減価償却は、簿記検定初級でも出題範囲とされている、事業者にとって基本的な会計処理及び必要な会計知識です。なぜ減価償却の会計処理が必要であるのか、それは減価償却を行うことで得られるメリットを知れば理解がしやすくなります。
今回は、減価償却を行うメリットを4つ、詳しく解説していきます。
減価償却とは、減価償却資産の取得に要した金額を一定の方法によって各年分の必要経費として配分していく手続です。
例えば100万円の減価償却資産を取得し、その法定耐用年数が10年であった場合には、取得した年度に100万円の費用を計上するのではなく、100万円を10年で除した10万円を減価償却費として費用を計上することをいいます。
減価償却についての詳細は下記コラムにてご紹介しております。
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減価償却は上記のように費用計上を行いますが、各年に10万円を減価償却費として計上をするよりも、取得した年度に100万円を計上をした方が、会計処理として簡単であることは言うまでもありません。
しかし減価償却を行うことは、いくつかのメリットがあります。そのメリットについてご紹介致します。
減価償却を会計処理に適用する大きな目的として、適切な損益計算を行うことにあり、これが減価償却を適用するメリットでもあります。
会計においては、収益と費用は対応関係にあることが必要です。減価償却資産を取得し使用したことで得られる収益と、その収益の発生のために要した費用は、同時に計上を行う必要があります。
一般的に減価償却資産を用いて収益を期待する場合、その減価償却資産を用いて収益を上げるためには複数年かかります。よってその収益を得るために必要となった減価償却資産に係る費用も、複数年に渡って計上をすることで、収益と費用の適切な対応関係が得られることとなります。
取得した年度に減価償却資産の費用計上を一括で行うと、その取得した年度には費用が多額に計上されますが、収益は減価償却資産を用いて得られた収益の一部しか計上をされません。
例えば、100万円の減価償却資産を取得し、その資産によって得られる収益が10年間、1年あたり20万円であるとします。
この場合、取得した年度に計上される費用は100万円、収益は20万円です。これでは収益と費用の適切な対応関係が会計上では示されません。
一方で減価償却を適用した場合には、取得した年度に計上される費用は100万円を10年の耐用年数で除した10万円、収益は20万円です。そして以降も同様に残りの9年間の各年には費用の10万円と20万円が計上されます。
これが収益と費用の適切な対応関係であり、適切な損益計算及びその表示を可能にすることが出来るのが、減価償却のメリットのひとつです。
上記のように適切な損益計算を行うことは、同時に取得した年度のみに費用負担を重く課すことを防ぐ効果があります。
取得した年度に減価償却資産の費用計上を一括で行うと、その取得した年度に減価償却資産の取得価額の全額が費用となり、その年度の利益が極端に少なく表示され、投資を行った年度という特別な事項があったにも関わらず、業績が悪化したように財務諸表上見えてしまいます。
一方で減価償却を適用し、減価償却資産の価額を長期に渡り費用化させることで、取得価額を耐用年数で按分した後の金額が費用となり、取得した年度の利益が極端に少なく表示されることを防ぐことが出来ます。
極端な利益の減少が財務諸表上で発生しないことも、減価償却のメリットのひとつです。
取得した年度に減価償却資産の費用計上を一括で行うと、取得した年度の課税所得や、そこから算出される税金は少なくすることが出来ます。しかし、翌年度以降は費用として一切計上されなくなることから、翌年度以降の課税所得や、そこから算出される税金を少なくすることは出来ません。
一方で減価償却を適用し、減価償却資産の価額を長期に渡り費用化させることは、一年度当たりの費用計上額は一括で費用計上を行う場合よりも少なくなりますが、長期に渡り各年度の課税所得や、そこから算出される税金を少なくする効果があり、減価償却のメリットのひとつです。
上記のように、減価償却を適用することで長期に渡り各年度の課税所得や、そこから算出される税金を少なくする効果があります。
費用を計上することは節税効果が高いですが、多くの費用の場合、その費用の計上には資金の流出が必要です。
取得した年度に減価償却資産の費用計上を一括で行うと、取得した年度の課税所得や、そこから算出される税金は少なくすることが出来ます。しかし、翌年度以降は費用として一切計上されなくなることから、翌年度以降の課税所得や、そこから算出される税金を少なくすることは出来ません。
もし翌年度以降に思いがけず利益が発生し、節税を行おうと費用計上を考えた場合、消耗品費を計上するために新たに消耗品を購入したり、交際費を計上するために取引先と飲食を行う等、支出を伴う必要があります。
一方で減価償却を適用し、減価償却資産の価額を長期に渡り費用化させることは、取得した翌年度以降に思いがけず利益が発生した場合であっても、耐用期間内は減価償却費が計上をされ、支出を伴わない費用を計上することが出来、これも減価償却のメリットのひとつです。
以上、減価償却を行うメリットについて大きく4つに分けて詳しく解説しました。
上記のように、減価償却を行うことは、事業者にとって様々なメリットがあります。ぜひご参考になさってください。