「税務申告」と言っても、一言で表現できるほど甘いものではありません。実際に申告しなければいけない税金は数多くあります。そこで今回は、税務申告の種類から、その申告をしなければいけない者まで網羅的に解説します。
税務申告には種類があります。一般的に法人であれば法人税、個人であれば所得税という2種類が該当します。しかし実際に申告しなければいけない税金はそれだけではありません。個人でも法人でも申告書を作成し所得に応じて税金を納めます。また都道府県や市区町村へ住民税の申告、該当している場合は消費税の申告など様々な税目について申告が必要です。法人も個人と同じ人格を持っていると判断されます。そのため、個人と同じように住民税が課税されます。では法人の場合と個人の場合、それぞれにどのような税務申告が必要になるのでしょうか。最低限必要になる税目についてそれぞれみていきましょう。
法人で必要となる税務申告は、「法人税・消費税・法人都道府県民税・法人市区町村税」の4つがあります。実務上、「決算申告」や「決算」と言われているのがこれらの税金の申告です。本来「確定申告」という言葉は、法人でも個人でも両方に該当するのですが、どちらの申告なのかをわかりやすくするため表現方法で分けています。固定資産税もありますが、固定資産税は賦課課税といわれ申告納税方式を採用している法人税や消費税とは異なります。賦課課税は役所が最終的に税額を決定するため、申告納税方式の税目とは異なります。ですから今回ここでの説明は割愛します。
法人税とは、法人の所得額を計算しそれに応じた税率を乗じて税金を申告します。この他、所得に応じて課税され納付額が決定する税金は、法人住民税と言われる法人都道府県民税と法人市区町村民税です。この3種類は、赤字でも黒字でも必ず申告が必要です。法人税は赤字で所得が発生していない場合に税額の発生はありませんが、法人住民税は、会社を持っているだけで発生する税金です。赤字でも資本金や従業員数に合わせた最低限の税額は納めなければなりません。消費税については、個人の場合と一緒に後述します。
法人税、法人住民税、消費税の申告は多くの法人の場合、税理士が税務代理を行います。納税義務者は法人であり、役員など個人ではありません。
個人事業主の場合、必要となる税務申告は「所得税・消費税・住民税」の3つです。こちらも固定資産税はありますが割愛します。所得税の申告は一般的に「確定申告」と言われる2月16日から3月15日の間に前年の1月1日から12月31日の所得の申告を行います。赤字で還付が発生する場合のみ、2月16日の申告開始を待たずに年明け1月4日から申告ができます。個人の場合、確定申告が必要となるのは事業所得がある人のほか、会社員でもいわゆるローン控除を受けたい1年目の人、年末調整では申告できない所得控除(例えば配当控除など)がある場合など範囲が限定されます。この申告をe-TAXで行うと住民税も自動的に申告できます。会社員で年末調整のみで所得税の申告が完了する場合には、その計算結果をもとに会社が法定調書を作成し各市区町村へ申告を行います。これにより住民税の申告が完了します。
個人の申告の場合、自分でできる人は自分で、事業所得などがあり自分で申告するのが難しいという場合は、税理士が申告するというのが一般的です。
所得税は個人の申告であり、納税義務者はその個人です。
法人にしても個人にしても申告が必要な場合とそうでない場合があります。まず年間売上が1,000万円超ある場合は申告が必要です。ただし基準期間というものが設けられており、この期間に1,000万円超である場合に申告が必要です。この基準期間は2年前を指します。例えば個人事業主の場合、令和2年1月1日からの消費税の申告の有無を確認するには平成30年1月1日から12月31日までの売上高が基準になります。法人の場合、3月決算と仮定すると、令和2年4月1日から3月31日までの消費税の申告の有無を確認するには、平成30年4月1日から平成31年3月31日までが該当します。新設の場合は基準期間がないため、判断基準が異なりますが詳しいその内容はまたの機会に説明します。
税務申告には法人と個人で法人税と所得税といった所得の税目の違いはありますが、そのほかについては、ほぼ同じです。申告納税方式に対して賦課課税方式があり後者の代表的なものに個人の住民税と固定資産税があります。法人でも個人でも重要な税務申告は申告納税方式に該当する申告です。申告しなければいけないにも関わらず申告しないものは無申告、申告はしても税金の納付を行わないのが無納付です。そのようなことが発生しないように、きちんと制度を理解しておきましょう。