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税務調査とは?経理担当が知っておきたい基礎知識

HUPRO 編集部
税務調査とは?経理担当が知っておきたい基礎知識

税務調査とは、国税庁や税務署が納税者の申告内容を確認する調査のこと。法人でも個人でも事業を行っている者すべてが対象です。きちんと申告・納税していても税務調査は免れられません。その時には、税理士と共に経理担当者も対応します。慌てずに済むように、税務調査の基本的な知識と流れを確認しておきましょう。

税務調査とは

税務調査というと「国税が踏み込んできて帳簿をしらみつぶしに調べ、思いがけない『脱税』を指摘される」というドラマのようなイメージを持っているかもしれません。
しかしあれはあくまでドラマ上の演出。悪質な脱税を繰り返しているような企業に対する「強制調査」です。ほとんどの企業で行われる税務調査は「任意調査」。基本的には事前の予告があり、1~2日ほどで終わります。
調査結果は約1ヶ月後に通知。申告漏れが発見された場合は修正申告を求めますが、特に何もない場合は指導で終わります。

任意調査

通常実施される税務調査はこちらです。
資本金1億円未満の法人や個人事業者については税務署の調査部門が担当し、資本金1億円以上の法人は国税局調査部が担当することになっています。
調査時期として多いのは、税務署の人事異動が終わる7月以降~11月頃です。

強制調査

ドラマに出てくるのはほぼこれ。国税局の査察部が捜査令状を持ち、もちろん予告なしに踏み見ます。悪質な脱税という犯罪に対し、国税犯則取締法に基づき実施される調査です。
追徴課税の支払はもちろん、ニュースで報道されることもあります。

税務調査の流れ

実際に税務調査を受けるときは、どのような流れで進むのでしょうか。任意調査の流れを見ていきましょう。

事前連絡

任意調査が入る場合は、まず調査の10日ほど前(何日前という決まりはありませんので、もっと直前のこともあります)に、会社と会社の顧問税理士宛てに電話で事前連絡があります。ここで調査の日程確認を行いましょう。調査の進行によっては、対応に追われてその日の仕事ができない場合もあります。代表者・顧問税理士と調整して決定しましょう。

事前連絡がないケースもある

しかし、飲食店や小売業など現金決済がメインの納税者や、事前調査の結果脱税行為を行っていると想定される場合は事前連絡なしで税務調査が来ることがあります

税務調査までに準備しておきたいもの

当日の業務は対応でほぼつぶれることが予想されるため、業務を前倒しで進めておきましょう。また、帳簿や証憑、勤怠管理などは必ずチェックされます。過去のものも指示されたらすぐ取り出せるように場所を確認しておきましょう。また、代表や役員、経理担当者のパソコン、経理システムなども確認されます。ファイルなどを整理しておきましょう。
具体的には以下のような書類がチェックされます。

納品書
領収証
請求書
契約書
帳簿類
決裁書・稟議書
勤怠(出勤簿やタイムカードなど)

※内容の改ざんや修正は絶対にしてはいけません

事前に顧問税理士との打ち合わせもしておきましょう。

税務調査の流れ

税務調査官が会社に訪問し、税務調査が始まります。
名刺や身分証明書を確認して、応接に案内しましょう。税理士の先生と代表者と調査官など、人数分のお茶を出します。

調査はいきなり始まるわけではなく、最初は挨拶・雑談と会社の近況などを確認されます。
社員に対しても、業務内容や取引先の情報を聞いてくることがあります。

お昼休憩の昼食は用意する必要はありません。

午後になると、本格的に調査が開始です。ここで指定された書類やファイルがさっと取り出せると、何も言わなくても管理がきちんとしている印象を与えることができます。

また、社長及び経理担当者の机及び金庫・書類保管場所の中を調べる「現況調査」や、小口現金や出納の残高が一致しているかどうか確認する「現金監査」が行われることもあります。
1日目の調査がスムーズに済めば、2日目もその流れで無事に進むケースが多いです。
逆に1日目で何か問題が起こると、2日で終わらない場合も。引き続き、実地調査、追加資料提出要請、取引先や取引金融機関への確認作業などが行われます。

税務調査官と話すとき気を付けたいこと

税務調査について緊張して身構えていたら、実際にはフレンドリーな方がくる場合も珍しくありません。ホッとして口が軽くなり、ペラペラと離しすぎないようにしましょう。

逆に「任意調査」とはいっても調査官には質問検査権があります。質問に対して応えなかったりや嘘の回答をしてしまうと罰則になることも。調査官に対しては誤りのない内容を簡潔に離すようにしましょう。

税務調査は何件くらい行われているの?

税務調査は何件くらい行われているの?

出典:令和2年11月 国税庁 令和元事務年度 所得税及び消費税調査等の状況

新型コロナの影響で税務調査の件数は減っています。それでも令和元年度は43 万1千件(平成30年度 61 万1千件)の調査が行われました。
そのうち、申告もれ等の非違があった件数は 26 万3千件(同 37 万4千件)です。

この調査結果を見ると「検査の半数は申告漏れを指摘されている」「コロナでより確率の高いところに調査が来ている」「つまりうちは脱税を疑われている?」と思ってしまうかもしれません。しかし申告や納税に問題はなくても税務調査は入ります。いつ税務調査が来てもいいように、普段から適正な会計を心がけましょう。

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税務調査で重点的に調べられやすい業種は?

税務調査で重点的に調べられやすい業種は?

出典:令和2年11月 国税庁 令和元事務年度 所得税及び消費税調査等の状況

税務調査では、申告漏れや脱税を風俗業やキャバクラ、太陽光発電、システムエンジニアの申告漏れ所得金額が高額であることがわかります。

国税庁の報告書によると「主な取組」として、積極的に調査を行っている層が記載されていました。主に以下の3

有価証券・不動産等の大口所有者、経常的な所得が特に高額な個人などの「富裕層」
海外投資を行っている個人や海外資産を保有している個人
インターネット取引を行っている個人

特に3番目については、近年「副業」として流行のairbnbなどのシェアリングエコノミー、メルカリ、ヤフオク、Amazonなどのネット販売や、アフィリエイトなどの広告業、仮想通貨なども対象となります。

開業届を出しているかどうかにかかわらず、年間所得が以下に当てはまる人は確定申告が必要。「副業だから」ではなく、対象の場合は必ず確定申告をすべきかどうか相談しましょう。

経営者やフリーランスの場合:年間所得が48万円以上

会社員の場合:副業による年間所得が20万円以上

年間所得とは「一年分の収入から経費を差し引いた金額」です。

税務調査が入りやすい時は?

税務調査が入りやすい業種以外にも、税務調査が入りやすい時があります。それは以下のような状況です。

過去の調査で不正が指摘されたことがある
売上が急激に伸びた/もしくは利益が減少した
事業継承などで代表者変更があった
消費税の還付を受けた
多額の設備投資をした

これらは特に通常の事業でもありうることですが、税務調査は基本的に「性悪説」をとります。そのため、経営に何らかの変化があったときは、税務調査があるかもと念頭に置いておきましょう。

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