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なぜTOBが行われるのか?TOBのメリット・デメリットについて解説!

HUPRO 編集部
なぜTOBが行われるのか?TOBのメリット・デメリットについて解説!

株式市場では、時折TOBが行われることがあります。TOBとは、株式公開買い付けの略語で、上場企業の株式を買い取る株数、価格、そして期間を提示して金融商品取引所外で、不特定多数の株主から買い付けることを言います。なぜ、わざわざTOBが行われるのでしょうか?今回は、TOBのメリット・デメリットを解説します。

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TOBはなぜ行われるのか?

金融商品取引所を通さずにTOBを行う目的は何でしょうか?主な目的は、買い手が、その会社の株を手に入れることで、経営の支配権を獲得することです。

株式会社では、持ち株比率が多いほど、経営に関与する力が大きくなります。例えば、3分の1超の株式を保有していれば、株主総会で特別決議拒否権を発動することができます。2分の1超を保有していれば、役員の選任権をもらうことができるので、より経営に参画することが可能です。更に3分の2超を保有していれば、特別決議を単独で可決することができ、事業譲渡や合併、会社分割といった組織変更についても主導権を握ることが可能になります。

TOBの対象は上場企業なので、取引所でコツコツと浮動株(安定した株主に保有されていない市場に流通している株)を買い集めることもできます。しかし、それには時間がかかってしまい、迅速に経営権を獲得することは困難です。よって、明確に経営権を獲得したいという意思を表明し、すばやく株を集めるために、TOBが行われるのです。

TOBをするメリットとは?

まず、TOBをかける側のメリットについて解説します。第一に、大量の株式を短期間で集めることができることです。第二に、あらかじめ金額を決定できるので、予算を決めて株を買い集められることです。
TOBによらず浮動株を集めるのでは、その間に株価の変動が起きる可能性があります。そして第三に、目標としている株式数を集められなかった場合には、TOBをキャンセルすることができることです。浮動株を購入する場合には、目標の株式数に達しなければ、中途半端な株数を抱えてしまうことになります。

TOBをするデメリットは?

もし、TOB の対象となる企業がそれに反対している場合には、対抗する TOB が行われたり、買収防衛策を取られたりする恐れがあります。

TOBには、対象企業の経営陣とおおまかな合意を交わしたうえで行われる友好的TOBと、対象企業の合意をとらずに行われる敵対的TOBがあります。日本の市場では、友好的TOBが多いのは事実ですが、もし敵対的TOBをすることになると、強引に株式を買収することになるので、TOB価格が高騰するリスクがあります。また、より既存株主にとって有利な条件で、対抗的なTOBを計画される可能性もあります(ホワイトナイト)。

あるいは、買収防衛策として、既存株主にTOBの前に新株予約権を付しておき、TOB実行後に割安で株式を取得させて、TOB実行者の持ち株比率を下げるという手段も用いられます(ポイズン・ピル)。

TOBをしなければならない場合とは?

メリットデメリットに関わらず、状況によっては、必ずTOBをしないとならない場合もあります。金融商品取引法27条の2では、「義務的公開買付け」といって、取引の情報を適切に開示することで株主に公平な株式の取引機会を設けるための規則が設けられています。取引所外で短期間に大量の株式が売買される場合、もし情報が公開されなければ、特定の株主だけに利益が生じたり、少数株主が機会を逸することになったり、取引が不平等に行われてしまう恐れがあります。

具体的には、以下のルールがあります。例えば、5%ルールとよばれるものです。著しく少数の者から買付けを行う場合を除き、買い付け後に買い手が保有する株式が5%を超える場合には、公開買い付け、つまりTOBを行う必要があります。また、著しく少数の者から買付けを行う場合であっても、買い付け後の株主所有割合が1/3を超える場合には、TOBによらなければならないというルールもあります。

持っている株式がTOBの対象になった場合は?

では、自分が持っている株式がTOBを受けることになった場合のメリットやデメリットはあるのでしょうか?

まずメリットとしては、市場価格よりも高い価格で売却することができることが挙げられます。TOB実行者は、迅速に株式を集めるために、市場価格よりもプレミアムを乗せた割高な価格で買収するように計画します。そのため、既存の株主であれば、TOBに乗って売却することで、利益をうけることができます。

デメリットとしては、TOB実行者が100%保有を目指していた場合には、いくら既存株主が長期保有を目指していたとしても、最終的には法的手続きによって買い取られてしまうことが考えられます。

また、TOBが既存株の一部を買い付ける計画の場合、この機に売却しようとしても、タイミングによっては買い取り目標株数の上限に達してしまい、売却できない可能性もあります。その後市場で売却するにしても、市場価格がTOB価格までは上がっておらず、リターンを得る機会を逸してしまう恐れがあります。

まとめ

今回は、TOBの目的やメリットについて解説してきました。もし保有している株式がTOBを受けることになった場合は、まずそのTOBの目的を理解し、既存株主がどのような方法をとることができるのか判断する必要があります。場合によっては大きなリターンを得ることができる可能性がありますので、日頃から市場の動向に注意しておくことが大切でしょう。

この記事を書いたライター

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