消費税の課税区分の判定は、消費税を納めるべき課税事業者の正しい消費税の納税額の計算のために欠かせないものです。消費税の課税区分の判定に頭を悩ませる取引のひとつとして、会費や入会費の支払いがあります。今回は、会費や入会費の消費税の取り扱いについて詳しく解説していきます。
課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超える事業者は、消費税の納税義務者となります。
基準期間における課税売上高とは、個人事業者の場合は原則として前々年の課税売上高のことをいい、法人の場合は原則として前々事業年度の課税売上高のことをいいます。
なお、基準期間が1年でない法人の場合は、原則として、1年相当に換算した金額により判定することとされています。具体的には、基準期間中の課税売上高を、基準期間に含まれる事業年度の月数で割った額に12を掛けて計算した金額により判定します。
また、課税売上高とは輸出などの免税取引を含め、返品、値引き、割戻しをした対価の返還等の金額を差し引いた額です。
消費税を納めるべき事業者に該当をする課税事業者は、原則として、課税売上高により発生した受け取った消費税の額と、課税仕入高により発生をした支払った消費税の額とを差し引いて、納付を行う必要があります。
課税売上げは、商品の売上げのほか、機械や建物等の事業用資産の売却等の事業のための資産の譲渡、貸付け、サービスの提供をいいます。
課税仕入とは、商品などの棚卸資産の仕入れ、機械や建物等の事業用資産の購入又は賃借、原材料や事務用品の購入、運送等のサービスの購入、そのほか事業のための購入等をいいます。事業のための購入であれば、仕入先が免税事業者や消費者の場合でも課税仕入に該当します。
消費税を納めるべき事業者に該当をする課税事業者は、各会計取引について、消費税の課税区分を正しく判断して経理を行う必要があります。これを行わないと、正しい納付すべき消費税の額を計算することが出来ません。
消費税の課税区分は、課税、不課税、非課税、免税の4つです。会計取引はいずれかの区分に該当をします。
課税取引とは、消費税が課税される取引のことをいい、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供が該当をします。国内事業者が行う会計取引の多くはこの課税取引に該当をします。
不課税取引とは、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等の輸入取引以外の取引をいいます。
非課税取引とは、国内において事業者が事業として対価を得て行う取引のうち、課税対象になじまないものや社会政策的配慮から消費税を課税しない取引のことをいいます。
免税取引とは、国外の取引等、消費税が課税されない取引のことをいいます。
不課税取引、非課税取引の具体例については、下記コラムをご参照ください。
消費税の課税区分の判定に頭を悩ます取引のひとつとして、会費や入会費の支払いがあります。
同業者団体や組合などに支払う会費や組合費などが課税仕入れになるかどうかは、その団体から受ける役務の提供等と支払う会費などとの間に明らかな対価関係があるかどうかによって判定します。
会費や入会金の支払先である団体から受ける役務の提供などと支払う会費などとの間に明らかな対価関係があるものは、課税対象となります。
よって、セミナーや講座等の会費は、講義や講演の役務の提供等の対価を得ていることになるため、課税対象となります。
対価性があるかどうかの判定が困難なものについては、その会費などを支払う事業者とその会費などを受ける同業者団体や組合などの双方が、その会費等を役務の提供や資産の譲渡等の対価に当たらないものとして継続して処理している場合はその処理が認められます。なお、この場合には、同業者団体や組合等は、その旨をその構成員に通知するものとされています。
さらに、同業者団体や組合などに支払う入会金も、役務の提供等との間に明らかな対価関係があるかどうかによって判定します。
したがって、ゴルフクラブ、宿泊施設、体育施設、遊戯施設その他のレジャー施設を利用するための会員となる入会金は、役務の提供等との間に明らかな対価関係がありますから、課税仕入れになります。
会費や入会金の支払先である団体の業務運営に必要な通常会費については、一般的には対価関係がありませんので、同業者団体や組合などは資産の譲渡等の対価に当たらないものとして取り扱って差し支えないこととされており、この場合には、その構成員においてはその通常会費は課税仕入れとならず、仕入税額控除の対象になりません。
このように会費や入会費の消費税の課税区分は、名目によらず、支払先である団体から受ける役務の提供などと支払う会費などとの間に明らかな対価関係があるかによって判断を行います。
その性質によって判断が異なるため、経理処理の際には都度留意が必要です。