会社上、合併を行った場合には原則として合併を行ったことを広く債権者に知らせなければならないことが定められています。通常、このプロセスは合併公告を通じて行われます。この記事では、そんな合併公告のプロセスの概要についてわかりやすく解説します。これを読むことで、合併公告までのプロセスがわかります。
《関連記事》
株式会社をはじめとする会社や厚生年金基金その他さまざまな法人等は、一定の事項について公告をしなければならないとされています。「公告」とは、官報その他の方法によって、特定の利害関係者に限らず広く会社の情報を公開することです。官報とは、国立印刷局が編集・印刷する国の広報紙で、国の開庁日には毎日発行されます。
2つの会社が同一の法人となる「合併」行為は、企業の資金の提供者である株主や債権者に重大な影響を与えることから、必ず「公告」によって会社の情報を公開しなければならないことが、会社法で定められています。つまり、合併公告は、法律で定められていることから、法定公告ということになります。
法定公告は、法令によって掲載することが義務付けられているものですから、その内容は真実を正確に表現したものでなければならないことはいうまでもありません。万一、虚偽又は不正な公告をした場合には、公告としての効力が失われる場合があるばかりでなく、民事上、刑事上の責任を問われることもあります
法定公告には、その情報を公開する場所によって次の 2 種類に分けられます。
2つの会社がどのように合併するかによって、公告しなければならない情報が異なります。会社法上、広告しなければならない情報は、合併の種類によって以下のように定められています。
吸収合併の場合であっても、会社の規模に応じて、簡易的な手続き(みなし総会など)で吸収合併を行うことも可能で、それに応じて、公告しなければならない情報も異なります。
ここでは、合併のなかでも代表的な合併方法である吸収合併を行う場合の公告と債権者の異議申し立てについて説明します。簡易吸収合併や新設合併などの場合には、必要な手続きが異なるので注意してください。
吸収合併をする場合、吸収合併消滅株式会社の債権者は、消滅株式会社等に対して、吸収合併等について異議を述べることが可能です(会社法789条)。
これは、吸収合併証明株式会社の債権者は、吸収合併によって消滅する会社に対する債権を保有しており、吸収合併によって、保有している債務の履行者である会社が消滅することによって何らかの影響を被る可能性があるからです。もちろん、吸収合併承継会社が吸収合併消滅会社の資産・負債・純資産を引き継ぎますから、吸収合併承継会社は、吸収合併消滅会社の債権者の債務を履行しなければなりません。
さらに、消滅株式会社等の債権者の全部又は一部が異議を述べることができる場合には、消滅株式会社等は、次に掲げる事項について官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない旨、会社法によって定められています(会社法789条)。
これらの情報を公告しなければならないのは、消滅株式会社の債権者が異議申し立てをするために必要だからです。したがって、合併公告は、合併の効力発生日前日の1ヶ月以上前までに済ませなければなりません。
なお、債権者異議申述公告には、最終貸借対照表の開示状況を記載する必要があります(計算書類に該当します)。最終貸借対照表の開示(決算公告)が無いと、公告要件不備となり、法務局での登記が受理されません。
官報への掲載の申込みをしても、実際に官報に合併公告が掲載されるまでには、およそ1ヶ月程度の時間を見積もる必要があります。詳細なスケジュールについては、全国官報販売協同組合(全官報)を確認しましょう。近年では、インターネットを通じて官報掲載の申込みができるようになっています。
実際に官報へ情報を合併公告を出す前に、代理人に官報の作成を依頼することもできます。合併公告を行う場合、その手続きが複雑であるので、代理人に作成依頼をするのが一般的です。代理人への作成依頼する場合には、合併公告は、合併効力発生前日の1ヶ月以上前に済ませなければならず、官報掲載までに1ヶ月程度の日数を要することを考えると、掲載3ヶ月前程度から依頼する必要があります。