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苦手意識を持つ方向けに「未払金」の仕訳方法を詳しく解説します!

税理士 川口拓哉
苦手意識を持つ方向けに「未払金」の仕訳方法を詳しく解説します!

簿記の勉強を始めたばかりの方や、経理担当になって間もない方の中には、「未払金」「未払費用」「買掛金」といった未払いの費用を示す勘定科目の使い分けがよくわからず、いつしか苦手意識を持っている方も多いのではないでしょうか。この記事では、「未払金」勘定の使い方を具体的な仕訳をもとに詳しく解説します。

この記事を最後までお読みいただければ、次の仕訳を切ることができるようになります。

X年8月に弁護士からスポット業務の提供を受け、10万円(消費税抜)から源泉所得税を引いた金額を翌月末に支払うことにした場合の、X年8月の仕訳及びX年9月の仕訳

未払金勘定を使う場面

未払金勘定は主に次の場面で使用します。

・仕入れとなるもの以外の物を購入し、代金を後払いにした場面
・継続的ではないサービスを受け、代金を後払いにした場面

このうち、「仕入れとなるもの(たとえば居酒屋だとお酒や食材、洋服店だと販売用の服)を購入し、代金を後払いにした場面」で使うのは未払金ではなく「買掛金」、「継続的なサービスを受け、代金を後払いにした場面(たとえば家賃や給料)」で使うのは未払金ではなく「未払費用」です。

未払金の基本仕訳

未払金は負債ですので、増えるときは貸方、減るときは借方にきます。
たとえば、商品運搬用の軽トラックを100万円で購入して、代金は翌月末払いとした場合の仕訳は次のとおりです(単位は円。以下同じ)。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
車両運搬具 1,000,,000 未払金 1,000,000

その翌月末に代金を支払った際は未払金がなくなるので、次の仕訳を切ります。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
未払金 1,000,000 現金預金 1,000,000

消費税等が入る場合の仕訳

先ほどの例では消費税等(国税である消費税と地方税である地方消費税を合わせて「消費税等」と呼びます)を考慮していませんでしたが、実際の取引では消費税等がかかります。

たとえば、商品運搬用の軽トラックを税抜100万円(消費税等10万円)で購入して、代金は翌月末払いとした場合、どのような仕訳を切ればよいでしょうか(税抜経理方式を採用しているものとします。以下同じ)。

「未払金」の勘定を使うと混乱しそうになる方は、未払金ではなく「現金」で考えてみましょう。税抜が100万円、消費税等の額が10万円の物を購入したとき、自分の財布からは110万円が出ていきます。つまり、貸方に現金110万円が来るわけです。

これで貸方が決まりました。あとは借方ですが、借方は先ほどと同じように車両運搬具100万円として、残った10万円は「仮払消費税等」という勘定科目を使います。この「仮払消費税等」は資産勘定ですので、増加する場合は借方に来ます。

以上をまとめたのが次の仕訳です(太字は、先ほど示した仕訳と異なる箇所です)。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
車両運搬具 1,000,000 未払金 1,100,000
仮払消費税等 100,000

源泉所得税が入る場合の仕訳

個人の弁護士や税理士などに業務報酬を支払うときは、所得税と復興特別所得税を源泉徴収する必要があります。

たとえば、X年8月に個人の弁護士から業務の提供を受け、対価である10万円(源泉徴収前)を翌月末に支払う場合、X年8月とX年9月にはそれぞれどのような仕訳を切るべきでしょうか(消費税等は考慮しないものとします)。なお、10万円に対応する源泉所得税の金額は10,210円です。

まず、8月の時点では次の仕訳を切ります。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
弁護士費用 100,000 未払金 100,000

8月の時点では未払いであるため、仕訳で源泉所得税を考慮する必要はありません。なお、借方の弁護士費用(勘定科目は他に「支払報酬」「その他経費」などが考えられます)は費用項目です。

次に9月の時点では次の仕訳を切ります。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
未払金 100,000 現金預金 89,790
預り金 10,210

9月になって報酬を支払う際、源泉所得税を差し引いて支払いを行います。この際に差し引いた源泉税は「預り金」の科目で処理します。源泉所得税は原則として翌月10日までに税務署へ納付する必要があり、その納付時に預り金を取り崩す仕訳を切ります。

消費税と源泉所得税が入る場合の仕訳

先ほどの例では消費税等を考慮していませんでしたが、実際の取引では消費税等がかかります。

たとえば、X年8月に個人の弁護士から業務の提供を受け、次の請求書が届いたとします。X年8月とX年9月にはそれぞれどのような仕訳を切るべきでしょうか。

請求書

8月に完了した業務報酬を以下のとおり請求しますので、翌月末までにお支払いください。
請求金額:99,790円
(内訳)
報酬(消費税抜) 100,000円
消費税等         10,000円
源泉所得税      ▲10,210円
計             99,790円

まず、8月の時点では次の仕訳を切ります。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
弁護士費用 100,000 未払金 110,000
仮払消費税等 10,000

次に9月の時点では次の仕訳を切ります。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
未払金 110,000 現金預金 99,790
預り金 10,210

細かい話ではありますが、消費税等を考慮した場合としない場合で「預り金」の金額が同じなのは、「請求書に報酬額と消費税等が区別して記載されているときは税込金額ではなく税抜金額に税率を乗じた額を源泉徴収してもよい」というルールがあるためです。

まとめ

以上、未払金勘定の使い方について具体的な仕訳をもとに解説しました。
ここで解説した勘定科目名や仕訳を切るタイミングはあくまでも一例であり、会社や税理士事務所によって異なる場合がある点、ご留意ください。

この記事を書いたライター

税理士事務所代表。社会人5年目で経理職に転じ、以降は経理畑。事業会社に勤務しながら税理士試験の勉強を始め、官報合格。移転価格税制対応業務や、外資系企業日本法人の各種申告業務の経験などを有する。
カテゴリ:業務内容

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