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税理士業界を盛り上げたい!そんな思いで独立に至った税理士柏村氏の軸をぶらさないキャリアを紐解く!

HUPRO 編集部
税理士業界を盛り上げたい!そんな思いで独立に至った税理士柏村氏の軸をぶらさないキャリアを紐解く!

大学卒業後、税理士試験3科目合格した後にKPMG税理士法人に入社。その後、税理士資格を取得して総合商社丸紅への出向を経て、三菱UFJフィナンシャル・グループへの入行。独立系コンサルティングファームのシンガポール支社を経て、2021年に日本帰国後、総合系コンサルティンググループ、株式会社Leads&CompanyおよびL&C税理士事務所を設立された税理士の柏村 光洋氏。今回は柏村氏の今までのご経歴とキャリアに対する考え方、今後のビジョンについて、HUPRO編集部が伺いました。

【ご経歴】

2010年 KPMG税理士法人(M&A / グローバル・ソリューションズ部門)
2013年 丸紅株式会社(経理部税務課および国際税務課、出向)
2016年 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ財務企画部税務室(Global Tax Manager)
2016年 株式会社三菱東京UFJ銀行(現 三菱UFJ銀行)財務企画部主計室(Manager)
2019年 独立系コンサルティングファーム(シンガポール)
2021年 株式会社Leads&Company 設立
2021年 L&C税理士事務所 開業

コンサルタントを目指して税理士に挑戦

―税理士を目指そうと思ったきっかけを教えてください。

大学はもともと理系で、経営工学といって、経営に対して数理的にアプローチする学科に在籍していました。当時は、三木谷社長とか堀江貴文さんとかがメディアに頻繁に出始めた頃で、M&Aとかが流行った時代でした。

そういった流行もあり、漠然と経営コンサルタントとかM&Aアドバイザーに憧れを抱いて、卒業後は大学院に進学しようと考えていました。ですが、コンサルタントとして長期的に働くためには、一つの軸・強みを身に着けることが効果的ではと考えるようになり、資格取得を検討するようになりました。

当時、今から大学に入りなおして弁護士を目指すか、あるいは会計士や経営コンサルタントも考えたのですが、最終的には会計・税務領域を主軸とするため、税理士を目指すことに決めました。

税理士事務所の中でも、BIG4であればよりコンサルタント業務に近い仕事ができると考え、最終的に選んだのがKPMGのM&A / Global Solutionsという部署でした。国内外のM&Aや大手上場企業の税務顧問・申告業務、国際税務案件をメインで担当していました。

コンサルタントを目指して税理士に挑戦

―税理士資格を取られたのはいつですか?

大学卒業後、税理士試験の勉強に専念しました。卒業した年に簿記論及び財務諸表論に一発で合格して、翌年は法人税法を取得し、そのままKPMGに入社しました。KPMGには約7年間在籍したのですが、M&Aや上場企業へのセカンドオピニオン・意見書作成業務などを通じ、租税法をしっかりと学びたいという思いから、働きながら会計大学院に進学し、そこで科目免除になり税理士資格を取得しました。

―大学生のとき周りで会計士を目指す方も多かったと思うのですが、そこは比較 されましたか?

やはり比較はしました。最終的に税理士を選んだ理由は「立場の違い」です。 監査 業務に比べ 、コンサルタントとしての税理士業務は、よりお客様の立場に立って、ともにチャレンジするという役割になります。それが私の中で一番の決め手でした。当初は、大学卒業後に大学院へ進学しようと考えていて、大学4年生の卒論を書いている時に方向転換 。大学院進学をやめて資格の勉強に切り替えたので、正直時間がなかったです。

大学3年生や2年生から目指すという人は、早い段階で情報収集をすると思うのですが、僕の場合は本当に時間がなかったので、ネットなどで調べるだけでなく、とにかく片っ端から知り合いを当たって、会計士と税理士の実態についてリサーチし、判断しました。

―周りが 就職する中で卒業して1年半勉強に専念することで、不安などはありませんでした?

もちろん、はじめは不安がありました。ですが、不安を払拭するためにとにかく行動しました。当時は髪もセットしないし飲み会も行かない。服装も気にならないようにするため、同じ洋服3着くらいをいつも着まわして(笑)、勉強以外のことを考えないように徹底した生活を送りながら予備校で勉強をしていました。

簿財は大学4年生の2月末から本格的に勉強したので、8月の試験本番まで実質5カ月しか勉強していません。簿記すら大して勉強したことがなかったので、最初はとにかく分からないことだらけでした。

参考書を読んで、疑問が湧いたら些細なことでもそれを書き留めておいて、あとから先生に全部まとめて質問していましたね。特に、集中力が落ちる夕方ごろに先生のアポを取っておいて、その時間に質問攻めにしていました。

―法人税に合格したら就職しようということは決めていましたか?

そうですね。元々学生時代に受験に失敗したことがきっかけで、受験というものに対して苦手意識を抱いていたことから、とにかく早く受験生活から抜け出して実務につきたいという思いは強かったです。その中で、当初からBIG4のM&A、コンサルティングの部署に行きたいという思いが強かったので、とにかく簿財は早々に合格して、法人税法をマスターして、早く社会に出るということを目指していました。

鍛えられたコンサルティングファーム時代

―KPMGに入られて、どのような仕事をされましたか?

当時の部署は、KPMGの中でも特に忙しいと言われている部署でした。当時その部署は、他の部署から独立して初年度だったため、実質的に初めての新卒採用が私の代でした。

一言で言うと、徹底的にしごかれましたね(笑)。例えば、M&Aや税務デューデリジェンスを担当するなら、申告書を見て直感的に・瞬時に間違いやポイントを見分けることが当然であり、その先・その裏を見据える力を求められます。「隣の部署の同期の2倍仕事して、3倍成長するように」と入社当時の上司から言われたことを覚えています。実現できたかは別として、非常に成長できる環境であったため、非常に恵まれていたと今では感謝しています。

―設立したばかりの時は、チームは何人くらいでしたか?

40人ぐらいだったと思います。6割くらいがM&A、4割くらいが国際税務でした。新卒は私ともう一人だけで、他の方は既存部署でだいたい4~5年程度経験されている方でした。そのため、周りと自分との経験差は圧倒的で、こちらの疑問・ 悩みを理解してもらうことすら難しい状況でした。

―そのような大変な環境の中で、どのように仕事を覚えていきましたか?
とにかく失敗して挫折して恥をかいて、不要なプライドや自信を早々に捨てるよう努めていましたね。余計な荷物を捨てて、とにかくやるしかないという状況でした。

約7年間、KPMGで時間を忘れて仕事をするという生活でしたが、その間の2年間は丸紅への出向も経験しました。

―丸紅ではどのようなお仕事をされていました?

主に内部のアドバイザー業務です。当時だと海外の大手の商社買収 の案件があって、それの税務領域の担当、税務調査担当、社内研修、決算・申告業務を行いました。

その後は、丸紅から転職のお誘いを頂き悩んだこともあったのですが、当初から描いていたキャリアビジョンに立ち返り、1年間と決めてKPMGに戻った後、次のステージとして三菱UFJフィナンシャル・グループに入社させていただきました。

金融業界の最大手へ

―三菱UFJに行かれた決め手は何でしたか?

税理士として丸紅での経験はすごく生きていると思っています。総合商社なので、ほぼすべての分野を取り扱っていることから、幅広い業界を見ることができました。業界が違えば税務論点も異なりますので、出向を通じて様々な業界・多様な事業内容への知見を深めることができたことは、現在の仕事にも生きています。ただし、許認可の問題もあって、丸紅での取り扱いが限定 的だったため唯一深くかかわることができなかった領域、それが金融でした。

そのため、金融の分野はもっと最前線で見てみたいなという気持ちと、今まで外資系文化になれていたため、日本企業の社風を知りたいということもあったので、三菱UFJに転職しました。

―金融の最前線にいらっしゃったのですね。

金融といっても、多種多様な商品・サービスがあります。三菱UFJには、最前線の金融の世界があったと思っています。僕は、国際税務のマネ ージャーとして、主にアメリカとヨーロッパを担当していました。現地 オフィスのメンバーと週に2~3回の 電話会議があったのですが、時差の都合で、アメリカの場合は早朝から、 ヨーロッパの場合は深夜からということもあり、タイムマネジメントが難しいこともありましたが、非常にやりがいのある仕事でした。

ただ、いまほどWeb会議システムが発達していなかったので、電話会議は苦労しました。日本語だとしても音声が聞き取りにくい状況 で、上司を前にコミュニケーションを取るのは、毎回緊張していたことを覚えています。

―色々 とキャリアを積まれた中で、将来こうありたいなどのキャリアビジョンはありましたか?

企業の成長に合わせ たアドバイザリー業務ができるプロフェッショナルになりたいとの考えをぶらさず、1社目のKPMG入社時から一貫してそれに合わせたキャリアプランを選択してきました。

企業の成長ステージに合わせて、プロフェッショナルが提供するサービスも変わらなければならない。であれば、会計税務を主軸としながらも、企業の成長ステージに合わせた周辺領域のコンサルティング業務の経験を積んでいきたい、そして、敢えて厳しい環境に身を置くことで早期に成長したい、と思っていました。

プロフェッショナルとして専門知識を習得するだけでなく、事業会社側の立場や状況 、そして多種多様な業界の実務現場を知り、それに合わせて自己研鑽していくことが重要ではないか、と当初から考えていました。そのため、丸紅への出向を受け入れたり、資金調達から金融商品等を理解するために金融業界へ転職したり、国際税務の専門性を伸ばしつつ英語スキル向上のために海外経験を積んできました。

そして現在は、これからの時代の新しい税理士像・プロフェッショナル像を具現化 するため、心強い仲間と大きな志を武器に、独立をしました。会社設立の初期段階 におけるファイナンス関連の課題 、将来のミドル乃至レイターステージにおけるIPOやM&A、海外進出など、企業における経営課題は、会社の成長ステージに合わせて大きく異なります。

それに伴い、税理士に求められる専門性も多様化 ・高度化していきます。そのため、一つ一つの分野における専門性の追求が重要であることは当然ではあるものの、企業の成長過程を理解し、それに合わせて対応領域を拡大していくことも、ビジネスパートナーとして重要であると認識し、それを実現できる環境を選択してきました。

―柏村さんのなかで今までで大きな挫折経験にはどのようなものがありましたか?

私の場合、学生時代の挫折 、具体的には高校受験の挫折がその後の人生に大きな影響を及ぼしましたね。当時は、学業のほかにも多くの習い事をやらせてもらいつつ、生徒会長や部活動の部長、サッカー地域選抜や書道での日本代表の経験など、興味を持ったことをとことん追求し、 実績と経験を重ね ていたので、受験にも一定程度の自信をもっていました。ですが、結果は失敗。努力することの意味を見失うくらいの挫折でしたね。

もちろん、社会人になってからも多くの失敗や経験をしています。仕事の努力がクライアントに評価して頂けなかったり、日本親会社の代表としてヨーロ ッパ地域会議に出席した際に、各国代表から英語で質問攻めにあったりと、恥や失敗は数えられないほどたくさんあります。ですが、挫折とは思っていませんでした。学生時代の挫折を経験しているからこそ、 折れることなく何度でも立ち向かい、後からでも取り返せば「挫折」ではなく「成功」に繋げることができると考えています。このように考えられるようになったのも、過去の挫折のおかげかなと。今では「挫折」ではなく「自慢できる経験」だったと思っています。

今後のビジョンと税理士業界の魅力

―これからのキャリアビジョンを教えてください。

私たちは、 パートナー型の総合系コンサルティングファームを目指していて、その中の一つが税理士事務所ということになります。私たちは、会計・税務・財務といったファイナンス領域における専門知識 には、大きな可能性があると信じています。ですが、これら領域は、企業経営における指標の一つでしかありません。ファイナンス領域を軸としつつ、人材やマーケティングなど、企業成長のために総合的に支援できるコンサルティングファームを目指していきます。

―今回開業しようと思ったきっかけを教えてください。

きっかけは色々ありますが、一番に挙げられる理由は「憧れられるプロフェッショナル像を提案したい」と考えたことです。近年、税理士試験の受験者数の減少、20代30代の若手税理士が少ないことなど、業界の今後に課題認識を持たれている税理士先生はたくさんいらっしゃると理解しています。それだけでなく、絶えず変化と進 化が求められる現代のビジネス環境下において、既存の税理士像に疑念を抱いていらっしゃる経営者の方々とも多くお会いしてきました。

その一方で、私自身は 「税理士 」という資格・知識を武器に、これまでのキャリアを構築してきましたし、自信を持っておすすめできる資格・専門領域であると考えています。そうした考え・想いから、ファイナンス領域、財務・会計・税務のプロフェッショナルに対して、憧れに思ってもらい、この業界を目指す人が少しでも増える 環境を作れればと考え、開業を決意いたしました。

―税理士資格の強みは何だと思いますか?

「高度な専門性」と「企業経営に一番身近なポジションであること」だと思います。弁護士や公認会計士など、税理士資格そのものを取得できる方法は複数あります。ですが、専門性が高く、かつ、キャッシュフローに直結する領域であることから、実務経験を通して学ばなければ、真に価値のあるサービス提供は難しい分野でもあると考えています。

また、クライアント様である企業にとっての税理士の役割・ポジションも、税理士資格の強みの一つと考えています。特に、中堅中小企業において、「まず頼るべきは税理士」と考えていらっしゃる経営者の方も少なくないと思います。これは、税理士業界に携わられるすべての先輩方が作り上げられてきた税理士の価値であり、強みだと思います。だからこそ、企業の重要情報へも比較的容易にアクセス可能であり、何でも 相談してもらえる存在なのだと考えます。そうした立ち位置・機会をチャンスに変え、プロフェッショナルとして企業成長ひいては社会全体の成長を推進する存在になれると信じています。

―この業界では転職 も含めてキャリアに迷われている方もたくさんいらっしゃると思いますが、どのように解決するのが良いと思いますか?

その方が「自分の強み・興味関心のある領域がはっきりしているか否か」で分けられます。「まだ自分の強みが見つかっていない」という方、「あれもこれも出来るようになりたい」との思いが強い方は、きっといま少し新しい経験を積める環境に軸を置いて検討される方が良いかなと考えます。

単純な経験不足というケースもあると思いますが、実は周りから見ると強みであることも、経験が足りないから気づいていないだけかもしれません。 例えば、知識が足りず周りに迷惑をかけてしまっていると悩んでいる方もいるかもしれませんが、 実はプレゼン力やコミュニケーション力に長けているため、営業やプロマネとして 能力を開花されるケースも往々にしてあると思います。

また、 色々な業務を通じて、自分が嫌じゃない・楽しいなと思える領域に出会えたら、それは必然的に強みになっていくと思います。その役割 、立場、仕事に対して楽しいと思えることは、それだけで強みだと思いますね。

特に、業界での経験年数が少ない方は、色々なことにチャレンジして、失敗して挫折して、とことん悩むべきだと思います。だからこそ、ちょっと背伸びをして新しいこと・難しいことにチャレンジすることが、結果としてそのあとのキャリア選択に有効かと考えます。そして、自分の強みややりがいが見つかった方は、今までの経験・自分 の強みを活かせるフィールドを選ぶべきだと思います。

やはり、これだけ情報過多な社会にいると、「あれもやりたい」「 これも勉強しないといけない 」というように、他の人ができることは何でもできるようにならないといけないと思ってしまいがちかと思います。ですが、分野を広げすぎると、各分野で結果を出し続けることも非常に難しくなります。それに 現代では、PCやスマ ホで検索ツールを使えば、誰でもいつでも気軽に専門知識に触れることができるため、単純に「知っている」ということでの提供価値 は、縮小していく可能性があると危惧しています。

であれば、自分の価値が発揮される環境に身を置いて、軸となる自分の強みを最大化することが大切だと思います。そうすることで、成果が出て自ずと評価 も上がりますし、自分の存在意義にも気づけると思います。そのあとのキャリア形成においても、軸さえあればそれを強みに守備範囲を広げていくことも可能になると考えています。

―本日はお話を聞かせていただきありがとうございました。

今回お話を伺った税理士 柏村光洋氏が代表を務める株式会社Leads & Companyのホームページはこちら

この記事を書いたライター

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