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経理業務の「自計化」とは?自計化の目的やメリット・デメリットを解説!

HUPRO 編集部
経理業務の「自計化」とは?自計化の目的やメリット・デメリットを解説!

「自計化」とは、経理業務を会計事務所などに外注せずに自社で行うことを言います。自社で経理業務を行うと、お金の動きがすぐにわかるため、会計事務所の顧問料や記帳代行の委託費用の節約だけでない大きなメリットがあるのです。今回は「自計化」について解説します。

経理業務の「自計化」って?

「自計化」とは「記帳指導」ともいいます。企業自身が、日々のお金の動きを会計ソフトに入力して帳簿を作るすることです。
領収書や請求書などの各種書類を整理し、帳簿に仕訳して入力する記帳業務など「経理の日次業務」に当たる一連の流れを、企業で行うことを指します。
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これまでは、会計事務所に伝票や証憑をまとめて渡し、帳簿への記帳から決算まで丸投げする企業も少なくありませんでした。
しかし、現在では使いやすい会計ソフトが普及しています。基本的な操作などを覚えれば、仕訳作業はそこまで難しい業務ではありません。

入力した仕訳データを税理士に送るクラウド会計システムであれば、IDとパスワードを共有すれば、顧問先の会計事務所でもデータを確認できます。内容を税理士がチェックし、必要に応じて訂正を行うという流れです。自計化を行うことで、記帳業務にかかっていた日数を、大幅に短縮することができます。

自計化を行う目的とは

自計化の内容だけ見ると「面倒な作業だから委託しているのに」と思うかもしれません。
なぜ自計化を行った方が良いのでしょうか。

経理の本来の目的は、経営管理における数値を確認することです。それは早ければ早いほど、経営にとって大きなメリットをもたらします。
例えば、売上目標の達成率を確認したり、キャッシュフローや資金繰りの状況から営業政策の変更をしたり、利益が出すぎてきたら節税策を講じるなど、リアルタイムで経営の動きを把握することは、会社の利益に大きな影響をあたえることにつながるのです。

経営の発展には、お金の動きをできるだけ早くつかむ必要があります。伝票をまとめて会計事務所に渡してから記帳を行い、その結果を確認するという流れでは、どうしても日数がかかってしまいます。会計事務所は自社の経理部ではありません。他にも顧問先を抱えていますので、自社優先で業務を行うことは難しいです。

自計化をしていれば、財政上の問題点をリアルタイムで把握することができます。何か問題があった場合に即座に動くこと、方向性の変更もそれだけ早くおこなうことが可能です。

現在の会計ソフトは、基本的に仕訳入力が完了すれば試算表などのレポートを作ったり、月次決算をおこなうことができる機能がついています。会計ソフトを導入して自計化することでより経営を強化する。これが自計化の目的です。

自計化のメリットとデメリットとは

ここでは、自計化によるメリットとデメリットを見ていきましょう。

自計化のメリット

目的の項でも述べましたが、自計化には以下のようなメリットがあります。

経営状況のリアルタイム把握

最大のメリットは、売上データをすぐに作ることで、業績を即時に把握できることです。過去の履歴も一元管理することで、今後の業績の見通しを立てやすくなります。
現状に合わせて経営方針を転換したり、業績が落ち込んでいたらすぐに回復に向けた策を建てやすくなります。

金融機関からの信頼度アップ

金融機関から融資を受けたい場合、事業計画書や今後の業績の試算表を作成する必要があります。
従来の場合、たくさんの顧問先を抱えた会計事務所では、記帳業務を終えて試算表が送られてくるまで2~3か月かかることもありました。
つまり、経営状況を把握できない企業は、ほしいときに融資を受けられないなどの不都合があったのです。融資を受ける時期が遅れてしまうと、資金繰りにも大きな影響を及ぼします。
自計化をすることで、会計ソフト上でデータ化された数値で経営分析ができますし、税理士でも試算表を作成するまでの日数が大幅に短縮。資金繰りや経営方針の決定がしやすくなります。

経理の問題点を早期発見できる

自社で経理処理を行うことで、取引履歴を確認することが容易になります。おかしな取引や入出金があるなど、不正なお金の動きなどを発見しやすくなるのです。リスク回避のためにも、ある程度以上の人数がいる場合は自計化がおすすめです。

税理士の顧問内容がグレードアップ

経理のことがわかっている経営者と、そうでない経営者に対する税理士の話の内容は異なります。顧問と言っても、記帳からまるごと依頼している場合、書類不備などの事務的な連絡に費やされがちだったのではないでしょうか。
税理士の時間は有限です。自計化によって経理業務を自社でまかなうようになることで、事務処理についての話を省略できますので、より付加価値の高いアドバイスを受けることができるようになります。

より良い税理士を探すことができる

現在の税理士に不満がある場合でも「作業は遅いけど全部やってくれるし……」となかなか新しい税理士を探すのに踏み切れなかったことはありませんか?
自計化によってクラウド会計システムを導入すれば、ビデオ面談システムで対面し、帳簿はクラウド上で共有できますので、税理士と必ずしも対面せずにサービスを受けることが可能です。
リモートでも顧問業務をしている先進的な会計事務所・税理士法人を全国から探すことができるようになります。

記帳代行料金の削減

これまでは、会計事務所に記帳業務を丸投げする場合、それによって手数料が生じていました。自計化することによって、記帳代行手数料を削減することが可能です。

自計化のデメリット

自計化は良いことばかりのように見えますが、全ての会社におすすめできるかというと、一概にそうでもありません。企業のタイプによっては自計化することでデメリットが生じる場合があります。合わせてみておきましょう。

経理業務に時間を取られて本来業務ができなくなる

全く経理の知識がない人ですと、負担が大きくなってしまい本来の業務を圧迫する可能性があります。また、PCに慣れていなくて会計システムの取り扱い自体が難しい人の場合は、予想以上に時間や手間がかかってしまうことも考えられるでしょう。

人件費が上回る場合がある

これまで事務担当がおらず、経理処理を会計事務所に丸投げしていた場合、新たな経理担当を雇用する必要が生じたり、あるいはずっと残業が生じてしまうかもしれません。
顧問料が削減できたとしても、人件費が上回ってしまうようであれば、いったん立ち止まって考えてみた方が良さそうです。
このケースの場合は、例えば経理システムの導入と仕訳をアウトソースする方法もあります。アウトソーシングの料金はかかりますが、リアルタイムに近い形で経理業務を行ってくれるため、会計事務所に丸投げするよりもメリットも大きいです。
また、自計化をはじめとした、企業のシステム化支援を専門とするコンサルティング会社もあります。

顧問料が削減にならない

会計事務所によっては、自計化の推進は、あくまで事務所の業務効率化のためである場合があります。頑張って自計化をしたにもかかわらず顧問料を削減しなかったり、空いた工数分がサービスの付加価値の向上に繋がらなかったり、というケースも残念ながらあるそうです。
ただ、このケースの場合は、新たな顧問先を探すことができれば問題は解決できるでしょう。

大きな設備投資が必要

自計化を導入する上では、パソコンと会計ソフトの導入が必要です。
PCがない企業は今では少ないと思いますが、会計ソフトは新しく導入する必要があるでしょう。
現在は、無料プランからから始められるクラウド型会計ソフトも普及してきました。一括での負担はなく毎月のサブスクリプション方式ではじめられるので、まずはいったん試してみても良いかもしれません。

自計化を行うポイントとは?

自計化のメリットとデメリットを見てきました。
自計化によるメリットは大きいですが、自社での作業負担がメリットを上回ってしまってはいけません。
業務効率化に向けた自計化に向けて、気をつけたいポイントを確認しておきましょう。

自社の経理担当の作業量を確認

会社にとって一番大事なのは、経営にとっての血液でもある「お金の動き」をリアルタイムで可視化することです。
アナログな環境で行っていたことも、デジタル化すれば大幅に効率化することができます。
まずは現在の経理担当の業務内容を洗い出し、自計化することによって効率化できる作業と、負担が増える作業を確認しておきましょう。

業務内容を大幅に変える場合は、その後の効率化が見えていたとしても、担当者の納得感が必要です。互いに納得してから業務改定に取りかかりましょう。

会計事務所との連携

会計事務所で自計化にまつわる指導を受けることになります。
会計システムや、何か問題があった場合の相談についてなどについて、会計事務所と事前に連携を図れるようにしておきましょう。
会計事務所から自計化を進められた場合は、先方には自計化のつまずきやすい点などのノウハウがある場合がほとんどです。心配な点はあらかじめ潰しておくことで、自計化をスムーズに進めることができます。

事業のさらなる発展を目指す

自計化によって、会計士や税理士から、経営に関するアドバイスを受けられるようになっても、受けた提案を理解して実施できる体制が整っていなければ意味がありません。
月次決算をはじめ、決算書類の見方と分析結果からわかること、受けた経営指導・アドバイスをどう活用するかなど、自計化によって得られるメリットを最大限活用できるように、会計・経理に関する知識を勉強する必要があります。
せっかく税理士から良い提案を受けても、それを理解して実行できる力がなければ意味がありません。

自計化をし、経営状況のリアルタイム確認できる体制が構築できたら、それを事業の発展に結びつけられるように、より広い分野の勉強にも取り組みましょう。

まとめ

自計化って難しい?と思うかもしれませんが、日次処理の入力は、基本的には単純作業の連続です。会社によって取引や業務内容は傾向がありますので、一度それをつかめばそこまで難しくはありません。もちろん、一部高度な内容も含まれますが、それは顧問先の会計事務所に確認しましょう。一番の目的は、会社にいくらお金があってどう動いているかをリアルタイムに確認すること。企業の業績を上げるためには、数字を日常的に把握し、事業について考える時間を増やすことです。
会計帳簿の作成は、企業経営者の責任です。もし外部に丸投げして誤りがあっても責任者は企業経営者となります。経営者には、自社の経営にまつわる数値に対しての全責任を持つ必要があるのです。自計化によって経営判断をより早く、より的確に行うことを目指しましょう。

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