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事業再構築補助金の申請枠とその要件とは?

岡山 由佳
事業再構築補助金の申請枠とその要件とは?

事業者が受け取ることの出来る事業再構築補助金には、4つの申請枠があります。どの申請枠にて申請を行うかにより、補助金額や補助率が異なるため、この申請枠の要件の確認は、申請を行うにあたり必須となります。
今回は、その4つの申請枠とは、またその4つの申請枠に該当をするための要件について解説していきます。

事業再構築補助金の申請枠

事業再構築補助金とは、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上の回復が期待し難い中、ウィズコロナ、ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために新分野展開、業態転換、事業転換、業種転換、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援するための補助金です。

事業再構築補助金には4つの申請枠があり、それぞれ申請の出来る要件や補助率が異なります。
4つの枠とは通常枠、卒業枠、グローバルV字回復枠、緊急事態宣言特別枠です。

通常枠

通常枠の補助金額と補助率

通常枠では、新分野展開や業態転換、事業転換、業種転換等の取組、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等を目指す中小企業等の新たな挑戦の支援を行います。
通常枠の申請により補助金の支給が決定した場合、補助金額は中小企業者等は100万円から6,000万円、中堅企業等は100万円から8,000万円を受け取ることが出来ます。補助率は中小企業者等は2/3、中堅企業等1/2、4,000万円を超える部分は1/3です</span>。

通常枠に該当をする要件

下記の全てに該当をする事業者が通常枠にて申請を行うことが出来ます。

①事業再構築指針に示す事業再構築の定義に該当する事業であること。

事業再構築事業については下記コラムをご参照ください。
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②申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること。

申請前の直近6か月間とは、事業者が申請を行う日の属する月の前月から遡って6か月間です。
任意の3か月とは、申請前の直近6か月間の範囲内であれば連続した3か月である必要はありません
コロナ以前の同3か月とは、原則、事業者が任意で選択した3か月と2019年1月から12月又は2020年1月から3月の同3か月のことをいいます。
新型コロナウイルス感染症の影響によらない売上の減少は、対象外です。コロナ後に合併を行った場合や大規模な自然災害で事業が大きく変化した場合等、特殊要因による売上高の増減については、売上高減少に係る証明書類を提出する必要があります。

③事業計画を認定経営革新等支援機関と策定すること。補助金額が 3,000 万円を超える案件は認定経営革新等支援機関及び金融機関と策定していること。

事業計画を認定経営革新等支援機関と策定し、認定経営革新等支援機関による確認書を提出する必要があります。
認定経営革新等支援機関は中小企業庁の認定経営革新等支援機関検索システムにより探すことが出来ます。
中小企業庁 認定経営革新等支援機関検索システム

④補助事業終了後 3年から5 年で付加価値額の年率平均 3.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均 3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること。

付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したものをいいます。
成果目標の比較基準となる付加価値額は、補助事業終了年度の付加価値額です。

卒業枠

卒業枠の補助金額と補助率

卒業枠では、事業再構築を通じて、資本金又は従業員を増やし、3年から5年の事業計画期間内に中小企業者等から中堅企業、大企業等へ成長する中小企業者等が行う事業再構築の支援を行います。
全ての公募回において計400社に限定されて認められる枠です。
卒業枠の申請により補助金の支給が決定した場合、補助金額は6,000万円から1億円、補助率は2/3です。

卒業枠に該当をする要件

下記の全てに該当をする事業者が卒業枠にて申請を行うことが出来ます。

①事業再構築指針に示す事業再構築の定義に該当する事業であること。

通常枠と同様の要件です。

②申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること。

通常枠と同様の要件です。

③事業計画を認定経営革新等支援機関及び金融機関と策定していること。

通常枠と同様の要件です。

④事業計画期間内に、事業再編、新規設備投資、グローバル展開のいずれかにより、資本金又は従業員を増やし、補助対象事業者に定める中小企業者等の定義から外れ、中堅、大企業等に成長すること。

中堅企業等とは、中小企業者等に該当をしない資本金の額又は出資の総額が10億円未満の法人や資本金の額又は出資の総額が定められていない場合は、従業員数が2,000人以下の事業者をいいます。
補助対象事業者に定める中小企業者等の定義とは、下記の範囲内の事業者をいいます。

・製造業、建設業、運輸業…資本金が3億円、従業員が300人
・卸売業…資本金が1億円、従業員が100人
・ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除くサービス業…資本金が5,000万円、従業員が100人
・ソフトウェア業、情報処理サービス業…資本金が3億円、従業員が300人
・旅館業…資本金が5,000万円、従業員が200人
・小売業…資本金が5,000万円、従業員が50人
・ゴム製品製造業…資本金が3億円、従業員が900人
・その他の業種…資本金が3億円、従業員が300人

⑤補助事業終了後3年から5年で付加価値額の年率平均 3.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均 3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること。

通常枠と同様の要件です。

グローバルV字回復枠

グローバルV字回復枠の補助金額と補助率

グローバルV字枠では、事業再構築を通じて、コロナの影響で大きく減少した売上を V 字回復させる中堅企業等の支援を行います。
全ての公募回において計100社に限定されて認められる枠です。
卒業枠の申請により補助金の支給が決定した場合、補助金額は8,000万円から1億円、補助率は1/2です。

グローバルV字回復枠に該当をする要件

下記の全てに該当をする事業者がグローバルV字回復枠にて申請を行うことが出来ます。

①事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること。

通常枠と同様の要件です。

②申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して15%以上減少していること。

通常枠よりも高い売上減少が求められています。

③事業計画を認定経営革新等支援機関及び金融機関と策定していること。

通常枠と同様の要件です。

④グローバル展開を果たす事業であること.

グローバル展開を果たす事業とは、下記①から④のいずれかに該当をする必要があります。

①海外直接投資

補助金額の50%以上を外国における支店その他の営業所又は海外子会社等の事業活動に対する費用に充てることで、国内及び海外における事業を一体的に強化すること。
応募申請時に、海外子会社等の事業概要、財務諸表、株主構成が分かる資料を提出すること。

②海外市場開拓

中小企業等が海外における需要の開拓を行うものであって、事業計画期間終了までに本事業の海外売上高比率が50%以上となることが見込まれること
応募申請時に、具体的な想定顧客が分かる海外市場調査報告書を提出すること。

③インバウンド市場開拓

中小企業等が日本国内における外国人観光旅客の需要の開拓を行うものであって、事業計画期間終了までに本事業に係る製品又は商品若しくはサービスの提供先の50%以上が外国人観光旅客の需要に係るものとなることが見込まれること。
応募申請時に、具体的な想定顧客が分かるインバウンド市場調査報告書を提出すること。

④海外事業者との共同事業

中小企業等が外国法人等と行う設備投資を伴う共同研究又は共同事業開発であって、その成果物の権利の全部又は一部が当該中小企業等に帰属すること。
応募申請時に、共同研究契約書又は業務提携契約書を追加するこ
と。

⑤補助事業終了後 3年から5 年で付加価値額の年率平均 5.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均 5.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること。

通常枠よりも高い付加価値額増加が求められています。

緊急事態宣言特別枠

緊急事態宣言特別枠の補助金額と補助率

緊急事態宣言特別枠では、令和3年の国による緊急事態宣言発令により深刻な影響を受け、早期に事業再構築が必要な飲食サービス業、宿泊業等を営む中小企業等に対する支援を行います。
緊急事態宣言特別枠の申請により補助金の支給が決定した場合、補助金額は従業員数が5人以下は100万円から500万円、従業員数が6人から20人以下は100万円から1,000万円、21人以上は100万円から1,500万円を受け取ることが出来ます。 補助率は中小企業者等は3/4、中堅企業等2/3です。

緊急事態宣言特別枠に該当をする要件

下記の全てに該当をする事業者が緊急事態宣言特別枠にて申請を行うことが出来ます。

①事業再構築指針に示す事業再構築の定義に該当する事業であること。

通常枠と同様の要件です。

②申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること。

通常枠と同様の要件です。

③令和3年の国による緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出や移動の自粛等による影響を受けたことにより、令和3年1月から3月のいずれかの月の売上高が対前年又は前々年の同月比で30%以上減少していること。

事業再構築補助金の対象となる緊急事態宣言とは、令和3年の国による緊急事態宣言第32条第1項の規定に基づき、令和3年1月から3月にかけて、栃木県、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県及び福岡県に対して発出されたものをいいます。
緊急事態宣言が出た地域に所在する事業者のみならず、その影響を受けた全国の事業者が対象となります。

④事業計画を認定経営革新等支援機関と策定していること。

通常枠と同様の要件です。

⑤補助事業終了後3年から5 年で付加価値額の年率平均 3.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均 3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること。

通常枠と同様の要件です。

不採択となる申請

上記のいずれかの枠に該当をすることで、事業再構築補助金の申請を行うことが出来ますが、下記に該当する事業計画である場合には、事業再構築補助金が不採択又は交付取消となります。

① 事業再構築事業に該当をしない等の公募要領にそぐわない事業
② 具体的な事業再構築の実施の大半を他社に外注又は委託し、企画だけを行う事業
③ 専ら資産運用的性格の強い事業
④ 建築又は購入した施設や設備を自ら占有し、事業の用に供することなく、特定の第三者に長期間賃貸させるような事業
⑤ 主として従業員の解雇を通じて付加価値額要件を達成させるような事業
⑥ 公序良俗に反する事業
⑦ 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律により定める事業
⑧ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団又は暴力団員と関係がある中小企業等による事業
⑨ 政治団体、宗教上の組織又は団体による事業
⑩ 複数申請を行っている事業者や他の事業者と類似している等の申請時に虚偽の内容を含む事業
⑪その他申請要件を満たさない事業

事業再構築補助金の申請

事業再構築補助金の申請は、インターネット環境を利用した電子申請にて行います。
ご不明な点に関する公的窓口は、システムの利用方法に関することは事業再構築補助金事務局システムサポートセンター、申請要件等に関することは事業再構築補助金事務局コールセンターとなります。
その他申請に係ることは公式のホームページをご参照ください。
事業再構築補助金 ホームページ

まとめ

上記のように、事業再構築補助金は4つの申請枠があり、通常枠の申請でも、事業再構築に取り組むにあたり金銭的な援助を受けることが出来ますが、その他の申請枠に要件が合致する場合には、他の申請枠で行った方が、補助金額や補助率が多くなり有利となります。
事業計画が事業再構築事業に該当しないもの等の他に、申請枠の要件に合致をしない申請も、当然補助金は不採択となります。
どの申請枠にて申請を行うことが出来るのか、事業計画の策定と共によくご検討のうえ申請をされることをお勧め致します。
事業再構築補助金についてご不明な点がございましたら、事業再構築補助金のホームページのみならず、認定経営革新等支援機関やHUPROでご紹介しております専門家を是非ご利用ください。

この記事を書いたライター

大学在学中より会計業界に携わり10年超の会計事務所、税理士法人での実務経験を経て独立。各業種の会計業務に関するフォローのみならず、ライターとして税務、労務、経理の話題を中心に、書籍やWebサイトに数多くの寄稿を行う等の様々な活躍をしている。
カテゴリ:コラム・学び

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