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「身近な人を守るため」苦境の中税理士試験を諦めずに走り抜けた原動力。税理士法人ゆびすいの税理士矢部氏が語る税理士としてのやりがいと苦悩。

HUPRO 編集部
「身近な人を守るため」苦境の中税理士試験を諦めずに走り抜けた原動力。税理士法人ゆびすいの税理士矢部氏が語る税理士としてのやりがいと苦悩。

税理士法人ゆびすいで働く矢部氏は、医療・介護関連を得意とする税理士。ライフステージの変化に柔軟に対応しながら、見事税理士試験合格を果たした経緯をお持ちです。今回は、税理士を目指したきっかけをはじめ、試験勉強、ゆびすいへの就職、今後のビジョンなど、様々なお話をHUPRO編集部が伺いました。

2003年3月 同志社大学商学部商学科を卒業(22歳)
2003年3月~2004年9月 無職(短期アルバイトのみ)
2004年9月 税理士法人ゆびすいに入社(大阪支店に配属)(23歳)
2009年12月 税理士試験に合格(29歳)
2011年1月 税理士法人ゆびすい岡山支店長(30歳)
2015年1月 再び大阪支店へ(34歳)
2019年1月 京都支店開設に伴い、税理士法人ゆびすい京都支店長(38歳)~現在に至る

「身近な人を守りたい」税理士を目指すきっかけ

ー税理士になるきっかけについて教えてください。

両親は会社員、親族は会社員と公務員しかいない家庭環境で育ちました。そんな中でも高校生の頃から漠然と士業に憧れを持っていました。なぜ憧れがあったかと言うと、不況により世間的にリストラの動きも多い時代で、大企業のサラリーマンでも安泰というわけではないことが実感値としてありました。実際に父が勤める企業でもそういう動きがあったので、より痛感していました。そんな状況下でも、家族や身近な人をなんとか守りたい、という思いを持つようになりました。そこで「大企業に入ることだけが全てじゃない。資格を生かした仕事が適している」と考えました。

大学では商学部に入学しました。周囲はほぼ全員、会計士を目指していましたが、経営者との距離が近く、「人から直接感謝される仕事がしたい」という理由から私は税理士を選択しました。立派な理由はなく、動機なんて無きに等しいですが、「人から直接感謝される仕事がしたい」という点は、今も私の原動力です。

ー学生時代から目指されていたのですね。勉強は順調に進みましたか?

正直、試験勉強を甘く見ていたので、すべてが大変でした。税理士資格の専門学校へ通う人の多くは日商簿記2級を取得しているので、友人と一緒に勉強し、受験しましたが、最初の受験は不合格。完全に勉強不足でした。その後無事に日商簿記2級は合格したものの、自分の実力不足を思い知らされました。

簿記論や財務諸表論など、在学中に一発合格する友人が多かったのですが、私は初年度の合格を逃し、翌年も意気込んだものの簿記論は不合格。国家試験の難しさを思い知りました。

今から考えるとその当時、税理士になることを軽く考えていた節がありました。しかし、試験に取り組む中で、とんでもなく難しいことにチャレンジしていると実感してからは、より真剣に取り組みました。

ー非常に勉強に苦労されたんですね。

そうですね。大学卒業後には、就職しようとも考えましたが、そこから1年半ほど勉強に充てています。科目免除のため大学院へ行く友人もいたのですが、私自身は修士に興味はなかったので税理士試験の官報合格を目指し、勉強をひたすら続けました。

専門学校に通う勉強漬けの毎日を約一年半続けました。その時印象に残っているのは、お店で会員登録などをする際に申込書を書く場面で「職業欄」に書くことがないことです。学生ではなくなったので、無職という現実が少しきつかったです。

友人たちは一般企業に就職しているので、そんな現状に孤独感を抱えながらも「やるしかない」と覚悟を決めました。

想像を超える受験の苦悩・家庭との両立

ーその期間は精神的に相当苦しかったと思われますが、どう乗り切りましたか?

合格した時のことを想像しながら、毎年受験する試験を確実に合格できるよう意識していました。あとは日々規則的にこなすこと。少しでも迷うと動けなくなってしまったり、ヘタに息抜きをしてしまうと走れなくなったり、という感覚がありました。毎日必ず、ほんの少しでも勉強することを重視していました。勉強に打ち込める環境があったことには感謝しかありません。

ー当時の原動力はなんでしたか?

私には、就職している友人の中で自分だけ無職で勉強している状況に迷いが出た時、立ち返る原点がありました。それは士業を漠然と考えていた高校生頃の思いです。「家族や近い人を守っていけるだけの力がほしい」これが原動力となっていました。

また、単純に仕事がしたいという強い思いも持っていました。
周りの友人たちが着実に就職しキャリアアップしていく中で、たまに顔を合わせると話題にあがる仕事の話。それが自分には全くないことも気にしていましたし、勉強しかしていない今の自分は、社会貢献できていないという思いが強かったんです。仕事を通して社会の一員となり、貢献していきたいと考えていました。

ーその後勉強と両立しながら働いていくことになったんですね。相当大変だったのではないでしょうか?

働きながらの税法科目の受験は想像以上に大変でした。実務は覚えることが多く、平日は疲れ果てていましたので、専門学校は土日に通いました。
片道一時間半くらいの通勤の時間は、暗記の勉強に充てていました。
また、私生活は27歳で結婚(当時4科目合格)し、その年末に長男が生まれました。
最後の1科目(相続税)合格を目指し勉強していたときは、年子の次男を妊娠中の妻を尻目に、長男を背中におんぶしながら、必死に理論を覚えていました。

直前の模試では、D判定。正直厳しい状況でした。

ー家庭との両立。そんな中で見事合格。どんなお気持ちでしたか?

合格を知った瞬間は、地下鉄のホームで涙が溢れたのを覚えています。本当に本当にここまで頑張ってよかったと。また当時の上司に合格の報告をしたとき、「これでやっと不安そうな顔を見なくて済む。おめでとう!」と言われました(笑)毎年毎年、試験前に長期の休みを頂いていたので、上司もホッとしたのではないでしょうか。トータル9年間という長い時間をかけました。本当に合格できるのか不安になることも多かったですが、支えてくれる妻や家族を見て、「家庭や身近な人を守りたい」という気持ちがより強くなり、最後は合格できたと改めて感じました。

ー税理士資格を取って一番変わったと思うことはありますか?

変わったことは数え切れないほどあります。一番変わったのは、税理士だから携われる仕事が増えたこと。外部講演に呼ばれることも増えましたし、freee株式会社さんとインターネットのコンテンツ(WEB記事やYou Tube)制作のお手伝いと広報活動もしています。通常業務の合間を縫っての仕事なので大変ではありますが、これも一種の社会貢献だと思って取り組んでいます。

資格の一番の強みは、資格は自分から離れない特別な道具だということです。何が起こるかわからない世の中にあっても、失ったり奪われることはない。子供の時に感じていた不安定な世の中に対応できることのが資格の一番の強みだと実感しています。

税理士法人ゆびすいで働くやりがい

ー入社理由を教えてください

当時、内定を頂いていた会計事務所は、地元の京都の事務所も含めて数社有りました。
しかし、どこも代々創業者親族が代表を務めている事務所でした。その中でも、ゆびすいは自由な社風を大事にしていて、私自身は自由・自治・自立を重んじる中高大一貫校出身でしたので、自分とフィットする感覚が強かったです。
実際、現在の京都支店も、私の企画が通り開設となりました。場所選びから事務所レイアウトまで一から関わっています。役員会でプレゼンし承認を得る必要はありましたが、比較的自由にさせてもらっています。従業員の提案で新規拠点を開設してしまう税理士法人なんて、日本中どこ探してもないのではないでしょうか。

ー普段の仕事内容を教えてください

税務や会計のアドバイス、決算書、申告書の作成などをしています。また、オーナー個人の財産周りの相談なども多いですね。他にも外部講演のレジュメ作成や、販促活動も行っています。京都支店長として部下の評価や目標設定などのマネジメントや支店の業績管理もしています。

お客様は医療・介護関連が中心です。
この業界は、運営できる組織も株式会社、医療法人、社会福祉法人、NPO法人、社団法人・財団法人と多岐にわたり、税法はもちろんのこと、各法人が縛られる法律すべてに精通していなければなりません。そのため日々学び続けていいます。

ーどんな時にやりがいを感じますか?

やはり感謝された時はやりがいを感じます。長年解決できずにその法人が抱えていた悩みなどを、自分の提案で解決に導けた時は、更に嬉しく思います。

特に、自分独りでは解決できない問題に対して、ゆびすいの色々な部署と協働しながら解決まで持っていけたときは格別です。計6年かけたプロジェクトが成功したときは感動しました。税理士を選択した理由である「直接感謝される仕事」が叶った瞬間でしたね。

ー逆に苦労されることはありますか?

提案が容易に受け入れていただけない時は、苦労することもあります。アクセルを踏んで上を目指す経営者は多く、それも必要なことなのですが、時には誰かがブレーキをかけることも必要だとも思います。税理士は税に関する相談に乗るだけでなく、会社の経営にまで携わる大事な仕事です。経営に口を挟むわけですから、口うるさいと思われることもあります。しかしお客様のことを考え、疑問に思う時はしっかりと税理士としての提案をしています。
否定されることも少なくはないですが、いつか何かのきっかけで思い出してもらえたら、としっかり言語化して伝えるようにしています。

人間としての魅力溢れる税理士を目指して

ー5年後10年後のビジョンを教えてください

資格に恥じぬ知識と品格を持ち合わせた人に成長することを目指しています。税理士だからという理由ではなく、「専門家としての矢部さん」として仕事を頼まれるようになりたいです。

販促に行くと「税理士なんて誰が担当になっても、やってくれることは同じ。あなたに頼んだら劇的に税金が少なくなるとか、税務署が来なくなるとか、そんなわけないでしょ?」
と厳しい言葉をいただくことがあります。事実そうですし、知識だけならAIやインターネットの情報のほうが優れている側面もあります。それでも、「何かあればこの人に聞こう」と思ってもらえるような人間としての魅力が溢れる税理士になりたいです。

ー税理士を目指す方へメッセージをお願いします

この業界に胸を張って挑戦していただきたい。そして飛び込んできてほしいと思います。人の人生に密に関わることができる点は、この税理士という仕事の魅力の一つだと思います。
税理士は形がないサービスを提供しています。形がないからこそ、経営者と一緒に考え、歩み、つくりあげていくことができます。狭い世界のように感じられるかもしれませんが、いつの時代も企業にとって無くてはならない、人生のパートナーのような存在であると考えています。

ー本日はお話いただきありがとうございます。

矢部氏が税理士として活躍されている
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この記事を書いたライター

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