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【公認会計士が解説】領収書に印紙が必要な場合とは?

公認会計士・税理士 金森 俊亮
【公認会計士が解説】領収書に印紙が必要な場合とは?

読者の方で、経理業務をされていて領収書を発行する業務に従事されていらっしゃる方も多いのではないかと思います。
その中で、領収書に印紙を貼るケース、貼らないケース、色々と混在していて分かりづらいのではないかと思います。今回の記事では、なるべく噛み砕いて記事にしたいと思います。

なお、領収書に印紙を貼るケースというのは多くはありません。また、該当したとしても、その他の条件が組み合わさることで、不要となることもあります。その不要となるケースがたくさんあるため、そちらの解説に力を入れていきたいと思います。

領収書に印紙が必要なケース

まず、初めに領収書が必要になるケースです。まずは、こちらに当てはまるかを確認してください。
株式会社や合同会社等の会社であったり、または個人事業主の方で、商品を販売したり、サービスを提供して得る売上が5万円以上かどうかを確認してください。なお、この5万円というのは、消費税と分離して領収書に記載している場合は、税抜き金額になります。

5万円未満であれば、印紙は必要ありません。

まずは、ここから判断しましょう。多くの領収書は、この基準で印紙は不要と判断されるのではないかと思います。また、クレジットカードでの支払いに関しては信用取引であり、金銭の受取書に該当しないことから、印紙は不要です。

なお、5万以上の領収書に印紙が不要になったのは、2016年4月1日以降です。それ以前は、3万円以上の領収書に必要でした。そのため、それ以前の領収書で5万円未満のものに印紙が貼ってあっても、それは誤りではありません。
その上で、次のような場合は、印紙が不要とされていますので、確認してきましょう。

印紙が不要な場合とは

印紙が不要な場合は、課税物件表に記載されています。その中の一つに上記で挙げた5万円未満のものがあります。それ以外でも営業に関しない領収書は印紙が不要と言われています。

営業に関しないとは

営業とは、印紙税法では、具体的に定められていません。そのため、商法を参考にします。商法を参考にすると、以下のような場合は営業に関しないと判断されます。

公益財団法人、公益社団法人、学校法人などの公益法人が発行する領収書

これらの法人が自身の法人の目的のために必要な資金を得るために商行為を実施しても営業とは認定されず、印紙は不要です。

特定非営利活動法人(いわゆるNPO法人)が定款の定めにより、利益金また

は剰余金の配当又は分配ができないとしている場合
これらの場合も、当該法人が行う活動は営業とは認定されず、印紙は不要です。

清算中の会社で裁判所から選任された破産管財人等が作成する領収書

清算中の会社で裁判所から選任された破産管財人等が、自身の名義で作成する領収書は営業に該当しないとされています。しかし、清算中の会社であっても通常の商行為を行い、その会社名義で発行する領収書は、印紙が必要となります。

個人が家事用財産を譲渡等した時に作成する領収書

自身が家庭で使っていたものをメルカリ等で売却したような場合です。この場合に領収書を発行したとしても、営業に該当しないため、印紙は不要です。

医師等が発行する領収書

医師、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、保健師、助産師、看護師、あん摩・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、獣医師等が行う診療行為等は営業に該当しないことから、印紙は不要です。

士業が個人事業主として作成する領収書

弁護士、弁理士、公認会計士、計理士、司法書士、行政書士、税理士、中小企業診断士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、建築士、設計士、海事代理士、技術士、社会保険労務士等が自身の業務において作成する領収書も印紙は不要です。

なお、監査法人や税理士法人等、法人として作成した領収書は、法令の定めにより利益の配当をすることができるものに該当し、営業に関するものとして、5万円以上の領収書は課税文書となりますので、ご注意ください。

農業従事者等が作成する領収書

店舗その他これらに類する設備を有しない農業、林業又は漁業に従事する者が、自己の生産物を販売する場合に発行する領収書も印紙は不要です。

特定の先生と呼ばれる方が作成する領収書

茶華道の先生が謝金をもらって作成する領収書、大学教授等が謝金・講演料・原稿料について作成 する領収書は印紙が不要です。

公益法人等が作成する領収書

公益認定を受けた公益社団法人、公益財団法人、学校法人、社会福祉法人、宗教法人等が実施する業務のものは例え収益事業であっても領収書に印紙は不要です。

一部の条件を満たした一般社団法人、一般財団法人が作成する領収書

法令の規定又は定款の定めにより、利益金又は剰余金の配当又は分配をすることができない一般社団法人・一般財団法人は営業者として認定されないため、主駅事業に関する領収書であっても印紙は不要です。

一部の目的の人格のない社団の作成する領収書

公益及び会員相互間の親睦等の非営利事業を目的とする人格のない社団が作成する領収書は印紙が不要です。
なお、上記を目的としない人格の社団において収益事業に関して作成される領収書は印紙が必要です。

会社以外の法人で、利益金または剰余金の配当又は分配のできない法人が出

資者との間で作成する領収書

会社と株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社を指します。一部の条件を満たした一般社団法人等でも触れましたが、その他の会社以外の法人であっても、発行する領収書では印紙は不要です。

例えば、信用金庫等の各種の金融機関や農業協同組合等の組合等が該当します。
なお、対象は出資者であるため、出資者以外との間で作成する領収書は印紙が必要です。

医療法人の病院等が作成する領収書

医療法人が作成する領収書は営業に関しない領収書とされていますので、印紙は不要です。
一方、病院は、医療法人以外も保有しています
例えば一時期話題になった旧東芝病院等、一部の大規模な株式会社は従業員の福利厚生を目的として、病院を保有することがあります。これら、営利法人が経営する病院や営利法人組織の病院等が作成する領収書は、営業に関するものになりますので、5万円以上の領収書であれば、印紙が必要です。

以上が営業に該当しない場合の例示になります。
色々なパターンがありますが、一部の法人格や業種によって制限をされている場合が多いため、自社がどうかを判断することで、対応が可能かと思います。
次は、印紙が必要かどうか少し判断に迷うケースについて書いていきます。

会社以外の法人で、利益金または剰余金の配当又は分配のできない法人が出
資者との間で作成する領収書

イレギュラーケース!こういった場合は印紙が必要です。

最終確定金額ではなく、仮受の領収書の場合
前受金等を収受する際に、仮受の領収書を発行する場合もあるかと思います。その場合においても、領収書の定義を満たしますので、5万以上であり、営業に関するものであれば、印紙は必要です。

ポスレジから印刷される領収書

ポスレジから印刷される領収書、またはその他仕切書等の名称が付されていても、領収書に該当し、5万円以上の場合は印紙が必要です。

デビットカードによる支払いでの領収書

即時決済型のデビットカードの場合は、金銭の受け取りに該当するため、5万円以上であれば、印紙が必要です。しかし、即時決済ではなく、後日決済の場合は、クレジットカード同様、金銭の受取書に該当しないため、印紙は不要です。

その他金銭の受取について記載した文書

領収書という名称でなくとも、以下のような場合は5万円以上の場合は印紙が必要になります。

外商等が得意先に営業に行き、その場で金銭を受領した際に発行される文書
銀行振込があった際に振込済みを確認する文書
取引当事者同士で発行する入金通知書、当座振込通知書、当座振込報告書(銀行が発行する場合は対象外)

これも特殊な場合ですが、こういった書類を発行している会社では、注意が必要です。

請求書や納品書に代済等を記載している

請求書や納品書に対して、金銭の受取もしたことを示すことを記載していた場合も領収書として取扱われます。具体的には、「代済」「相済」「了」といった文言が付されていると該当します。
あまり実務上では、見たことはありませんが、こういった取引慣行を行なっている会社では注意が必要です。

領収書の印紙税額

最後に領収書に添付する印紙税額についてです。
領収書に添付する印紙は領収書に記載される金額に応じて増額していきます
具体的には以下の通りです。

領収書に記載されている額 印紙税額
5万円以上100万円以下 200円
100万円超200万以下 400円
200万円超300万以下 600円
300万円超500万以下 1,000円
500万円超1,000万以下 2,000円
1,000万円超2,000万以下 4,000円
2,000万円超3,000万以下 6,000円
3,000万円超5,000万以下 10,000円
5,000万円超10,000万以下 20,000円
10,000万円超20,000万以下 40,000円
20,000万円超30,000万以下 60,000円
30,000万円超50,000万以下 100,000円
50,000万円超100,000万以下 150,000円
100,000万円超 200,000円
受取金額の記載のないもの 200円

実際に印紙を貼る際の参考にしてもらえれば幸いです。

まとめ

本日の記事は以上となります。
まとめますと、まずは領収書が5万円以上であるかどうかをご確認ください。ほとんどの場合は、ここで対象から外れると思います。

その上で、営業に関しない行為であれば、印紙が不要になります。営業に関しない行為は、組織形態に帰属する場合がほとんどです。そこの要件に該当をしなければ、ほとんどの場合は印紙が必要になると考えていただけると良いと思います。

また、領収書という文言でなくとも、印紙税法上では、領収書として取り扱われる場合があります。
自社の取引慣行を見直していただき、領収書に該当するか否かは慎重に判断してもらえると良いと思います。

さらに、今回の記事では印紙税の細かな点については触れずに記事にしました。印紙税の基礎については、ヒュープロマガジン内の記事にありますので、詳しくはそちらをご参照ください。

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この記事を書いたライター

公認会計士・税理士。大手監査法人で10年、監査とアドバイザリー業務を経験し2020年7月独立開業。現在は会計コンサル業務を中心に業務を行い、徐々に税務業務を開拓中。小規模監査法人パートナーも兼務。多摩地域を盛り上げたいと思っている。
カテゴリ:コラム・学び

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