約を締結することにより、株式の譲渡を行うことができます。

ただし、株式の譲渡を株式会社やその他の第三者に対抗するためには、株主名簿の名義書換をしなければ成立しません。
これらの点は株式発行会社と株式不発行会社で異なるので留意が必要です。

買収された会社の場合の株式は?

買収された側の株式はどうなるのでしょうか。株式発行会社と不発行会社で手続きや第三者に譲渡したことを対抗する要件は先述した内容と同じ内容となります
基本的には譲渡をすれば、株主名簿の名義書換まですれば手続きが完了することになります。

では、親会社が買収された時に、子会社の株式を保有している場合はどうなるのでしょうか。親会社の株式が譲渡された場合には、子会社の株主の保有する株式は影響がありません。親会社の株主が変わるだけなので影響を受けないのです。ただし、三角合併や株式交換などの手法を用いた場合には影響を受ける場合があるので留意が必要です。

買収時の株価への影響は?

買収による株関連として株価があげられます。買収すると株価はどうなるのでしょうか。

買収のニュースが出ると株価は変動します。それは上がる場合も下がる場合もあります。買収する側か買収される側かで異なるので、それぞれについてみていきましょう。

買収する側の株価

買収する側は、企業規模の拡大や業績向上、シナジー効果の発揮など期待され、株価は上昇する可能性が高いです。成長が期待され、将来的な業績の向上が予想されるので上昇しやすいのです。

一方で、株価が下落する場合もあります。それは買収する対価が高い場合や借入金の増加、将来の業績の悪化などが予想される場合です
ここ最近で株価が下落したものの代表例として武田薬品工業によるシャイアーの買収があります。当該案件は買収対価が6兆8,000億円とも言われ、買収対価の高さ、買収資金の調達が必要だった点などから株価は下落しました。

業界再編などの場合は買収対価が大きくなる場合も多くなりますが、買収対価が大きいからマイナスなのではなく、その買収案件の意味合いがちゃんとあるのかによって影響は異なります。買収の意味合いなどが重要なのです。

買収される側の株価

上場会社の場合、買収される側の株価は上がる可能性が高いです。買収するということは基本的に株価が安いということがほとんどです。そのため、プレミアムを支払って買われることがほとんどであるため、市場の株価は上昇するのです。

上場会社ではない場合でも基本的には既存株主の出資価額よりも高く買い取られることがほとんどなので、株価は上昇します。ただし、業績の悪い場合などは該当しないので留意が必要です。

まとめ

ここまで、買収時の株について解説してきました。株式の譲渡方法、手続き、また株価など買収が株価に与える影響はさまざまです。株主にとっては、一番の関心事は株価と思いますが、必要な手続きなどができていない場合、自分が株主であることを主張できないので留意しましょう。

この記事を書いたライター

公認会計士試験合格後、監査法人トーマツに就職。約6年間金融商品取引法監査、US監査などを経験。グループ会社であるDTFAに転籍し約4年間従事。デューデリジェンス、バリュエーションなどM&A系の仕事を経験。その後、事業会社の経営企画に従事。
カテゴリ:コラム・学び

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