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「入社5年目でCFO」若くして経営層に。挫折を味わい肩書きの重みと責任を強く感じた。トレンダーズ株式会社のCFO田中隼人のキャリア遍歴

HUPRO 編集部
「入社5年目でCFO」若くして経営層に。挫折を味わい肩書きの重みと責任を強く感じた。トレンダーズ株式会社のCFO田中隼人のキャリア遍歴

トレンド分析と生活者インサイト分析を強みとし、デジタル・SNS領域で最先端のマイクロマーケティングソリューションを提供するトレンダーズ株式会社CFOの田中隼人氏に、HUPRO編集部がお話を伺いました!

2014年 関西学院大学大学院(修士課程)修了
同年 トレンダーズ株式会社 新卒入社
2018年 トレンダーズ株式会社 執行役員CFO就任
2020年 トレンダーズ株式会社 取締役CFO就任、現在に至る

【田中氏のキャリアグラフ】

両親の教育。シンプルな「お金」の重要性について

―会計への興味はいつ頃からありましたか?

振り返ってみれば、両親の教育がきっかけだったように思えます。ありがたいことに、学生時代にお金が理由で進学先の選択肢が狭まったりすることはなく、不自由なく学生生活を送ることが出来ました。

当時の自分はよく分かっていませんでしたが、両親は、そのような生活は当たり前のものではないし、お金があれば幸せになるわけでもないが、お金がないことで不幸になることはある、ということを意識して教えてくれていたように感じます。

自分は、そういった教育を受け、この資本主義経済の中で「お金」は可能性を広げる手段であることを感じ、そこから徐々に、経済やビジネスなどお金に関して興味が湧きました。

―なるほど!それで大学進学した後に、「お金」への興味から公認会計士を目指されたと。

そうですね。その経験と他に大きく2つ理由はあります。
1つ目は、刺激が欲しかったということです。大学1年生の頃は、自分でサッカーサークルを立ち上げ運営していました。非常に充実はしていたのですが、他の分野でも没頭したいと考えるようになり、商学部に進学していたこともあり、公認会計士の勉強を2年生から始めることにしました。

2つ目は、外的要因ではあるのですが、公認会計士不足の解決策として合格者数を増やす方針が出ていたことで、今だと合格しやすいのではないか?と考えて目指すことにしました。つまり、会計士になりたいというより、大学生のうちに会計士試験に受かっておくか、くらいの思いで始めました。今考えると安易ですね。

公認会計士試験に失敗。申し訳ない気持ちが原動力に。

―公認会計士試験については結果としてグラフに記載通り失敗となっています。どのような心境でしたか?

申し訳ないという気持ちが、応援して支援してくれた両親にありました。お金を出してくれた両親に成功という結果を届けられなかったことが、モチベーションが下がっている原因です。

公認会計士にはなることはできませんでしたが、自分としてはそこまで深く落ち込んだわけではありませんでした。寧ろ公認会計士試験に合格した人たちには絶対負けないぞという思いが湧いてきて、やる気に満ち溢れていました。今でもこの気持ちは私の原動力となっています。

―働くにあたってどんな環境に行こうと考えたのですか?

大学院を修了後、24歳で新卒入社しましたが、当時、35歳までに、経済的・時間的自由の2つを手に入れることを目標にしていました。というのも、美味しいものを食べたり、行きたいところに旅をするなど、人生のさまざまなシーンにおいて、時間とお金が人の制約になります。

一度きりの人生なので、年をとってからではなく若いうちに制約を取り払いたいという強い思いがありました。

逆算すれば残り約10年。一般的な企業や大規模な会社ではなかなかそこまでは到達できないということがわかりました。自分の名前と実力で、仕事を頼まれる立場にならないと、理想の実現はできないと思いました。

そのためには、圧倒的に力をつけ、圧倒的な成果を出すしかないと思ったので、成長しているベンチャー企業で働こうと考えたわけです。

―数あるベンチャー企業の中でなぜトレンダーズだったのですか?

理由は3つです。
1つ目は、入社するベンチャー企業の組織の中で圧倒的に自分が勝てるか。
2つ目が、社内の人が優秀か。
3つ目が、その働く仲間との相性。

以上の3つで多くの企業を見ていました。そして比較をしていく中で、トレンダーズこそが最適だと思い、入社をしました。

1つ目と2つ目は一見相反するのですが、同時に満たすために自分の得意領域と会社の苦手領域がマッチする環境を選択しました。私はロジカルに考えることが得意なタイプ。トレンダーズの仕事は生活者の心を動かすというマーケティングを強みにしています。多くの課題がロジックだけでは正解が出ません。クリエイティブな人、情熱を持っている人など、自分とは違うタイプの優秀な人が集まっている環境は非常に魅力的でした。

そして逆に会社に不足しているロジカルな部分に自分の強みがはまると、自分が勝てる確率が高まります。これがロジカルに考えることを強みにしているコンサルティングファーム等に行けば、勝つ確率が高いとは言えない。だからこそトレンダーズが良いと感じました。

そして3つ目の働く仲間については、週に40時間以上も一緒に過ごす人との相性が悪いと辛いなと。私はコミュニケーションが柔らかく、相手を思いやれる優しい人が好きで、そんな方が集まっているのがトレンダーズでした。

チャレンジの連続。入社5年目にCFOとして経営層に抜擢。

―入社後どういったお仕事をされたのですか?

入社後、経理を希望して配属されました。学生時代に簿記1級を取得していたこともあり、経理は自分の強みだと思い、ここなら勝てると思いました。そして入社半年で好機が訪れました。決算説明資料の作成という役回りが偶然空いていて、迷わず手を挙げました。

しかし決算説明資料の存在も、それがどんな資料なのかも知りませんでした。IR資料は厳格な決まりがなく、経理の仕事と比べると不確実性が高く難易度も高いということもこの時初めて知りました。

自分が10年間で、経済的、時間的な自由を手にするためにも目の前にあるチャンスは迷わず取りに行く。そしてそのチャンスが想像以上に早く来たので、迷わずチャレンジしました。

―順調にお仕事をされて、入社5年目には執行役員CFOに就任されましたね。

そうですね。自らの意思を表明して積極的に手を上げ、成果にこだわり続けた結果、4年目で経営メンバーに、そして5年目には執行役員になりました。

執行役員になる際、「何か要望はないか?」と聞かれました。CFOという肩書があれば仕事がしやすいと思い、「自分にCFOという肩書きをください。必ず成果を出します」と申し出ました。

生意気なようですが、自分がトレンダーズに貢献しているという実感があったこと、あの時は自分でないとだめだと本気で思っていたので、自信を持って進言しました。

― CFOの肩書はやはり仕事においてプラスに働きましたか?

そうですね。CFOの肩書を得たことで、他社のCFOに会って話を聞きに行き易くなったことは大きなメリットでした。そこから得られる情報などは会社の経営をしていく中で非常に重要でした。そして誰が財務と株価に対して責任を負っているのかが分かりやすく、非常に自分に対して身が引き締まる思いでした。今まで以上に仕事に熱が入りました。

CFOとしての天国と地獄

―CFO就任直後の2018年5月に、M&Aの経験をされた際にモチベーションもかなり高いですね。

CFO就任後に初めての仕事で、MimiTV社の買収に携わりました。買収サイドは初めてでしたが、とても楽しかったのを覚えています。知らないことだらけで、デューデリジェンスでは何をすればよいのか?何が大事なのか?などを考え実行していくのが楽しかったです。またM&Aは、お互いの利益が相反する中で相手との価格交渉や条件決めを行います。これが営業行為みたいで個人的には面白いと感じました。
【MimiTV 概要】

そして無事にM&Aが完了して数カ月後に、業績が良かったこともあり、時価総額は上場時とほぼ同じ150億円まで上がりました。経営者、CFOとしての一つの成功体験になりました。
【MimiTV WEBサイト】

―その後、資金調達中止、株価大幅下落で、キャリアグラフも下降気味になっているようですね。

資金調達を中止したことやその後の業績、新型コロナウイルスの感染拡大などの複合的な理由により、株価が大幅に下がり、一時期は時価総額が30億円弱にまで落ちこみました。

この期間も、仕事に対するモチベーションは下がっていないんです。しかし数千人いる株主全員が株価の下落で損をしているのかと思うと、CFOとして申し訳なく、そして非常に責任を感じました。自分の選択や判断によってこの結果を導いてしまったのであれば、責任を取ることも考え、すごく悩んだ時期でした。当時は人生で初めて、全くと言っていいほど寝られなかったです。

―非常にお辛い時期でしたね。

そうですね。この辛い時期は結構な期間にわたって続きました。そして何より150名近い社員とその家族の人生を預かっていることを改めて感じました。頭では理解していましたが、この経験を通じて役員・CFOという肩書きの重みを強く感じました。

経営に関わるようになるまでは自分の時間的・経済的自由の獲得にプライオリティを置いていましたが、今では会社のメンバーや株主、取引先、生活者、社会などすべてのステークホルダーを幸せにするために働く、という強い責任感が原動力であり、最大のモチベーションになっています。

CFOが語る。トレンダーズの管理部門の魅力。

―トレンダーズの管理部門の魅力を教えてください。

トレンダーズの管理部門で働く魅力としては大きく3つあります。
1つ目は挑戦できる幅が広い。例えば、経理担当で入社したらずっと経理担当、ではなくて、IRやM&A、法務、人事労務なども、意思があれば幅広く担えるのが大きな魅力です。2つ目は、われわれはまだマザーズ市場なので、これから成長して市場再編後のプライム市場に挑戦するという経験を味わえます。

そして最後に、管理部長や経営層になりたい人にとってチャレンジできる環境がしっかり整っています。CHROやCLOなど今無いポジションでも、本人に意思・覚悟とスキルがあり会社に必要であれば作ればよいと思っていますし、自分もCFOというポジションにしがみつくつもりは一切ありません。他社では非常に時間がかかるかもしれませんが、トレンダーズでは、本当にそういうポジションをつかみ取りたいという思いがあれば、チャンスはいくらでもあります。意思表明することを心から尊重するのがトレンダーズ管理部門です。

―トレンダーズは女性社員が7割と、女性の多い会社ですが、そういった制度も管理部門が設計をされているのですよね?

そうですね。人事部門を中心に作成しています。また、経営会議では2週間に1度、必ず人や組織、制度について話します。それ以外にも、例えば新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた頃すぐに、どのような手当をいつ・どのような形で出すのが一番良いのか、働く環境の整備のために何が出来るのか、足元だけではなく今後の働き方はどうしていくべきなのか、などを何度も話し合い、意思決定して実行してきました。働く環境、働く人に対して、事業を考えるのと同じかそれ以上の時間をかけて考えています。

産休や育休を取得することをマイナスにしてはいけないし、女性の多い会社としてそれはあってはならないと考えています。産休や育休に入ることを前提として、休暇に入りやすく復帰しやすい環境などについて検討を重ねています。

―どんな方々とこの管理部門で働きたいと考えていますか?

全社的にそうですが、意思表明ができる人を採用したいです。受動的な方よりも主体性・積極性のある方ですね。

あとは、正論と現実の間を楽しめる人ですかね。管理部門や経理部が強い会社では、何日締めなのでこれは受け付けられません、以上、みたいに自部門のルールや正義を貫くことになります。しかしそれでスムーズに事業が回るかといわれれば、そうではありません。

そのため事業部がやりやすい形の中で、管理部門が守りたいところのバランス、落としどころはどこなのかを探りながら、事業部と会社をつくっていくという気概を持ってほしいです。そういう人は実際活躍していますし、一緒に働きたいですね。

トレンダーズの飛躍。営業利益10億円の実現に向けて

―現在、中期経営計画の営業利益10億円という目標に向けた飛躍期ということですが

そうですね。2024年3月期に目標を置いていますが、すべてのステークホルダーのためにも、できれば1年早めたいと思っています。

一般的にベンチャーで成功していると言われる企業の時価総額は、500億円~1000億円はあります。その数字にいったらゴールとは全く思っていませんが、到達後に維持、成長し続けている会社は一部ですので、そこには到達したいと思っています。

―今後会社として、どんな姿を描いていますか?

われわれはトレンドを捉え、新しい時代を創ることをミッションに掲げています。トレンダーズは女性社員比率・女性管理職比率がともに7割という会社として、事業をきちんと伸ばし、売上高・利益・時価総額の桁を変えていくことで、ビジネスは男性中心いう固定観念を変えるキッカケになりたいと思っており、そこに社会的使命を見出しています。

すべてのステークホルダーが幸せになるということと、社会の空気や常識を変えるという社会貢献のためにも、結果を出すことを目指しており、そこに向けてこだわる数年間にしたいです。

―社会貢献のためにも、まず自社の利益目標を達成して、ステークホルダーへの説明責任を果たしていくということですね。

そうですね。それは事業サイドだけでなく、対社員も同じだと思っています。社員には人生の貴重な時間を割いて働いてもらっている以上、絶対に幸せになってもらわないといけません。幸せの定義は人それぞれですが、少なくとも豊かになってほしいと思っています。それを実現するためにも、売上利益を上げていくのは大事です。トレンダーズに入社してよかったなと思えるように、経済的にも精神的にも豊かになってほしいと思っています。

―CFOとして具体的にどのように貢献していきますか?

現在、CFO業務以外に新卒採用の責任者も兼務しています。新卒入社のメンバーの貢献度合いで業績も変わってくるので、しっかりコミットして優秀な人材を迎え入れるのもそうですし、教育にも携わっています。CFOとしては、M&Aで非連続の成長を作りたいと思っていますし、IRではトレンダーズが持つポテンシャルをきちんとマーケットに対して伝えて理解頂くことで、期待値であるPER、ひいては時価総額を高めていきたいと考えています。

―最後に、ヒュープロマガジンの読者に向けて、キャリアに関するメッセージをお願いします。

管理部門の仕事はすべての会社において必要で重要な仕事です。だからこそ自分の仕事のレベルや価値を上げ続けることを意識してほしいですし、私自身もそうありたいと思っています。

管理部門はビジネスと切り離された遠いところにあるのではなく、ビジネスという枠組みの中で事業や組織を支える役割を持っています。自分は会社の重要な仕事を担っているのだと認識した上で働くと更に仕事は楽しくなると思います。

また、管理部門の経験を活かして、独立するもよし、社内で昇格するもよし、経営者を目指すのもよしです。皆さんの能力や価値は日本の貴重な資産です。常に視座高く高みを目指すことで日本を良くしていっていただければ思います。それぐらい素晴らしい仕事だと思っています。これからのキャリア形成を応援しています!自分も負けないように頑張ります!

―本日はお話を聞かせていただきありがとうございました。

本日お話を聞かせていただいた田中氏がCFOを務めるトレンダーズ株式会社の各種サイトはこちら!

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この記事を書いたライター

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