大企業などの企業経営を合理化する際に採用されるのが持株会社という制度です。
持株会社を採用することにより、グループ経営の機能を集約することができるため、効率的な事業運用が可能になります。
今回は持株会社を採用するメリットや持株会社を採用している企業の事例について解説していきます。
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子会社の株式を保有することを目的とした会社のことを「持株会社」といいます。
企業を経営する際、持株会社の制度を活用することで合理的な企業経営を実現可能です。
持株会社とは、その名の通り「子会社の株式を持つ会社」という意味です。ホールディングカンパニーと呼ぶこともあります。
持株会社の中には、「純粋持株会社」と「事業持株会社」に分類されます。特に、純粋持株会社の場合は自身で事業を行わず、傘下となる企業の経営管理に特化した会社であることが特徴です。
持株会社を採用することによって、企業経営の効率化および合理化を図れます。
持株会社にグループ経営の機能を集約することにより、各社に機能を分散するよりも効率的にグループ経営が可能になります。
グループ経営において、ブレーン(脳)の役割を担う機関を持株会社へ集約することにより、迅速な意思決定を展開できるのです。
その他にも、持株会社にグループ経営を集約することに新規のM&Aを仕掛けやすくなるというメリットもあります。
持株会社を設立することによって、バックオフィスのコストが増えるというデメリットがあります。
傘下に置かれた会社だけでなく、持株会社自身を管理するバックオフィス業務の人員が増えるため、グループ経営にかかるコストが増えることになります。
バックオフィス業務が煩雑になり、コストがかかるため、注意しましょう。
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日本において初の持株会社を採用したのは大和証券グループです。
この他、特に金融機関に関して持株会社を採用するメリットが大きく、多くの金融機関が持株会社制度を採用しています。
金融業以外にも多くの事業会社が持株会社を採用しており、企業経営における持株会社のメリットを享受しています。
大和証券グループは日本において最初の純粋持株会社となった例です。
1902年に創設された「藤本ビルブローカー」は事業再編を繰り返し、1999年に「株式会社大和証券グループ本社」として持株会社へと移行。独占禁止法解禁後、日本で初めての純粋持株会社としての歩みを始めました。
同グループは証券会社としてだけでなく、金融機関として様々な事業を多角化することに成功しています。
また、日本初の持株会社である経験をもとに「持ち株会社化コンサルティング」というサービスも行っています。
持株会社を採用する業種の代表例として挙げられるのが、金融業としての持株会社です。
金融業における持株会社のことを「金融持株会社」と呼ぶこともあります。
金融機関が持株会社制を採用することにより、事業規模を拡大して規模の経済性を活かせるメリットがあります。
また、金融機関が事業を多角化するうえで持株会社制を採用することによって新規事業を推進しやすいというメリットがあります。
<主な金融持株会社の例>
金融機関以外にも多数の事業会社が持株会社を採用しています。
最近の事例だと、2022年4月よりパナソニックグループが「パナソニックホールディングス株式会社」として持株会社へ移行することが予定されています。
多角化された事業を管理すると共に、積極的な新規事業の展開が可能になるなど、持株会社のメリットを活かして事業を拡大している企業です。
<主な金融業以外の持株会社の例>
日本においては戦後、持株会社は長年認められていませんでした。
持株会社が認められたのは1997年6月の独占禁止法が規制解除された後のことです。
独占禁止法(独禁法)は市場経済において健全な競争を維持するために独占とみなされる行為を禁じた法律です。
元々、持株会社のうち純粋持株会社については独占禁止法(独禁法)によって禁止されていたという背景があります。
1997年6月の法改正によって規制緩和されたことを受けて、日本でも持株会社制を採用する企業が増えました。
1999年に大和証券グループが日本で初めて持株会社を採用し、その後多くの企業が持株会社を利用した企業経営を進めています。
企業は設立時、「定款」に企業の経営目的を明記します。
持株会社においては、定款の目的に持株会社であること、すなわち子会社の株式を保有することによって事業活動を支援することを記さなければなりません。
持株会社について、いくつか事例を挙げながら運用の実態を見ていきました。
持株会社を採用するメリットとして、合理的な企業経営を実現できることなどが挙げられます。
日本においても金融機関をはじめとして、大企業の多くが持株会社を採用しています。
多くの大企業が持株会社のメリットを享受しており、持株会社は企業を合理的に経営するうえで選ぶべき選択肢の1つといえるでしょう。