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法定福利費の仕訳に関するポイントを解説!

米国公認会計士 杉山陽祐
法定福利費の仕訳に関するポイントを解説!

法定福利費と法定外福利費をまとめて福利厚生費といいます。今回取り上げる法定福利費は社会保険料等のことで、会社は社員のために負担することを法律によって義務付けられています。社員が負担する保険料もあるため仕訳の際に頭を悩ませる費目です。今回は法定福利費の仕訳に関するポイントについて解説していきます。

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法定福利費として計上すべき内容

法定福利費を計上する際は、「福利厚生費」ではなく、「法定福利費」という勘定科目を使います。

法定福利費とは、会社の社員の福利厚生のために拠出される費用の中で、法律によって予め決められている費用を指します。

以下のような費用が法定福利費に該当します。

・雇用保険
・労災保険
・厚生年金保険
・健康保険
・介護保険

保険の種類によって、会社側と社員側でそれぞれの負担割合が異なります。法定福利費は一般的に非課税ですので注意しましょう。

福利厚生費の中には法定外福利費もあります。法定外福利費は法定福利費とは違って、法律によって支払いが義務付けられておらず、会社独自で決めることができるものですが、課税と非課税の両方がありますので注意が必要です。

法定外福利費には様々な種類があります。
以下のようなものは多くの会社で取り入れられているのではないでしょうか。

・交通費
・結婚祝い金
・出産祝い金
・住宅手当
・社員旅行
・残業した際の夜食代

取り入れられている法定外福利費は会社によって違いますから、社員にとって会社の特色を見る上では大事な視点になりますね。

法定福利費は売上原価?販管費?

法定福利費は、損益計算書上においては、製造原価を通して売上原価に組み入れられるものもあれば、販売費及び一般管理費として一般的な経費扱いにするものもあります。

どちらに計上すべきかは、社員に対する給与支払いが製造原価内の賃金として支給された社員に対するものなのか、もしくは製造原価外の給与として事務職等の社員に支給されたものなのかによって変わってきます。前者であれば製造原価を通して売上原価に計上することになりますし、後者であれば販売費及び一般管理費として計上することになります。

法定福利費の計上タイミング

法定福利費は会社負担となる部分と社員の本人負担となる部分がありますので注意が必要です。法定福利費は当月分を翌月末に納付することになっています。
法定福利費を計上するタイミングは会社における仕訳の計上方法によって変わってきます。

社員への給与支給時に、社員の本人負担分の法定福利費を預り金勘定として処理せず法定福利費勘定のマイナスとして計上し、実際の法定福利費を納付した際に会社負担分と社員負担分の両方を一度に法定福利費勘定にて計上する方法があります。

もしくは社員への給与支給時には法定福利費の社員の本人負担分を預り金勘定として処理し、実際に法定福利費を納付する際に、会社負担分は法定福利費勘定として計上し、社員負担分は預り金勘定を戻す形で計上する方法もあります。

いずれの場合も法定福利費の会社負担分が発生月の翌月に計上されますから、発生主義を採用している場合は月末に会社負担分を未払金計上する必要があります。
もし会社での給与支給時に法定福利費の社員本人負担分の前月分を徴収している場合は、決算時に一ヶ月分の未払い計上が必要となりますので注意が必要です。

では次に具体的な仕訳の形を見ていきます。

法定福利費の仕訳例

法定福利費における会社負担分は法定福利費勘定で処理し、社員の本人負担分は法定福利費勘定もしくは預り金勘定(立替金勘定でも可)で処理するのが基本です。
発生主義をベースに、それぞれの場面における仕訳を具体的に紹介します。

給与発生時

社員の給与が50万円、社会保険料が5万円の場合(預り金勘定を使用)

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
給与 500,000円 普通預金 450,000円
預り金 50,000円

月末時

法定福利費は当月分を翌月末納付ですから、会社負担の当月分を月末に計上する必要があります。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
法定福利費 50,000円 未払金 50,000円

法定福利費納付時

法定福利費を実際に納付した際は、社員から預かっていた分の預り金と会社負担としていた未払金を計上します。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
預り金 50,000円 普通預金 100,000円
未払金 50,000円

簡便的な仕訳方法

預り金勘定を使うことで多くの仕訳を計上することになり経理業務が複雑になります。そこで、預り金勘定を使用しない方法を紹介します。

(給与支給時)
社員の給与が50万円、社会保険料が5万円の場合

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
給与 50,000円 普通預金 450,000円
法定福利費 50,000円

(法定福利費納付時)
法定福利費納付時に会社負担分および社員負担分の両方をまとめて法定福利費勘定にて計上します。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
法定福利費 100,000円 普通預金 10,000円

ただし、この仕訳方法を使用する場合は、法定福利費を実際に納付するまでは法定福利費が正しく計上されないため、決算時には調整が必要になることに注意しましょう。

決算時

前述の調整とは別に、社員への給与支給時に天引きした法定福利費が前月分である場合は、決算時に一ヶ月分の法定福利費の未払金計上が追加で必要になりますので注意してください。

まとめ:法定福利費のポイントを理解して正確に仕訳しよう

いかがでしたでしょうか。法定福利費には様々な種類があり、会社負担および社員負担があるなどややこしい費目の一つです。仕訳の方法も複数ありますので会社の事情に合わせて適切に仕訳を計上するようにしてください。

この記事を書いたライター

商社勤務中に米国公認会計士(USCPA)のライセンスを取得。2015年からフィリピンに赴任。フィリピンにて日系企業を中心に会計税務のアドバイザリー業務に従事。日系企業のフィリピン投資、工場設立、各種ライセンス取得支援など幅広い業務に携わる。
カテゴリ:業務内容

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