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仕事とは「相手が喜ぶものを考え、その価値を提供すること」 コロプラCFO原井義昭氏が考える会計士から始めるキャリア発展の可能性

HUPRO 編集部
仕事とは「相手が喜ぶものを考え、その価値を提供すること」 コロプラCFO原井義昭氏が考える会計士から始めるキャリア発展の可能性

常に自分の中でキャリアに対するクリアなイメージを持ち、若くして株式会社コロプラのCFOに就任した原井義昭氏。仕事人として常に相手に喜んでもらうこと、相手が求める価値を提供することを考え続ける原井氏が、会計士CFOのロールモデルになれればとご自身の経験を語ってくださいました。

【ご経歴】

2009年 公認会計士試験 合格
2011年 早稲田大学 卒業
同年 有限責任監査法人トーマツ 入所
2014年 公認会計士登録
2015年 株式会社コロプラ入社
2018年 株式会社コロプラ取締役就任、現在に至る

公認会計士を目指したのは「人生の選択肢を増やす」ため

ーー公認会計士を目指されたきっかけをお話いただけますか。

小さい頃からニュースを見ていて、時代背景やその時の経済状況などによって、人生が左右されることに違和感を持っていました。また祖父は戦争世代で陸軍士官学校で青春を過ごし、親は学生運動が盛んだった時代に青春を過ごしたのですが、時代の影響をそれぞれの生き様から感じていました。時代背景によらず働き方や生き方を自ら選びたい、どんな状況であっても強みや武器を持っていれば時代に流されず人生を選べるのではないかと思いました。

そんな中で、公認会計士を選んだのは、もともと経済学科に進む予定で資格のことも身近に感じていたからです。もちろん公認会計士も時代に左右されるとは思いますが、資格はないよりあった方が選択肢が広まり、人生において自分で決められる部分が増えると思い挑戦しました。

-資格試験の勉強で苦労されたことはありますか。

大学生活と勉強の両立のバランスに苦労しました。附属の高校から早稲田大学に進学し、勢いのあるスタートダッシュを狙っていたのですが、あまり意志は強くなかったので、周りが遊んでいると羨ましくなることもありました。それで1年生のときはなるべく人に会わないように、篭って勉強していました。

ただ、その勉強スタイルは無茶で、途中しんどく苦しくなり大学の単位を落とすこともしばしばありました。公認会計士試験も2年生のときに短答試験に受かったものの、それ以降は遊んでしまって一度落ち、二次試験に合格したのは3年生のときです。

最終的には「勉強するときは勉強する、遊ぶときは遊ぶ」というスタイルを確立しました。サークル活動をしながら勉強をしていたのですが、結果的にはそうした方が気持ちの切り替えがスムーズにいき、勉強がはかどるようになりました。最初からそうやっておけばよかったと当時は思いましたね。

監査法人で学んだのは「ガッツと自分が生み出す価値への責任」

-最初のキャリアとしてトーマツを選んだのはなぜでしょう

理由は、会社説明会のときに仕事が一番楽しそうで自分に合っていると感じたからです。会計士は専門的な仕事で保守的に見られがちなのですが、説明会で話をされたリクルーターやパートナーは良い意味で会計士っぽくなく、前向きで主体性を持って楽しんで仕事をされている印象を受けました。「仕事は大変だけど、上場を達成した企業からは感謝されるし、とてもやりがいのある仕事だ」という言葉に、素直に気持ちが動いたんです。

IPO支援の仕事に特に興味を覚えました。監査をするというよりはお客様と一緒に未来に向かっていく仕事という点に魅力を感じ、入所を決めました。
そして、入所後は実際に働く中で常に自分がお客様に与えられる付加価値を考えながら、仕事をしていました。

-トーマツで苦労されたのはどんなことでしょう

入所してまず驚いたのは、予想以上に成果主義であったことです。「君が1時間働いたらお客様にこれだけ請求がいくよ。その分の成果が出せているのか?」と言われ続け、常にプロフェッショナルとして成果を出すこと、付加価値を提供することにコミットを求められました。この経験からかなりメンタル面や仕事に対するマインドが鍛えられました。仕事のクオリティを高いところに設定するという考え方を最初のキャリアで叩き込まれたのは本当に良かったと思っています。

妥協せずに仕事をするマインドは自分の成長速度に関わってくるところだと思うので、今でもこのマインドは大事にしています。また社会人としての礼儀もここで厳しく教えていただきました。挨拶や飲み会の幹事から始まり、人との関わり方みたいなところも学べたと思います。そしてこの経験は今も活きているなと思います。

ー社会人としての仕事への姿勢という面で吸収するものが多かったのですね。

仕事をする中で、分からないことがあったら自分で徹底的に調べて勉強する、というのはトーマツで得た習慣です。また幅広い人脈もできました。いい先輩に恵まれたと思います。「戦友」というべきか、大変な仕事を一緒に乗り切ってきた絆があるので、今でも諸先輩方とは仲良くさせていただいています。今でも他社でCFOをされている先輩にアドバイスをお願いすることもあります。

-仕事の中で印象に残るエピソードがあればぜひお聞かせください。

ある上場準備会社のプロジェクトのことが印象に残っています。
営業重視の会社で管理体制が整備されておらず、その会社のCFOの方もかなり苦戦されていて目標通りに上場できるのか厳しい状況でした。監査法人は、第三者的に課題点を指摘して、改善のアドバイスするのですが、トーマツに期待するのは「表面上の課題解決における提案ではなく、本質的な解決だ」と言われました。

CFOの方から「時々会社に来て資料を見たりヒアリングをするだけじゃなくて、経理部にある席に一日座って現場を見てみたら分かる」と言われ、実際に一日そこで仕事をして、事業会社の気持ちを教わりました。「表面上だけではない本当の価値をどう提供するか」ということの大切さは、この厳しいプロジェクトから学んだことです。

それから、一緒に働いていた上司の仕事ぶりが凄かったです。厳しい状況からお客様との関係値を築き、プロジェクトの優先順位を仕切ってくださったのですが、そのことでこんなにスムーズに物事が進み、成果が変わるんだと思ったことが強く印象に残っています。

結局困っているのはお客様です。ではどうするのか。相手の会社の社長やCFOと関係を築き、監査法人の立場からCFOと一緒になって管理面の大切さを社長をはじめとして会社全体に伝えていきました。このプロジェクトから学んだのは、最終的に大事なのは人と人なので、根本的な信頼関係がないと伝えたいことは相手には響かない、ということですね。

株式会社コロプラに転職したのは「キャリアを広げたい」から

-転職されたのはどういうお気持ちからでしょうか。

もともと監査法人には3年ぐらいいて、事業会社やコンサルに行ってみたいと思っていました。せっかく会計士の資格を取ったので、まずは監査を経験してそこからキャリアを広げるというプランで考えていました。そして、転職の後押しになったのは結婚と子供が産まれたことによる生活環境の変化です。

トーマツで働いていた当時は、担当プロジェクトが忙しくなると家庭をかえりみることがなかなかできませんでした。さすがにこのままでいいのかと考えたのがトーマツで4年経ったタイミングでした。様々な会社を見ましたが、コロプラが一番変化の速い会社で、外から見て社員の人たちも楽しそうだと思えたので、お誘いいただいてすぐに入社することを決めました。

-コロプラで働いていて、印象に残っていることや苦労されたことはありますか。

M&Aなどのダイナミックな仕事は印象的ですね。今も現在進行形でやっていますが、どうやったら違う会社同士がうまくやっていけるのか。企業風土が異なる人とどうやってコミュニケーションをとるか。新たに共になる会社と人をコロプラグループの仲間としてどうやって最大限に価値を発揮させていくのか。苦労もしますが、成果が出てくるとグループとして一緒になってよかったと本当に思います。

何社かM&Aをしてきた中で、上場企業のファイナンス理論を伝えないといけない場面があり、グループ会社の社長と意見がぶつかり合うこともありました。

最終的に分かり合うことができましたが、今思い返してみると、もっと上手くやれたのではないかと思います。M&Aはスピードが大事でスケジュールもかなりタイトなのですが、それでも、やはりある程度関係を築いてから伝えないといけない、関係構築が足りていなかったと感じます。

また監査法人で働いていたときは、お客様の会社に時々しか行くことはないので、専門知識をもとに短期的な関わりでも仕事ができる場面が多かったです。しかし、事業会社で働くということは、どうやったら会社全体がうまく回るかを、自分ごととして長い目線で考えなければいけません。転職した当初は、会社の中で影響が及ぶ各部署のことも色々考えると、組織内で物事が円滑に進むためにはどうすべきだろうかと悩むことも多く、監査法人と事業会社の違いを理解することに苦労しました。しかし、やはり監査法人でも、事業会社でも根底にあるのは人と人との関係性であるのは間違いありません。

-CFO就任に就任された経緯をお伺いしてもいいですか。

会計士のキャリアとして、事業会社に入るならいずれはCFOを目指したいと思っていたので、転職した当時からCFOになることを考えてはいました。いつかやってみたいと思いそのための知識習得や勉強はしていて、事業会社に入ってからも証券アナリストの資格を取得したり、前任のCFOから金融の知識やファイナンスを学んだりして準備をしていました。

その後、前任者が退任することになったので、そのタイミングで就任しました。コロプラは監査法人時代と比較して、自分で決めて裁量を持ってやれる部分が多いです。働き方改革にも力を入れていて、仕事と家庭のバランスも問題なく働くことができています。非常に恵まれていて、客観的にもいい会社だなと思いますね。

-CFOは長期間の変化を感じられる仕事

会社というものは常に改善できる部分があり、そのために中長期的に会社がよくなることを目指して頑張るところに充実感を感じますね。CFOは長い目線を持って会社の事業の舵取りをやらなければならず、またそれをやる権限を任せられています。将来振り返った時に「あのときやった仕事によって会社がこれだけよくなった」と思えるように仕事をしています。

会計士として一個人のプロとして働くという働き方から、組織でみんなで動いていくという働き方になりました。会社が変わっていく成果をみんなで喜び合えるのはCFOとしてとても嬉しく思います。「前はこんな雰囲気だったけど、今は良い雰囲気だよね。」「残業が多い時もあったけど、今は健康経営の認定も取れて、外部に評価してもらえることも増えたよね。」などちょっとしたことでもいいので、過去にやった仕事の成果が現在に表れている、みんなに貢献できて会社が良くなってきた、と思えるとじんわりとした幸せを感じます。

以前は目の前のわかりやすい派手な成果に魅力を感じた時期もありました。しかし、最近は長くいるからこそできる仕事に価値を感じます。長い目線でじっくりと会社を良くすることは、長く会社にいる人でなければできないので、やりがいの部分では意識が変わりつつあります。ただ、基本はどういう価値を提供して喜んでもらうかということで、これは常にトーマツ時代から変わっていません。

-CFO就任後に社内が変わった実感はありますか。

直近のエピソードとしては、会社のフィロソフィーの刷新があります。3年前に行った役員合宿のときから考えてはいたのですが、ようやく発表できたのが去年の10月です。会社の想いや文化を根付かせるために長い間準備をしての発表でした。

このフィロソフィーによって、会社からのメッセージがぶれることなく、社員も共通言語として話してくれるようになりました。まだ発表して半年なので、これから変わってくる部分も多いと思っていますが、従業員の満足度調査でも「フィロソフィーを発表してくれたので会社のことが分かりました。」「会社への愛着や思い入れが上がりました。」という反響があり、よかったなとやりがいを感じ嬉しくなりますね。

将来のビジョンと読者へのメッセージ

-「働く」とは一言でどういうことだと思いますか?

「相手が喜ぶものは何かと考え、その価値を提供すること」それが働くことだと思っています。トーマツに入ったときにはもう少しぼやけていて、なんとなく「ありがとう」と言われたいと思って仕事をしていました。「ありがとう」と言われるためには喜んでもらう必要があります。喜んでもらうためには、相手に有益である価値を提供しなければなりません。

トーマツ時代に価値を出せとひたすら言われ続けて考え続けた結果、「自分が相手だったらどう言って欲しいか、どういうことを言われると嬉しいか」を考えて仕事をするようになりました。そして、事業会社で働いた経験も踏まえて、今は自分の中で働くとはどういうことなのかが固まったように感じます。

-コロプラの5年後、10年後のビジョンを教えてください。

どんな業界でも、最初から大きな会社はありません。ただ、会社の価値、こだわりを貫いてきた結果、現在、大手と呼ばれる会社にはたくさんファンがいます。コロプラもそんな風に少しずつ、事業拡大を図り、世の中に喜んでもらえる量を増やしていきたいと考えています。

コロプラのミッションは「エンターテインメントで日常をより楽しく、より素晴らしく」です。そう感じてくれるお客様の数が増えてくれれば、もっといい世の中になり、コロプラの存在意義が高まっていきます。長期的な視野を持って世の中の人たちに喜んでもらえる量を増やしていきたいですね。

また個人としては、会計士のCFOとしてのロールモデルになることができたらなと思っています。会計士という経歴で始まった自分のキャリアによって、誰かが困っているときに何か参考になれることがあれば嬉しいです。

-今後会計士を目指す方にアドバイスをお願いします。

自分のキャリアを改めて振り返ると、やはり会計士の資格を取ったことは大きな意味がありました。会計士を目指したときに思っていた、「主体的に自分で考え、キャリアを選んでいきたい」という人生を実現する上で、会計の資格や技能は大きな力になると思います。

会計士が段々と増えることで日本全体の会計リテラシーも少しずつ上がり、会計士の仕事の幅が増えていると思います。今では社外取締役、ガバナンスの受け皿に弁護士だけではなく会計士も就任する時代になったなと思います。

事業会社での経理人材の需要も増えています。会計士などしっかりとした知識を持って経験がある人は、上場を目指す会社でも上場企業でも重宝されます。独立会計士だけではなく、組織内会計士もキャリアの選択肢の一つとして目指してもいいのではないでしょうか。

他には、会計士への需要として、たとえばNPOなど、透明性・ガバナンスを高める余地のある分野が挙げられます。これからSDGsなどで財団等への寄付が増えてきたときに、そのお金がきちんと使われているのかを示すという次の課題が出てくると思います。
誰も怪しいところにはお金を出したくはありません。そのときに、組織内に安心できる会計士が一人でもいると、資金の調達もしやすくなるはずです。

「日本経済に貢献する」という私自身の会計士としての想いがあるのですが、今後会計士が活躍できるフィールドがますます増えていくと感じています。誰もにとってキャリアが拓ける資格ですので、先を見据えて頑張って欲しいです。

ー本日はお時間いただきありがとうございました。
今回お話させていただいた、原井氏がCFOを務める
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この記事を書いたライター

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