TOB(Take Over Bid:株式公開買付)は、期間や買取株数、価格を公開したうえで、不特定多数の既存株主から証券取引所を通さずに株式を買い取る行為です。TOBの主な目的は相手企業の経営権の獲得ですが、近年は自社株買いに利用する企業も増えています。今回はTOBの流れと手続きについて解説していきます。
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TOBは、金融商品取引法に基づき、以下の流れで行います。これらの手続きは、金融商品取引法に定められた義務となっています。
公開買付を開始するにあたり、買付側企業はまず初めに以下の手続きを行います。
公開買付開始日に、公開買付を開始する旨を公告します。公告内容は、同日に内閣総理大臣へ提出する「公開買付届出書」の記載事項と同一です。公告の方法は、EDINET(*1)もしくは日刊新聞紙掲載のいずれかによるものとされています。
*1 EDINET:金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム
公告を行った日に、「公開買付届出書」を内閣総理大臣に提出します。主な記載事項は、公開買付者の名称、所在地、公開買付の目的、価格、買付け予定の株券の数、期間、買付け条件です。なお、提出をしなければならない日が日曜祝日に該当するときは、その翌日が提出日となります。
「公開買付届出書」は写しを作成し、内閣総理大臣に提出した後直ちに、売却側企業及び金融商品取引所等に送付します。
買付け対象の株式を保有する既存株主に対し、「公開買付届出書」の同一内容に加え、公益または投資家保護のために必要とされる事項を記載した「公開買付説明書」を交付します。
続いて、TOBを受ける売主側企業の手続きです。
売主側企業は、公開買付開始公告が行われた日から10営業日以内に、公開買付に関する「意見表明報告書」を内閣総理大臣に提出します。「意見表明報告書」には、公開買付に関する意見のほか、買付側企業に対する質問や買付け期間延長を求める旨を記載することができます。
「意見表明報告書」は写しを作成し、内閣総理大臣に提出後直ちに、買付側企業及び金融商品取引所等に送付します。
「意見表明報告書」に質問が記載されている場合、買付側企業は「対質問回答報告書」を内閣総理大臣に提出します。
「対質問回答報告書」の提出期限は、写しの送付を受けた日から5営業日以内です。回答の必要がないと判断した場合には、その理由を記載して提出します。
「公開買付届出書」と同様、内閣総理大臣に提出した後直ちに、その写しを売却側企業及び金融商品取引所等に送付します。
公開買付が成立した際に、買付側企業が行わなければならない手続きは以下の通りです。
公開買付期間の末日の翌日に、買付けの内容および結果(買付けの成否、買付け等を行った株券の数等)を公告または公表します。
公告または公表を行った日に、その内容を記載した「公開買付報告書」を内閣総理大臣に提出します。
金融商品取引所に上場している株券等を、発行済み株式数の5%超保有する株主を「大量保有者」といいます。
公開買付が成立し株券等保有割合が5%超になる場合、買付側企業は、大量保有者となった日から5営業日以内に「大量保有報告書」を内閣総理大臣に提出する必要があります。なお、『大量保有者となった日』とは、実務上、公開買付期間の末日とされています。
公開買付開始の公告後、買付企業側がそれを撤回したい場合はどのような手続きが必要なのでしょうか。
公開買付開始公告をした後は、原則として公開買付の撤回はできません。ただし、売却側企業の倒産や災害による多大な損害の発生など、金融商品取引法に定められた特別な事由が生じた場合はこの限りではありません。
公開買付の撤回を行う場合、買付側企業は公開買付期間の末日までにその旨を公告し、「公開買付撤回届出書」を内閣総理大臣に提出する必要があります。
今回は、TOBの手続きについて解説しました。TOBは金融商品取引法により情報開示や各種書類の提出が義務付けられています。記載事項や提出期限などに十分留意し、適切な手続きを行うことが重要です。