個人事業主で順調に所得が増えている場合、法人化した方が節税も含めメリットが大きい場合があります。本記事では、個人事業主が法人化するにあたって、個人事業主と法人の違いとメリット・デメリットについて解説します。
個人で事業を行っている場合、事業による売り上げには所得税がかかります。所得税はその額に応じて課税の割合が増える「累進課税制度」と採用しており、その税率は以下の通り。
一方で法人税は以下の通りと、個人事業主に比べて所得金額によっては税率が低い場合も。
法人化による節税メリットを受けられるのは、だいたい事業所得が500万円程度からといわれています。売上がある程度固定化し、従業員を雇用するなど今後も事業拡大を図っていくのであれば法人化する方が様々なメリットがあります。
しかし、法人化については登記などの手続きのほか、初期費用をはじめとした固定費用が増えることも。次項では法人化した際のメリット・デメリットについて解説します。
利益を自身や家族の給与にして給与所得控除を使えるし、さらに保険や家賃を会社の福利厚生費としてしまえば、自分の給与から払う場合に比べて所得税や社会保険料などの対象にならずその分負担を減らすことができます。
退職金も適正額までは会社の損金扱いで積み立てが可能です。また、受け取った退職金についても退職金控除を使うことができ、これも節税になります。
個人事業主でも年間所得が1000万円超えた場合は、3年目から消費税を納める義務があるが、資本金1000万円未満で法人化した場合、設立年度と設立2年目の年度については消費税は課されないため、2年間の消費税免税となります。
個人事業主は1~12月までの売上にかかる税金を2~3月までに確定申告しなければなりませんが、法人の場合は自分の閑散期に決算月を決めることができます。
業務負担の大きい決算を、繁忙期を避けて設定することで今後の対策も立てやすくなります。
・赤字の繰り越しが9年間可能(個人で青色申告の場合は最大3年)
・信用度が増す
クライアントによっては法人とのみ取引する場合もあり、銀行からの融資も受けやすくなるなど、個人事業主に比べて社会的な信用もアップします
法人化した場合のメリットとして、やはり税金と資金面、それから信用度を高め、新たな取引先を獲得するといったような業務の拡大にもつながるのが大きな特徴です。
しかし、法人化はメリットばかりではありません。次に法人化した場合のデメリットを見てみましょう。
会社の設立には定款をはじめ様々な書類の作成と提出、そして登記費用などが掛かります。ざっと30万円程度です。最近では会計ソフトなどで一括出力できるなど便利なシステムもありますが、専門家に依頼する場合はまた別途費用が掛かります。
なお、個人から法人になるのと同様、法人から個人になることもできますが、解散の場合も登記や公告などで手続きに数万円の費用が掛かります。
法人税は最低15%かかります。そのため、事業所得が低くなってしまった場合は、個人事業主の時よりも高い税率がかかる場合もあります。なお、赤字の場合は所得税はありませんが、法人住民税は均等割りの負担があります(7万円)。
また、基本的に強制加入の社会保険料などについても、赤字でも負担があります。もともと役員報酬は赤字でも出さないとならないためです。
個人事業主は交際費の上限がなかったり、身の回りのものを経費にしやすい傾向がありますが、法人化すると交際費の上限は最大でも800万円、法人と個人は別人格として分けられるので、今まで経費算入していた雑多なものを経費にしづらくなります。
個人事業主の確定申告を個人で行っていた方でも、法人税についてはかなり複雑でルールも異なるため、個人で決算業務を行うことは難しいでしょう。税理士や会計士などの専門家に依頼する必要があり、その場合は顧問料などがかかってきます。
税金面だけでなく、様々なメリットもある法人化。法人化を検討した方が良いケースについては、個人差があります。事業形態や経費の掛かり方によっては個人事業主の方が実はお得だということもあったりするのです。「もしかして法人化した方が良いのかも?」と思った時は、税理士などの専門家にまずは一度相談して見ることをおすすめします。