税務署長等が行った更正や決定の課税処分、滞納処分やその他の処分に不服があるときは、どのように対処すればいいでしょうか。実は定められた手続きを踏むことで、処分を行った税務署長等に不服を申し立てることができます。今回は、税務署に対する不服申立ての具体的な手続きについて解説していきます。
税務署長等から次のような処分を受け、それに不服がある場合には、不服申立てをすることができます。
(出典:国税庁 No.7210「不服申立て」ができる場合、できない場合)
ただし、次のような場合には不服申立てをすることができません。
(1) 納付税額を減少又は還付金額を増加させる処分
処分によって自己の権利や法律上の利益が侵害されているわけではないからです。
(2) 誤って納付税額を過大に申告した場合
そもそも処分を受けていないからです。なお、この場合に申告した納付税額を正しい税額に是正するためには、「更正の請求」の手続が必要です。
不服申立てには、「再調査の請求」と「審査請求」から手続きを選択することができます。
税務署長が行った更正などの課税処分や差押えなどの滞納処分に対して不服がある場合に、その処分の通知を受けた日から3カ月以内に、税務署長に対して不服であることを伝えることができる制度です。税務署長は、その処分内容が正しかったのか、改めて見直しを行うのです。この再調査の請求に係る決定により、納税者にとって不利となるような変更がされることはありません。
一方、税務署著の処分に不服がある場合に、その処分の通知を受けた日から3カ月以内に、国税不服審判所長に対して「審査請求」をして、税務署長の処分が正しかったかどうかを調査・審理してもらうこともできます。「再調査の請求」をしてなお、その決定後の処分に不服がある場合にも、再調査決定書の通知を受けた日の翌日から1カ月以内であれば審査請求をすることができます。審査請求をした場合でも、その裁決は税務署長が行った処分よりも納税者に不利益になることはありません。
(出典:国税庁 税務署長の処分に不服があるとき)
この二つは納税者が選択することができます。再調査の請求のほうが、結果が出るまで短期間で済みます。再調査の請求は、申立てがあってから税務署長が再調査決定書を通知するまで、3カ月という期間が設けられています。一方、審査請求をした場合は、裁決まで1年の期間が設けられているからです。
また、審査請求をして国税不服審判所に裁決を受けてなお、その処分に不服がある場合は、その通知を受けた日の翌日から6か月以内に裁判所に「訴訟」を起こすことができます。
実は、平成28年4月に国税不服申立て制度が改訂され、税務署等の処分に対して、納税者は「再調査の請求」を行わずとも、第三者機関である国税不服審判所に「審査請求」ができるようになったのです。それまでは、まず税務署長へ「再調査の請求(異議申立て)」をする必要がありました。異議決定後の処分になお不服がある場合に初めて、国税不服審判所に対して「審査請求」を行うことができたのです。
前述した通り、再調査の請求だけでは、それが認められることが非常に少ないため、国税不服審判所にまず審査請求をする納税者が増えました。それによって、平成30年度の再調査請求は2,043件と、改訂前である平成27年の3,191件からかなり減少しました。しかし、再調査の請求の認容割合は、平成30年度は12.3%となり、平成27年の8.4%から増加しています。請求を認めるのに証拠が十分であれば、再調査の請求をして短期間で済ましたいと考える納税者が多いためでしょう。
その一方で、審査請求の処理件数は平成27年度の2,311件から平成30年度は2,923件に増加しました。しかし、認容割合は平成27年度の8.0%から平成28年度の12.3%と、一度上昇しましたが、平成30年度には7.4%と落ち込んでいます。認容件数自体は増加している傾向にあるので、税務署の再調査を避けて、駄目もとでもまず国税不服審判所に審査請求する納税者が増えているということが読み取れます。いずれにせよ、不服を申立てるにあたっては、それなりの根拠を示すことができないと、認容されるのは難しいでしょう。
(出典:平成30年度における審査請求の概要)
今回は、税務署に対する不服申立ての具体的な手続きについて解説してきました。処分にどれほど不服があっても、正しい申立ての手続きをしなければ処分に従う必要がありますので、万が一のために、この手続きの流れを知っておくと安心だと思います。