故人の財産が思っていたよりも多額であった、予期せぬ相続が発生した等、相続対策が十分に行えていなかった場合には、相続税の納税資金が不足することが考えられます。
相続税は原則金銭での一括納付ですが、これが難しい場合には延納を選択することが出来ます。
今回は相続税の延納について解説していきます。
相続税は、一定額以上の財産を持つ人が亡くなった場合に、その財産を引き継ぐ相続人が支払うべき税金です。
相続税の納付期限は、相続税の申告書の提出期限と同じく、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。
相続税については下記コラムもご参照ください。
相続税の納付方法は、原則として金銭で一時に納付することとされています。
しかし、相続税額が10万円を超え、金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、納税者の申請により、その納付を困難とする金額を限度として、担保を提供することにより、年賦で納付することが出来ます。
これを延納といい、この延納期間中は利子税の納付が必要となります。
下記の全ての要件を満たす場合に、延納が認められます。
①相続税額が10万円を超えること 。
②金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること。
③延納税額及び利子税の額に相当する担保を提供すること。
ただし、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には担保を提供する必要はありません。
④延納申請に係る相続税の納期限又は納付すべき日(延納申請期限)までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること。
出典:国税庁 相続税の延納
上記③のように、担保の提供が必要である場合があります。担保として提供の出来る財産は、下記のものに限ります。
一方で、提供の出来る財産に含まれていても、下記の者は担保として不適格であるとされています。
納期限又は納付すべき日までに延納申請書に担保提供関係書類を添付して提出する必要があります。
ただし、延納申請期限までに担保提供関係書類を提供することができない場合は、担保提供関係書類提出期限延長届出書を提出することにより、1回につき3ヶ月を限度として、最長6ヶ月まで担保提供関係書類の提出期限を延長することが出来ます。
延納申請書が提出された場合、税務署長は、その延納申請に係る要件の調査結果に基づいて、延納申請期限から3ヶ月以内に許可又は却下を行います。
延納担保などの状況によっては、許可又は却下までの期間を最長で6ヶ月まで延長する場合があります。
申請者においては、延納申請期限までに担保提供関係書類の作成を行い、延納申請書に添付して提出する必要があるほか、提出された書類の訂正等に必要な補正についても、定められた期限までに行う必要があります。
延納の出来る期間と延納にかかる利子税の割合については、その人の相続税額の計算の基礎となった財産の価額の合計額のうちに占める不動産等の価額の割合によって、定められています。
延納の許可を受けた相続税額について、その後に延納条件を履行することが困難となった場合には、申告期限から10年以内に限り、分納期限が未到来の税額部分について、延納から物納への変更を行うことが出来ます。これを特定物納といいます。
特定物納の申請をした場合には、物納財産を納付するまでの期間に応じ、当初の延納条件による利子税を納付することとなります。なお、特定物納に係る財産の収納価額は、特定物納申請書を提出した時の価額となります。
物納に充てることの出来る財産は下記のものに限り、また順位の高いものから充てる必要があります。
①不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等
②不動産及び上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
①非上場株式等
②非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
①動産
上記のように、相続税の納付が金銭で一括で納付することが出来ない場合には、要件を満たすことで、延納をすることが出来ます。また、延納が難しくなった場合には、物納を選択することが出来ます。
しかし、いずれも利子税の納付が必要となることから、一括納付に比べて、最終的に支払う金額が多くなります。
あらかじめ金銭での一括納付が出来るように、相続対策として、相続が発生する以前に納税資金の準備をすることをお勧め致します。