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士業とは自由業だ。自由に働き思う存分に力が出せるファームを作りたい。代表社員杉山氏が語るこれからのビジョン。

HUPRO 編集部
士業とは自由業だ。自由に働き思う存分に力が出せるファームを作りたい。代表社員杉山氏が語るこれからのビジョン。

東京都港区(品川駅)のあいわ税理士法人代表社員である杉山康弘氏。年間100件以上の起業家からの相談に乗る一方、70名近くが在籍するプロフェッショナルファームを経営されています。

「士業は自由業だ。」クライアントファーストを追求し、組織に属しながら独立しているかのように働けるファームを作りたい。杉山氏の現在に至るまでのキャリアをHUPRO編集部が紐解きました。

【ご経歴】

 
1995年 早稲田大学政治経済学部経済学科卒業
1995年 辻会計事務所入社(現辻・本郷税理士法人)
2005年 あいわ税理士法人入社
2006年 パートナー就任
2015年 代表社員に就任

「企業経営者に頼ってもらえるような税理士を目指したい」

―税理士を目指し始めたきかっけと背景について教えてください。

私の父は20代で長野から上京し不動産ビジネスで起業しました。今でも実家は不動産ビジネスをやっています。私が中学生の頃から、父からは何となく、弁護士、会計士そして税理士などの士業を薦められていたことを記憶しています。その時はまったく自覚はありませんでしたが、もしかしたら当時から自分自身も士業で食べていくと言う道を何となく意識していたのかも知れません。

大学付属の高校に入学し3年後、完全に文系だった私は、法律か経済かその他の道かの選択を考えたとき、根拠はありませんでしたが経済の方が自分に合っていると思い経済学部に進学しました。

大学生になって2年間、高校時代の延長線上で不真面目な学生生活を送ってしまった私は、大学3年時に急に180度方向転換をして将来のことを考えるようになりました。「会計士」「税理士」という言葉が頭に浮かんだのはその時です。色々と調べたり、先生や先輩たちの話を聞いた結果、企業側に立ってアドバイスをする税理士の可能性に大いに魅力を感じ、税理士の道を歩むことを決意しました。具体的には「企業経営者に頼ってもらえるような税理士になりたい」という思いでした。

ー実際に資格取得を目指しはじめてからの税理士受験というものはどうでしたか?。

本格的に勉強を始めてみると、これが意外に面白く、楽しい。正直に言うと、まったく面白くなかった経済学の勉強と比べ、会計・税務の勉強は世の中の活動と密接につながっており、勉強すればするほど知識が自分の中に蓄積され、世の中の仕組み理解が進むということが実感できました。経済・企業活動を数字で現わせること、複式簿記の仕組みに非常に感動したことを覚えています。

―試験勉強をする中で苦労したことはありますか?

実は苦労することは私が感じる範囲ではありませんでした。
私は高校から早稲田大学の付属だったので、大学受験もなく、自分ではモラトリアムを十分に過ごしていると思いました。本格的に勉強をはじめると決意してからは、特に抵抗なく切り替えを行えました。

私は一つのものにこだわると、のめりこむタイプです。そのため、税理士の勉強もかなり集中して取り組むことができました。大学3年時から専門学校の税理士コースでダブルスクールを始め、卒業する年には簿記・財務諸表論・法人税法に合格することができました。

大学を卒業した年の9月から辻会計事務所(現辻・本郷税理士法人)で働き始めました。働きながら税理士試験を受けるという生活を3年間ほど続けた結果、無事税理士試験に合格することが出来ました。当時の辻会計事務所は、今のあいわ税理士法人のように圧倒的に有資格者比率が高く、上司や先輩は全員有資格者で、試験前には、「仕事はいいから、受験勉強をしっかりやれ」という風潮がありました。とても有難かった半面、「早く官報合格しろ。合格してからがスタートだ」という無言のプレッシャーは結構ありましたが、それが早期合格に繋がったと思っており、とても感謝しています。

剛柔バランスの取れた権威ある事務所でスタートしたキャリア

―辻会計事務所を選ばれた理由は?

理由は大きく3つあります。
1つ目は、私には当時一番輝いて見えた事務所だったからです。当時は、まだBig4どころかBig8もまだ出来ていない時代でした。その中では、辻会計事務所は歴史があり、この業界の中では規模もとても大きく輝いて見えました。また事務所の創設者が日本の公認会計士制度を作った人物である(と言われました)という権威があることも大きな魅力でした。

2つ目は、専門性を高めることができる環境であったからです。
面接時に初めて知ったのですが(笑)、ほぼ全員が有資格者で専門家としてのスタートを切るには、最高の環境だと思いました。

そして3つ目は仕事の内容に魅力を感じたからです。
今から25年以上前ですが、当時から辻会計事務所では「記帳代行」はやらないと言い切っていました。我々は作業請負人ではなく自分たちの知識ノウハウを売るんだという事務所の姿勢は入社を決めた一番大きな理由でした。

ー入社後の印象はどうでしたか?

実際に入ってみると、周囲の先輩方は優秀な方ばかりでしたので、まだ、右も左もわからない私にとっては非常に素晴らしい環境でした。先輩方は優しいのですが、辻先生はそれはそれは厳しい方でした。その環境はメリハリがあり成長するには良い環境でした。クライアントに説明するよりも、社内で辻先生に報告・説明するほうが緊張するし、準備にも時間が掛かるという環境でした。そのため私も仕事の成果に対して、常にストイックになることが出来ました。辻先生が監査役を務める会社へ訪問する際に、車に同乗させてもらい、道中ずっと会社の数字の話で詰められたことは数十回はあるのではないでしょうか。

非常に厳しく指導をしていただき、剛柔バランスのとれたスタートが切れたことは、自身の現在にも通ずる基礎を築いてくれたと思います。非常に幸せなことであったと感謝しています。

―その後、現在のあいわ税理士法人へ入社にいたるまではどのような経緯だったのでしょうか?

2000年に税理士登録し、2005年に現在のあいわ税理士法人へ入社しました。2000年に税理士登録してから一人前になり、クライアントも持つことができ、クライアントも自分を頼ってくれるという喜びもあり、この5年間は仕事がめちゃくちゃ面白い時期でした。

しかしそんな中で、本郷事務所との合併が大きな原因となり次のステージを考えるようになりました。辻会計務所と本郷会計事務所が合併することで大きな規模の事務所となり、クライアントへより幅広くレベルの高いサービスを提供できるようになることは理解出来ましたが、私自身が大きな組織の中の一部門として働くことに魅力を感じることが出来ませんでした。当時30代前半だった私はもっと自分個人で領域を拡げたいという考えを持っており、大きな組織の中で働くよりも、自分の専門家能力を高められる環境を探していました。

あいわ税理士法人の創業者である石川は、監査法人での勤務の後、たまたま同じ辻会計事務所で2年間経験を積みあいわ税理士法人を創業していました。あいわ税理士法人では上場会社や上場準備会社の税務顧問業務やM&Aにおけるアドバイザリー業務など、辻会計事務所では経験したことのなかったダイナミックで大きな仕事を多数手掛けており、そこに非常に大きな魅力を感じました。
結局、当時勤めていた辻会計事務所の上司・メンバー5,6名とともに、石川のもとへ行くことにしました。2005年のことです。

あいわ税理士法人の代表へ。自由業として働ける環境を作りたい

―あいわ税理士法人ではどのような日々を過ごしましたか?

自分で望んだとはいえ、最初は大きな組織から小さい組織へ移ったわけですから、それなりの苦労はありました。前職では当然行われていた金融機関との連携による営業活動、各種セミナー講師や専門書籍の執筆など、当たり前だと思っていた活動ができない。自分の細い人脈を辿って様々画策しましたがほとんどが無駄に終わりました。

しかし、代表の石川が「なんでもやってやろう」という積極的な人物であったこと。そして、2010年頃からIPOというこれまではほとんど経験のなかった領域を開拓していく方針になったことで自分をさらに磨くことができる環境になっていったことが非常に大きかったです。最近の新規案件はIPO案件が多く、これは当事務所の大きな特長です。

さらに言うと、石川は会計士、そして私は税理士、この組み合わせが非常に組織全体をスムーズに進めるパワーになったと思っています。あいわ税理士法人は税理士中心のファームです。IPO案件についても税理士が担当することになりますので、税理士である私が案件を開拓してくる意味合いは大きかったのではないでしょうか。
また、IPO案件の場合はまず企業オーナーをグリップしなければなりません。税務に強いことをフックにオーナーの相続対策や株の扱い方などを提案し、契約をとるというビジネスモデルを構築していったのもこの頃です。

―あいわ税理士人の強みを具体的に教えてください。

専門性の高い税務を強みに、IPOを目指す経営者を会社とオーナー個人の両面からご支援できる点があいわの強みです。会社の顧問税理士が上場審査や上場後の経理体制だけでなく、オーナー個人の財産回りのご相談にも乗れることは企業オーナーにとっては非常に心強いことではないかと思っています。

また、株式上場はあくまでも通過点であってゴールではありません。あいわ税理士法人では、上場後のいわゆるIPOベンチャーと呼ばれる企業に対して、M&Aや海外展開などのご支援を通じて更なる企業成長をサポートしたいと考えています。そのために、数年前に「あいわFAS」というM&Aの専門部隊を設けたり、「あいわSingapore」という別法人の立上げも行いました。

このIPO前後のサポートという部分には自信を持っています。今後、更にこの事業は拡大できると考えています。上場したベンチャー企業が、ソニーやホンダのような大企業に成長していくことを支援したいという思いで更に当法人の経営を強化しています。

ー杉山先生が経営者の道を選ばれた経緯はどんなものでしょうか?

経営者として実現したいことが見つかったからです。それは自由業として、独立したように働ける本当のプロフェッショナルファームを作るということです。

私たち税理士は、個人に資格が付与されるものであり、本来はどの組織に所属していても、やるべきことはクライアントファーストを徹底したサービス提供だと思います。しかし残念ながら様々な事情によりそれが実現しにくかったり、目の前の仕事を優先しがちでそれを実感できないということが往々にして起こります。あいわでは、自立した優秀なプロフェッショナルが集まり、一人では出来ないことをteamworkで実現していく、そしてそれがすべてクライアントファーストのもとに行われる、そんなファームを作りたいと思い、石川に自分のビジョンを語ったことを覚えています。

ー代表社員になってからはビジョンの実現はできていますか

全く出来てません(笑)
やりたいこと、実現したいことが多すぎて、道のりは長いなと感じています。
大きな方向性としては、規模拡大と収益力向上を目標に据えています。今後10年で「一人当たり売上倍増」が大きな数値目標です。

そのために昨年3つの制度を創設をしました。「パートナー制度」「委員会制度」「プラクティスグループ制度」です。
「パートナー制度」は、出資を伴わない役員制度のことで、あいわ税理士法人を自分のファームとして捉え、その組織力向上にコミットしてもらうためのものです。業務効率化や教育体制、広報やリスク管理などファームの根幹に関わる領域について一定の役割を担ってもらっています。
「委員会制度」では各パートナーが委員長を務めるファームの組織力を向上させるような取り組みを継続的に行ってもらっています。
「プラクティスグループ」は新規サービスを開発し提供していくための試みです。とくに上場を実現されたクライアントに対してより成長を加速させるためのアクションを提案していきたいと思っています。「役員インセンティブプラン導入支援」「ホールディングカンパニー導入支援」「M&A・資金調達支援」など、上場後に更なる成長を目指す企業向けのサービスラインナップを整備しています。

士業は自由業だ。士業人がプロとして最高のパフォーマンスをするための環境を作る

―杉山先生の今後のビジョンを教えてください。

「独立系Top Professional Firm」を作りたいです。独立系であることはクライアントの最善の利益を追求できるということであり、真のクライアントファーストを実現できるということです。

そのためには、プロがプロの仕事に注力でき、生産性を高めることができるプラットフォームを作りたいと考えています。働き方が自由になっていくこれからの時代、働く場所には各々の目的が求められると思います。何のために出社するのか、何のために在宅勤務するのか、環境が目的ではなく目的を達成するためにはどういう環境が必要なのか。もちろん人事制度も変えなければいけません。これまでの労働時間に対する給料という考え方は限定的になっていくでしょう。
簡単にいうと「独立するよりあいわでやりたい」と思ってもらえるかどうかですね。

―HUPROMAGAZINEを見ている読者の方へメッセージをお願いします。

本気で士業人として活躍をしたいなら、とにかく短期間で税理士資格取得を目指すことです。試験は容易ではないですが、その先の実務が本番です。働きながら勉強される方も、そうじゃない方も、早く資格を勝ち取り、とにかく若いうちに早く実践の場に出ることで自分の可能性を飛躍的に向上させることが出来ます。

また士業とは、本当に自由業です。一流になるのも自由、三流になるのも自由。資格とは個人に与えられるもので、一流を目指すのかか三流で良いのか、何をやるかは自分に選択権がある仕事だと思っています。

組織に所属していたとしても、他の職種よりも個人の仕事の領域、仕事の裁量が広げやすいのが士業なのではないでしょうか。組織の利益という前提は守りつつ、社員でありながらも独立しているようなスタイルに近いのがこの職業の魅力です。ぜひ頑張って目指していただきたいと思います。

―本日はお話を聞かせていただきありがとうございました。

本日お話を聞かせていただいた杉山康弘氏が代表社員を務める
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この記事を書いたライター

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