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財務の安全性の目安「固定比率」とは 

HUPRO 編集部
財務の安全性の目安「固定比率」とは 

「固定比率」は、会社経営の安全性を図る指標のひとつ。固定資産を自己資本で割った割合です。固定資産をどうやって取得したかを見ることによって、資産と負債の比率から財務の健全性を図ることができます。今回は、固定資産の解説を交えながら「固定比率」について見ていきましょう。

固定比率の考え方

固定比率は、自己資本に対する固定資産の比率を計算したものです。

固定比率(%)=固定資産÷自己資本×100

自己資本は自社の資金ですので、返済の義務はありません。つまり、固定資産の取得について、会社にあったお金でどれだけ支払ったかという割合を表わすのが固定比率となります。
もちとん、分子の固定資産より、分母の自己資本の方が上回っている状態が安全です。
一般的に、固定比率は、100%以下が安全な水準ということになります。

固定比率の考え方は、家を買うことを考え見るとわかりやすいです。
私たちがマイホームを購入するとき、どれだけ自己資金を用意できるかで、住宅ローンの金額が変わってきます。自己資金を「頭金」として支払うことで、借金であるローンの金額を押さえることが可能です。借金の額は小さい方が家計は健全といえます。

会社経営における固定比率も、この考え方と似ています。
会社の固定資産も、住宅と同じく長期に渡って使うことを前提に取得した資産です。基本的には短期売買することを予定していません。もし、自己資本が少ない場合、固定資産を買うために多額の融資が必要です。融資は「固定負債」として負債の部に参入されます。
負債はつまり借金。会社経営上、負債と比べて自己資本比率が高い方が財務が健全であるのはいうまでもありません。

自己資本比率については、以下の記事も併せてご一読ください。
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固定資産とは

固定比率の分子に当たる固定資産についても触れておきましょう。
固定資産とは、現金、受取手形、預かり金、売掛金、短期所有の有価証券など、短期的に現金化できる資産である流動資産に対して、決算日から1年以内に現金化されない資産のことを差します。具体的には次の3種類に分けられます。

有形固定資産

有形固定資産とは、企業が営業活動のために長期にわたって保有する有形の資産のことです。
具体的には、土地、建物、機械、船舶、車両、工具備品、建設仮勘定から構成されます。
固定資産は1年以上の長期の保有が原則です。もし、これらに該当しても、貸借対象日の翌日から1年以内に現金化されるものについては、固定資産ではなく「流動資産」として扱います。

無形固定資産

無形固定資産は、形はありませんが1年以上の長期にわたって会社の収益に貢献する資産のことです。
例えば、特許権や商標権などの法律用の独占権利、施設権利、営業権利(のれん)。ソフトウェア、借地権などが該当します。

投資その他資産

固定資産の中で、有形固定資産、無形固定資産に入らない資産は、すべて「投資その他の資産」に計上されます。
例えば、短期売買目的以外の長期保有の投資有価証券、関係会社株式や出資金、長期貸付金や敷金・保証金などが該当します。

固定比率から判断できること

固定比率は、固定資産取得のための資金がどのくらい自己資本でまかなわれているかを表すものです。一般的には、工場の設備投資などの固定資産への投資回収には、長い時間がかかります。しかし、固定比率を求めてみて100%超だからといってすぐさま「経営が危ない」というわけでもありません。他の指標も絡めて判断する必要があります。

自己資本の割合が高い場合

固定比率が100%以下であれば、固定資産より自己資本のほうが大きい状況です。つまり、すべての固定資産を自己資本でまかなっているということなので、経営は安全な水準にあると考えて良いでしょう。

ただし、固定比率が100%を大幅に下回っている場合でも、単に設備投資がされておらず、古い設備で生産性が低くなっている可能性もあります。特に現在は、環境への配慮、カーボンニュートラルなどへの積極的な設備投資が求められている状況です。短期的には借金がないため倒産の心配がなくても、将来的な競争力については危ういかもしれません。あまりにも守りに入ってしまっていないかどうかも確認した方が良いでしょう。

100%超の場合は「固定長期適合率」もチェック

固定比率が100%を超えている時、会社は自己資本以上の固定資産を購入しているということになります。ただし、会社の成長期で設備投資を盛んに行っているような場合、固定比率が100%超だからといってすぐに会社の財務状況が危険という訳ではありません。

固定比率が100%を超えている場合は、会社の営業方針などについても確認しておくとともに「固定長期適合率」という指標についてもチェックしましょう。

固定長期適合率は、次の計算式で求められます。

固定長期適合率(%)=固定資産÷(自己資本+固定負債)×100

固定長期適合率は、固定資産を取得する際の資金調達において、会社の持つ資産である自己資本以外に、長期で返済を行う固定負債を加えて固定資産を割った割合です。

固定負債とは、支払期限が1年以上先の負債。長期にわたって借り入れているお金です。企業が成長のために先行投資や設備投資をするにあたって利用した長期借入金です。

住宅ローンなどもそうですが、金融機関から長期の借り入れをする際には信用調査がなされます。企業も長期でお金を借入するためには、その企業の信頼性が高くないといけません。
固定負債自体は確かに借金ではありますが「返済能力があると見込まれた」上での負債のため「固定長期適合率」では、自己資本とともに分母に含めているのです。

よって、固定比率が100%を超えていた場合は、固定長期適合率も見てみましょう。固定長期適合率が100%以下であれば、財務状況は安全と判断と見ることができます。

もし、会社の経営自体が危ないと判断された場合は、1年未満の短期の借り入れである「流動負債」の比率が高くなり、結果的に固定長期適合率も100%を超えてしまうでしょう。
この場合は、すぐに返さないといけない負債で固定資産を購入していることになるため、財務の健全性や、安定した経営への疑問符はかなり高くなります。

固定負債については、以下の記事も併せてご一読ください。
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固定比率が高い場合の改善方法

固定比率が高い場合、どのように改善すれば良いのでしょうか。2つの方法について見てみましょう。

固定資産を減少させる

固定資産を減少させる

分子に当たる固定資産を減少させることで、固定比率を減らすことができます。
固定資産は全てが利用されているとは限りません。内容を精査してみると、遊休資産が多いということもあります。

事業で使用していない固定資産がある場合には「除却・売却を行う」ことで固定比率を下げることが可能です。まずは固定資産の棚卸しを行い、除却・売却に適当な固定資産があるかどうかを確認しましょう。

固定資産は、使っていなくても会社にとっては大事な資産となります。会社にとって不要品だからといって勝手に除却や売却が行われる危険性もありますので、適切な管理が必要です。
また、固定資産の除却・売却は行った時期によって会社の損益など税務上に関わります。固定資産管理台帳に基づき、計画立てて行うことで節税にもなりますので、業務の一端として取り組むようにしましょう。
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自己資本を増加させる

次に、固定比率の分母に当たる「自己資本」を増加することで、固定比率を下げることもできます。自己資本を増加させるためには3つの方法が考えられます。

増資を行う

社長や役員からの出資にて増資を行う、特定の第三者に新株を引き受ける権利を付与して、新株を引き受ける代わりに出資してもらう第三者割当増資、あるいは、新たに株式を発行したりすることで資本金や資本準備金を増加することができます。

配当金を減らす

株式の配当を行っている場合、配当金を払うと自己資本を構成する「利益剰余金」が減少します。そこで、配当金を減らしたり、支払わなかったりすることで自己資本をキープすることが可能です。なお、会社にキープされた利益剰余金が、いわゆる「内部留保(ないぶりゅうほ)」に該当します。
何かと悪者にされがちな内部留保ですが、いざというときのための蓄えです。震災やコロナ禍のような予想外の危機が訪れた場合、会社を持ちこたえさせる原資ともなります。

売上増加、経費削減による利益改善

会社の本業で地道に自己資本を増やす方法です。
前述の「利益剰余金」はそもそも会社の利益から成立っています。つまり、会社が利益を上げることができれば利益剰余金も増え、結果的に自己資本も充実するのです。
また、利益は売上-経費の式で表されます。経費を削減することで最終的に利益も増加するのです。
時間と手間がかかる方法ですが、企業努力として常に取り組みたいところですね。

まとめ

「固定比率」は、固定資産を自己資本で割った比率で、固定資産を自社の資金でカバーできる割合を表わします。会社の財務の健全性を示す指標のひとつです。さらに、自己資本に、金融機関などからの長期的な融資である固定資産を合わせた「固定長期適合率」があります。

固定比率が100%を超えていたとしても、設備投資に積極的でチャレンジングな経営をしている起業という見方をすることもできます。その場合は、固定長期適合率の割合を確認しましょう。もし100%を超えているようでしたら、金融機関からの長期借り入れができていないということになりますので、資金調達面に黄色信号がついているといえるでしょう。他の指標も見て判断してみてください。

この記事を書いたライター

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