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事業再構築補助金の対象となる経費と具体例

岡山 由佳
事業再構築補助金の対象となる経費と具体例

事業再構築補助金は、事業再構築事業に係る経費に対して一定の割合が支給されます。この対象経費は、会計上の経費や税法上の損金とは全く異なるもので、事業再構築補助金が独自に定めているものです。
今回は、この独自に定められている事業再構築補助金の対象となる経費と、その具体例について解説していきます。

補助対象経費とは

事業再構築補助金は、事業再構築事業に必要となった経費に対して一定の割合が支給をされます。
補助対象となる経費は、事業拡大につながる事業資産への相応の規模の投資を含むものであり、事業の対象として明確に区分できるものである必要があります。
対象経費は、原則、交付決定を受けた日付以降に契約を行い、補助事業実施期間内に支払いを完了したものとなります。
ただし、事務局から事前着手の承認を受けた場合には、令和3年2月15日以降に発生した経費についても補助対象とすることが可能です。

事業再構築事業については下記コラムをご参照ください。
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補助対象経費の区分

下記の区分に該当をするものが、補助対象経費として認められます。

①建物費
②機械装置・システム構築費
③技術導入費
④専門家経費
⑤運搬費
⑥クラウドサービス利用費
⑦外注費
⑧知的財産権等関連経費
⑨広告宣伝・販売促進費
⑩研修費
⑪海外旅費

①建物費

建物費とは、下記の3点のいずれかに該当をする経費のことをいいます。
専ら補助事業のために使用される事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫その他事業計画の実施に不可欠と認められる建物の建設や改修に要する経費
補助事業実施のために必要となる建物の撤去に要する経費
補助事業実施のために必要となる賃貸物件等の原状回復に要する経費
建物の単なる購入や賃貸は対象外であり、また入札、相見積もりが必要です。

②機械装置・システム構築費

機械装置・システム構築費とは、下記の3点のいずれかに該当をする経費のことをいいます。
専ら補助事業のために使用される機械装置、工具器具の購入、製作、借用に要する経費
専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェアや情報システム等の購入や構築、借用に要する経費
上記と一体で行う、改良や修繕、据付け又は運搬に要する経費 機械装置又は自社により機械装置やシステムを製作、構築する場合の部品の購入に要する経費は機械装置・システム構築費となります。
借用とは、いわゆるリース、レンタルをいい、交付決定後に契約したことが確認できるもので、補助事業実施期間中に要する経費のみとなります。このため契約期間が補助事業実施期間を超える場合の補助対象経費は、按分等の方式により算出された当該補助事業実施期間分が対象となります。
改良、修繕とは、補助事業で新規に購入又は本事業のために使用される機械装置等の機能を高めることや耐久性を増すために行うものです。
据付けとは、本事業で新規に購入又は本事業のために使用される機械装置の設置と一体で捉えられる軽微なものに限ります。

③技術導入費

技術導入費とは、補助事業遂行のために必要な知的財産権等の導入に要する経費のことをいいます。
知的財産権を所有する他者から取得する場合は書面による契約の締結が必要となります。
技術導入費支出先には、専門家経費、外注費を併せて支払うことは出来ません。

④専門家経費

専門家経費とは、本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費のことをいいます。
専門家の謝金単価は、大学教授、弁護士、弁理士、公認会計士、医師等の場合は1日5万円以下、准教授、技術士、中小企業診断士、ITコーディネータ等の場合は1日4万円以下である必要があります。

⑤運搬費

運搬費とは、運搬料、宅配、郵送料等に要する経費のことをいいます。
購入する機械装置の運搬料については、機械装置・システム費に含まれます。

⑥クラウドサービス利用費

クラウドサービス利用費とは、クラウドサービスの利用に関する経費のことをいいます。
専ら補助事業のために利用するクラウドサービスやWEBプラットフォーム等の利用費であって、自社の他事業と共有する場合は補助対象となりません。
具体的には、サーバーの領域を借りる費用、サーバー上のサービスを利用する費用等が補助対象経費となり、サーバー購入費やサーバー自体のレンタル費等は対象になりません。

⑦外注費

外注費とは、補助事業遂行のために必要な加工や設計、検査等の一部を請負、委託等する場合の経費のことをいいます。
外注先との書面による契約の締結が必要です。外部に販売するための量産品の加工を外注する費用は対象になりません。

⑧知的財産権等関連経費

知的財産権等関連経費とは、 新製品、サービスの開発成果の事業化にあたり必要となる特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用や外国特許出願のための翻訳料など知的財産権等取得に関連する経費のことをいいます。
補助事業の成果に係る発明等ではないものは、補助対象になりません。また、補助事業実施期間内に出願手続きを完了していない場合も、補助対象になりません。

⑨広告宣伝・販売促進費

広告宣伝・販売促進費とは、補助事業で開発又は提供する製品・サービスに係る広告の作成及び媒体掲載、展示会出展、セミナー開催、市場調査、営業代行利用、マーケティングツール活用等に係る経費のことをいいます。
補助事業以外の自社の製品、サービス等の広告や会社全体のPR広告に関する経費は対象外です。
補助事業期間内に広告が使用、掲載されること、展示会が開催されることが必要です。

⑩研修費

研修費とは、補助事業の遂行のために必要な教育訓練や講座受講等に係る経費のことをいいます。
補助事業の遂行に必要がない教育訓練や講座受講等は補助対象外となります。
教育訓練や講座受講等に係る費用の補助を希望する場合は、事業計画書中に研修名、研修実施主体、研修内容、研修受講費、研修受講者についての情報を記載する必要があります。

⑪海外旅費

海外旅費とは、海外事業の拡大、強化等を目的とした、本事業に必要不可欠な海外渡航及び宿泊等に要する経費のことをいいます。
国内旅費や本事業と関係が認められない海外旅費は、補助対象になりません。
交付申請時に、海外渡航の計画を予め提出することが必要であり、一度の渡航に随行できるのは、専門家含め2名までです。
補助金の申請枠が卒業枠、グローバル V 字回復枠に該当をする場合のみ、対象経費となります。

補助対象経費とならないもの

一過性の支出と認められるような支出が補助対象経費の大半を占めるような場合には、補助対象にはなりません。
また上記に該当をしないような、下記に挙げる経費は補助対象経費から除外されます。

・事務所等に係る家賃、保証金、敷金、仲介手数料、光熱水費
・フランチャイズ加盟料
・電話代、インターネット利用料金等の通信費
・商品券等の金券
・販売する商品の原材料費、文房具などの事務用品等の消耗品代、雑誌購読料、新聞代、団体等の会費
・飲食、娯楽、接待等の費用
・不動産の購入費、株式の購入費、自動車等車両の購入費、修理費、車検費用
・税務申告、決算書作成等のために税理士、公認会計士等に支払う費用及び訴訟等のための弁護士費用
・収入印紙
・振込等手数料、代引手数料を含む及び両替手数料
・公租公課
・各種保険料
・借入金などの支払利息及び遅延損害金
・事業計画書、申請書、報告書等の補助金事務局に提出する書類作成や提出に係る費用
・汎用性があり、目的外使用になり得る事務用のパソコン、プリンタ、文書作成ソフトウェア、タブレット端末、スマートフォン及びデジタル複合機、家具等の購入費 ・中古市場において広く流通していない中古機械設備など、その価格設定の適正性が明確でない中古品の購入費
・事業に係る自社の人件費、旅費
・上記のほか、公的な資金の用途として社会通念上、不適切と認められる経費

補助対象経費の事例

業種毎にどのような対象経費があるのか事例をご紹介致します。

飲食業

喫茶店を営業する飲食業が、飲食スペースを縮小し、新たにコーヒー豆や焼き菓子のテイクアウト販売を実施した場合、事業再構築事業に該当をします。
飲食スペースの縮小に伴う店舗の改修に要する費用は建物費に該当をし、補助対象経費となります。

サービス業

ダンス教室を営業するサービス業が、教室内での人の密集を防ぐためにオンライン教室でレッスンを実施した場合、事業再構築事業に該当をします。
オンラインサービスを提供するWEBプラットフォーム等の利用費はクラウドサービス利用費に該当をし、補助対象経費となります。

製造業

航空機部品製造を行っている製造業が、ロボット関連部品や医療機器部品製造の事業を新規に立上げた場合、事業再構築事業に該当をします。
新規事業のための製造設備を購入した場合の費用は機械装置・システム構築費に該当をし、補助対象経費となります。

その他の事例は下記リンクをご参照ください。
出典:事業再構築補助金 パンフレット

まとめ

上記のように、事業再構築補助金において補助対象となる経費とは、事業拡大につながる事業資産への相応の規模の投資を含むものであり、事業の対象として明確に区分できるものであるもののうち、11区分のいずれかに該当をするものです。
併せて、交付決定を受けた日付以降に契約を行い、補助事業実施期間内に支払いを完了したものである必要があります。

事業再構築補助金において補助経費となる経費は、会計上で経費や損金になる支出とは全く異なるものですので、事業再構築事業に取り組み、補助金を申請をする際には、よく経費の内容を確認する必要があります。

事業再構築補助金は申請を行った全ての事業者に支給をされるものでは無く、事業再構築補助金事務局の審査結果により可決となった事業者のみに支給がされます。
審査に認められるような、効果的な事業計画や経費の用途を示せるように、事業者は検討をする必要があります。

事業計画書の作成等、事業再構築補助金の申請は非常に難しいもののように感じられますが、この補助を受けることで、ウィズコロナ・ポストコロナ時代への適応をしていくために必要な事業転換がしやすくなります。
事業者の方々には申請のご検討をお勧め致します。

この記事を書いたライター

大学在学中より会計業界に携わり10年超の会計事務所、税理士法人での実務経験を経て独立。各業種の会計業務に関するフォローのみならず、ライターとして税務、労務、経理の話題を中心に、書籍やWebサイトに数多くの寄稿を行う等の様々な活躍をしている。
カテゴリ:コラム・学び

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