国税庁や税務署が担当する「税務調査」。税務調査を受けると、納税の誤りを指摘され、多額の追徴課税を課せられる……そんなイメージを持ってはいないでしょうか?しかし税務調査というのは犯罪の捜査ではありませんので、気負わずに対応するのがポイントです。本記事では税務調査における調査の流れや、税務調査官が着目する注意点などについて解説します。
平成30事務年度における法人税・法人消費税の税務調査は30,330件実施されました。このうち、法人税の誤りがあったのは22,744件、申告漏れ金額は8,549億円、追徴課税額は881億円となっています。
このほか、法人消費税や源泉所得税などについても検査が実施されています。
税務調査を受けた法人のうち、約75%の法人が税務の誤りを指摘されているということになります。これは平成29事務年度も同じくらいの割合です。もともと、税務調査は実地調査に至る前に準備調査というものがあり、事前に国税庁や税務署が独自に入手した情報を申告内容に付け合わせたり、外観をチェックしたりといった調査を行っています。
国税庁や税務署はある程度目算を絞り込んでから実地の税務調査に及んでいるといえるでしょう。
税務調査に関する記事はこちらでもご紹介していますので、よろしければご覧ください。
《関連記事》
準備調査を経て、調査対象となる企業や個人について重点的に見るべきところを定めたら実地調査が行われます。
実地調査については以下の4つ。なお、悪質な脱税について行われる国税局の強制調査とは別物です。
最も一般的な調査です。事前に経営者や帳簿を中心にチェックし、提出された申告書の内容を確認します。場合によっては倉庫などの実地調査も行います。
基本的に、事前に国税局や税務署から経営者や顧問税理士への調査連絡が入り、日程調整をした上で行われます。
事前の予告なしに抜き打ちで行われる調査です。現金の取り扱いが多い飲食店や小売業が主な対象となっています。しかし強制捜査とは違いますので、顧問税理士に連絡して立ち会ってもらうことも可能です。
一般調査だけでは証拠不十分と判断された場合には特別調査となります。事業規模が大きい企業については長期間にわたることも。
税務調査対象の関連企業や取引先への税務調査を行う事を差します。
税務調査を行う場合、管轄として国税局もしくは税務署が担当する場合があり、また前述の通り調査の内容によって実際の調査の日数は異なりますが、まず管轄は国税局が担当するか、税務署が担当するかで大きく変わります。
国税局が担当する場合には、概ね1ヶ月程度、実地調査を行うことになります。実地といっても毎日訪問するわけではなく、必要に応じて調査官が訪問する形です。
これに対して、税務署が担当する場合は、実地調査はだいたい2日間位で終わります。内容によっては1日で終了したり、延長されたりする場合もありますが、ほとんどの調査については1日目に顧問税理士に立ち会ってもらえば充分対応可能です。
税務調査の頻度については、会社によって違うので一概には言えません。しかし、税務調査では最低でも3年分の調査をすることから、3年をめどに考えておくというのが一般的です。とはいえ、税務調査をして75%がなんらかの不備を指摘されているという現状から、ある程度対象は絞り込まれており、会社によっては全く来ないというところもあります。
対象を絞りこむ目安となるのは、以下のような状況です。このほか、規模がある程度大きな会社は定期的に調査に入る可能性が高いといわれています。
税務調査の件数については微増・微減はあるものの、毎年ほとんど同件数で、そのうち問題がある企業が75%前後ということは、残り25%は、ある意味数合わせの調査と言えるでしょう。そのため、特に問題のない企業でも税務調査が入ることも充分考えられます。
税務調査では、会社の基本書類(定款や履歴時効全部証明書、株主総会議事録や従業員の雇用関係の書類)のほか、証憑や勤怠管理記録などの調査資料について、最低3年分を紙で提出する必要があります。どの調査資料の提出を求められるかは、その会社で何を調査したいかという税務調査官の目的によって変わりますが、もしPDFなどファイルで保管している場合は、印刷を行って提出しましょう。
税務調査官により指摘されやすい内容としては、以下のようなものがあげられます。
税務調査と聞くと「何か不正をしてしまったための調査」と思われがちですが、特に問題ない企業への税務調査は、ある意味ローテーション業務の一環です。
基本的には事前予告がありますが、前述の通り小売業や飲食業など現金取引が多い業種は予告なしの現況調査がある場合があります。いつ入ってもいいようにというと大げさかもしれませんが、帳簿類や従業員の勤怠管理、株主総会の議事録など調査に必要なものはすぐに取り出せるように、日ごろからファイリングに気を付けておくのは重要なことです。
税務調査官が要求した資料がスムーズに出せるようにしておく事で「つね日頃からきちんとしている」という印象を与えることができます。仕訳や経費の解釈の相違があるのは仕方のないことですが、好印象を持ってもらえるに越したことはありません。
また、従業員に対しての教育もしておいた方が良いでしょう。タイムカードの押し忘れや、経費精算をため込んだり、在庫管理をおざなりにしてしまったりするなど、軽んじられがちな日常業務の基本動作をちゃんとすることで、結果的には期ズレを防ぐなど、適正な決算処理につながります。