自動車産業と電機産業は日本が誇る産業の代表格です。トヨタなど大手自動車メーカーは海外にも多く自動車を輸出していますね。当然自動車は電機系統がないと動きませんので、自動車産業と電機産業は深い関わりがあります。
経理としては、基礎となる電機部品を組み立て自動車になるまでの原価を算定し、それを輸出するまでの会計処理が必要となります。
本記事では、自動車産業、電機産業の内容と必要になる経理スキルを解説します。
自動車産業は、完成品の車を製造するイメージが強いと思いますが、実際には以下のように分かれます。
1.素材
車のボディや、後述の部品を作るための原料。主に鉄鋼や塗料などを指します。
2.部品
エンジンやエアコン、シートなど車を形作る一部のことです。
3.車体組み立て
2.部品を一つに集合し、車の形に成形する分野です。主に完成車メーカーの子会社がこれに該当します。
4.完成車メーカー
1.〜3.の手続きを統括する分野です。そもそもの車のデザインや機能性などを研究したり、リコール時の対応を行なったりもします。
5.ディーラー
完成車メーカーによって統括され、成形された完成車を一般消費者へ販売する分野です。3.車体組み立てと同様、完成車メーカーの子会社であることがほとんどです。
上記の1.〜5.を総合して自動車産業と呼んでいます。
本記事では、1.〜3をサプライヤー、4.5をメーカーとして大別し説明を進めていきます。
電機産業は、非常に幅広い分野に分かれますが、主には電子部品の製造や電機機械器具の製造にあたります。
家電なども含みますので、日本では日立製作所が有名です。
これらの電機産業は、自動車における部品の製造に深く関わっており、前述の自動車産業の区分けでいうとサプライヤーにあたります。
それでは、自動車産業、電機産業のサプライヤー、メーカーに共通する経理の特徴を見ていきましょう。
サプライヤー、メーカー共に共通して必要なのは工業簿記への理解です。
サプライヤーはメーカーから提示された金額をベースに、様々な方法で原料を仕入れ、部品製造・組み立てを行なっていきます。
経理としては、当該仕入れを商業簿記のようにまるっと売上原価にするわけにはいきませんので、各種材料仕入と加工費を出来上がった部品、完成品に配賦する工業簿記計算が必須となります。
例えば受注生産型の部品であれば、個別原価計算を適用し原価計算を行いますし、ある一定程度連続して同じ部品を製造するようであれば総合原価計算を適用します。
また、メーカー側の視点とすると、各種部品の原価、組み立ての加工賃をさらに原価計算し、当該原価に基づいて消費者への販売価格を決定します。
サプライヤー・メーカーどちらへ就職/転職を行う場合であっても、工業簿記の知識は必須です。最低でも日商簿記2級、可能であれば1級を取得しておくことが望ましいです。
近年、部品の仕入や加工賃を下げるために、海外に子会社を置いて現地人員を安価で雇用して人件費を抑えたり、そもそも海外の会社から原材料/部品を輸入するという流れが一般的になっています。
経理としては、当該輸入に係る為替換算及びリスクヘッジ方法を知っておかなければなりません。
会計経理的な観点で見ると、海外子会社の為替換算は、資産負債などのBS項目、収益/費用などのPL項目、純資産項目をそれぞれ期末日レートや期中平均レート、取得日レートで換算し、換算差額を連結上為替換算調整勘定とするなどルールが決められています。
財務経理的な観点で見ると、海外取引が発生するということは、為替変動によるPLやCFへのインパクトがリスクとして出てきますので、為替予約や外貨借入による為替リスクヘッジ方法を知っておくのがベターです。
自動車産業や電機産業は経理としても活躍の場がたくさんあります。上記のポイントを事前に押さえて転職に活かしましょう。