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土地や建物を売却した時に発生する『譲渡所得』その詳細をわかりやすく解説!

公認会計士 西田綱一
土地や建物を売却した時に発生する『譲渡所得』その詳細をわかりやすく解説!

10種類ある所得の1つである譲渡所得ですが、どういったものが譲渡所得になるのでしょうか。また譲渡所得には、長期譲渡所得と短期譲渡所得がありますが、どう違うのでしょうか。不動産に関してはどう変わるのでしょうか。今回は譲渡所得の定義と長期譲渡所得と短期譲渡所得の違いについて解説していきます。

譲渡所得の定義

譲渡所得とは、一般的に、土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得をいいます。ただし、事業用の商品などの棚卸資産や山林などの譲渡による所得は、譲渡所得にはなりません。

参考:国税庁のHP

不動産の売買を事業として行う個人にとっての土地や建物及び株式の売買を事業として行う個人にとっての株式は棚卸資産です。また、山林の譲渡による所得は山林所得です。

以下では、多くの人が経験することになる、土地や建物の譲渡について見ていきましょう、

土地や建物を譲渡したときの所得の計算方法

収入金額 - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除額 = 課税譲渡所得金額

収入金額は、通常土地や建物を売ったことによって買主から受け取る金銭の額です。しかし、土地建物を現物出資して株式を受け取った場合のように、金銭以外の物や権利で受け取った場合にはその物や権利の時価が収入金額となります。
取得費には、売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料のほか設備費や改良費なども含まれます。なお、建物の取得費は、購入代金又は建築代金などの合計額から減価償却費相当額を差し引いた金額となります。
譲渡費用とは、土地や建物を売るために直接かかった費用のことです。

参考:国税庁のHP

建物の減価償却費については、建物の減価償却費相当額=取得価額×0.9×償却率× 経過年数という算式にて求めます。

土地や建物を譲渡したときの所得の計算における特別控除額について

譲渡所得は長期譲渡所得及び短期譲渡所得に分かれます。

長期譲渡所得は、譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超える土地建物を、また、短期譲渡所得は譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年以下の土地建物をそれぞれ譲渡したことによる所得をいいます。

土地や建物を譲渡した場合の特別控除額は次のようになっています。

(イ) 収用等により土地建物を譲渡した場合 ・・・ 5,000万円
(ロ) マイホームを譲渡した場合 ・・・ 3,000万円
(ハ) 特定土地区画整理事業等のために土地を譲渡した場合 ・・・ 2,000万円
(ニ) 特定住宅地造成事業等のために土地を譲渡した場合 ・・・ 1,500万円
(ホ) 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡した場合・・・1,000万円
(ヘ) 農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合 ・・・ 800万円
(注) 土地、建物の譲渡所得から差し引く特別控除額の最高限度額は、年間の譲渡所得全体を通じて5,000万円です。

国税庁のHPより。一部改

特にこの中で重要なのが、(ロ) マイホームを譲渡した場合です。上記のように 3,000万円を控除できます。また、(ホ) 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡した場合の1,000万円の控除は長期譲渡所得のときだけです。

譲渡所得の税額

(1) 長期譲渡所得
課税長期譲渡所得金額×15% 

(2) 短期譲渡所得
課税短期譲渡所得金額×30%

(注) 平成25年から令和19年までは、上記以外に、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を申告・納付することになります。

長期譲渡のメリットとデメリット

a)長期譲渡のメリット

1.上記したように、平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡した場合に1,000万円の控除が受けられるのは長期譲渡の場合だけです。
また、長期譲渡にて利益が出た場合、一定の条件を満たせば、2.10年超所有軽減税率の特例、又は、3.特定居住用財産の買換え特例の対象になります。

2.10年超所有軽減税率の特例
所有期間が10年を超えている不動産の譲渡益については所得税の税率が軽減されます。
課税譲渡所得が6,000万円以下の部分:10%
課税譲渡所得が6,000万円超の部分:15%

3.特定居住用財産の買換え特例
譲渡した年の1月1日で、家屋と土地の所有期間がともに10年超の場合については課税の繰り延べを受けられます。

・譲渡代金が買換え代金以下の時
譲渡益の課税が繰り延べられます。

・譲渡代金が買換え代金超の時
買換え代金相当額に関する課税は繰り延べられ、譲渡代金と買換え代金との差額に長期譲渡の所得税がかかります。

b)長期譲渡のデメリット

長期に不動産を保有すると基本的に不動産の価格は下がることが多いのが大きなデメリットです。更に、不動産の保有には安くない維持費がかかることもデメリットです。

短期譲渡のメリットとデメリット

逆に短期譲渡の最大のメリットは不動産の価格は短期売買の方が高い場合が多い事が挙げられます。また保有が短ければその分維持費も安く済みます。
デメリットとして上記の税金優遇が受けられないことが挙げられます。

まとめ

以上、譲渡所得の定義及び不動産の譲渡に関するメリット及びデメリットを見て来ました。様々な状況が考えられるので、状況に合わせて最も得になるように、譲渡を行いたいところです。

この記事を書いたライター

公認会計士。公認会計士試験合格後、上場企業に就職し経理関連業務を行う。その後、大手監査法人に転職し、監査およびコンサルティングを経験。現在は独立。原価計算を中心に事業会社での経理経験があることが大きな強み。
カテゴリ:コラム・学び
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