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自己資本がマイナスになったら倒産?自己資本比率がマイナスとどう違う?

HUPRO 編集部
自己資本がマイナスになったら倒産?自己資本比率がマイナスとどう違う?

企業が負債を抱えて債務超過に陥り、経営難から倒産する……そんなニュースを目に住量になりました。しかし、債務が超過した状態になったとしても、会社はすぐに倒産はしません。それはなぜでしょうか。今回は、自己資本と自己資本比率から会社の倒産について考えてみましょう。

自己資本がマイナスは何を意味する?

まず、貸借対照表を見てみましょう。
「自己資本」は、資本金+資本剰余金+利益剰余金―自己株式+その他の包括利益累計額(評価・換算差額等)で求められます。
(一般企業の多くは、新株予約権や非支配株主持分を持たないことも多いので、自己資本=純利益であることも多いです)

会社の資産は、負債と純資産で構成されています。
しかし、貸借対照表を良く見ると純資産の部がマイナスになっている場合があります。つまり、以下のような状況です。

赤字が累積することにより、負債が資産を上回ってしまい、純資産(自己資本)の合計額がマイナスになっている状態です。こうなると、自社の資産をすべて売却しても負債を返しきれません。

この状態を「債務超過」といいます。
総資産-総負債=純資産なので、債務超過の時は純資産(自己資本)はマイナスになります。

自己資本がマイナスになると、原則として銀行などの金融機関で融資を受けることは難しくなるでしょう。また、仮にプラスであっても、決算書の数値をそのまま使うのではなく、時価ベースでプラスなのかどうかが重要です。資産の取得金額と時価が異なることはよくあります。

会社の経営状況の確認というと、つい損益計算書の利益や損失に目が行きがちですが、実は貸借対照表の純資産(自己資本)がどうなっているかを確認することも大切です。

自己資本がマイナス=自己資本比率もマイナス?

自己資本比率は、自己資本比率(%)=自己資本÷資産×100であらわされる指標です。

資産をどれだけ自己資本で賄っているかをあらわします。自己資本比率が高いほど、返済不要なお金の割合が高いのです。
一般的には、自己資本比率70%で財務状況が優秀とされています。しかし、自己資本比率の良し悪しは業種にもよるので、一概に何%以上が良いと断じるのは難しいです。少なくとも10%以上は欲しいところでしょう。

自己資本比率の式を見ていただければわかりますが、自己資本がプラスだと正の数字、マイナスだと負の数字になります。自己資本(純資産)がマイナス、つまり債務超過の場合、自己資本比率もマイナスになります。

自己資本比率については、以下の記事で詳しく説明していますので、ご確認ください。

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債務超過はいわゆる倒産?

債務超過の状況に陥ったら「倒産」かどうかというと、それはまだ結論付けるには早いです。起業したばかりの時や、事業拡大のために大きな投資をして、黒字化はこれからという段階で決算が来ると債務超過になることはよくあります。

一時的に債務超過になったとしても、資金調達に成功し、債務であっても手元に現金があれば、支払いができるために倒産することはありません。その後の企業活動で営業利益を生み出せば良いのです。

倒産するというのは、赤字か黒字かに関係なく、負債の返済を期限内に支払えなかった時です。つまり、キャッシュフローがどうかということがより重要となります。

例えば、1000万円の仕入れをして、2000万円の売り上げが上がるのが3ヶ月後、今は手元にお金がないから仕入れ代金を支払えない、自己資本が少なく500万円しかない……こんな状況であれば、会社はつぶれます。当期純利益がいくらあっても、その売掛金を回収できないと、会社は黒字倒産するのです。

もともと自己資本が小さい会社だと、自己資本比率が低く、一過性の赤字で債務超過になることもあります。

自己資本・自己資本比率がマイナスの事例

新型コロナウイルスの影響で、多くの企業の業績に影響が出ています。ここでは、大きな打撃を受けた旅行業から、クラブツーリズム、近畿日本ツーリストとの親会社であるKNT-CTホールディングス株式会社の2021年3月決算・2021年6月の第一四半期決算を見てみましょう。

引用:KNT-CTホールディングス株式会社 四半期報告書 第85期第1四半期

2021年3月決算で社、純資産合計欄を見ると96億54百万円の債務超過となっており、企業として継続が危ぶまれる状況でした。しかし、新型コロナウイルスの影響で、本業の旅行業では利益を出すに至っていません。そこで、第三者割当増資に伴う資本剰余金の増加をおこない、債務超過を脱しています。
自己資本比率を -15.4%→23.1%まで引き上げています。
しかし、新型コロナの影響で旅行は依然振るわず、今後も注視が必要です。

自己資本比率と企業の経営状況については、以下の記事でも解説しています。合わせてご覧ください。

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