未収入金は「未収金」ともいわれます。売掛金・未収収益とともに「将来的に金銭を受け取る権利」を表す資産の勘定科目です。未収入金・売掛金・未収収益は、未回収の代金の取引形態や営業活動によるものかどうかでわけられます。この記事では、未収入金について、他の勘定科目の違いを含めて解説していきます。
未収入金・売掛金・未収収益は、いずれも「将来的に金銭を受け取る権利」を表し、貸借対照表の「資産の部」に計上される勘定科目です。
また、いずれも物やサービスの提供が完了しているにも関わらず、未回収となっている代金を示しています。
「それなら同じ勘定科目で良いのでは?」と思うかもしれません。確かに、この3つの違いを明確にしなくても、確定申告に影響を及ぼすことはありません。しかし、未回収のお金がどのような性質のものかをはっきりさせることで、その会社の財務の健全性を示すことができます。まずはこの3つをどのように判別すべきかを見ていきましょう。
未回収の代金から、取引の形態によって、まずは「未収収益」とそれ以外に分けます。
契約に基づく継続的な役務の提供は「未収収益」、それ以外のものが「売掛金」もしくは「未収入金」です。
「未収収益」に当てはまるのは、不動産の貸付による家賃の受取や、金銭の貸付などによる受取利息など。このうち、まだ支払期日が到来していないものを「未収収益」として収益を見越して計上します。
ちょっとややこしいのですが、ここで「未収収益」として処理するのは、あくまで支払期日が到来していないもののみです。もし支払期日到来後も支払いを受けていない場合は「未収入金」勘定を使用します。そのため、実務上では「未収収益」ではなく全て「未収入金」で処理している会社や個人事業主も多いです。
ただし、企業会計では原則として「未収収益」と「未収入金」を区別することが求められており、簿記検定でも違いを問われます。実務上どうあれ、この区分についてはしっかり押さえておきましょう。
次に、未収収益以外に分類した代金を見てみましょう。
こちらは「主たる営業活動」で発生したかどうかで「売掛金」もしくは「未収入金」に分類します。
その事業者の「主たる営業活動」で発生した代金は「売掛金」、それ以外の未回収の代金が「未収入金」です。
本業の売上となる商品や製品、サービスの代金を後から受け取る場合には「売掛金」勘定を使います。建設業では「完成工事未収入金」物流・倉庫業では「営業未収金」など、業界によって勘定科目が異なる場合もありますが、性質は同じものです。なお、売掛金を手形で回収した場合は、勘定科目が「受取手形」に変わります。
売掛金は、貸借対照表では「流動資産」に分類されます。
それに対して、本業以外の売上からなる未回収代金が「未収入金(未収金)」です。例えば、保有する不動産などの固定資産を売却して得た一時的な利益などが当てはまります。
未収金は、回収予定が直前の決算日から1年以内であれば「流動資産」、1年超であれば「固定資産」です。
未収入金・売掛金・未収収益はしっかりと違いを理解したうえで、経理処理を行うことが重要です。その理由はおもに二つあります。
未収入金・売掛金・未収収益は、いずれも「貸借対照表」の資産の部に計上されます。企業の財務状況を表す貸借対照表は、会社が存続するかぎり数字が繰り越されて引き継がれていくものです。決算においては「勘定科目内訳明細書」も併せて税務署に提出します。
税務調査では未払金や売掛金の確認は重要項目の一つです。
特に売上が大きく変動した年は、税務署も内容を厳しくチェックします。申告漏れや誤りがないようにしっかりと管理しましょう。
未収入金・売掛金・未収収益は、融資を受ける時の金融機関においても厳しくチェックされる内容です。
企業の資産・売上が本業から成り立っているのか、もしくはそれ以外から出ているのかどうかが、貸借対照表からわかります。
貸借対照表は、1年限りの書類だけでなく前期や前々期なども併せて確認します。
未回収の代金の区分を明確に計上していない場合、収益の内訳を把握していないと見られ、会計リスクが高いとして融資判定に不利益になりやすいでしょう。
一般的には売掛金を多く、未収金を少なく計上されていることが重要です。
売掛金が大きいということは、営業利益が高いことにつながります。
しかし、売掛金は回収できないリスクがあります。どの取引先にどのくらいの売掛金が生じているのか、また回収スケジュールどおりに回収できているかをリアルタイムで把握するために、取引先別に確認できるように管理しておきましょう。
月の売上に対して売掛金が高すぎる場合は「不良債権」を抱えていると疑われてしまうでしょう。逆に未収金が不当に多いと、不正会計を疑われることもあります。
経理担当者は、未収入金・売掛金・未収収益をきちんと理解し、適切な管理を行うことが必要です。